人工呼吸中の器械的トラブルは、どのように予防するの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「人工呼吸中の器械的トラブル」に関するQ&Aです。
塚原大輔
日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程特定行為研修担当教員
人工呼吸中の器械的トラブルは、どのように予防するの?
管理体制を整えるだけでなく、緊急事態への対応も可能な教育などのリスクマネジメントを行います。
〈目次〉
人工呼吸管理
人工呼吸管理は、呼吸不全患者の酸素化と換気の改善を目的として使用されている。
呼吸サポートチームの活動が広まり、安全管理体制や医療スタッフの教育など、ハード面・ソフト面両方が少しずつ整ってきているが、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業医療安全報告「人工呼吸器の配管の接続忘れ」(No.92,2014)により重大な事故が報告されている。
日本呼吸療法医学会は「人工呼吸器安全使用のための指針(第2版)」を発表し、人工呼吸管理を行う施設のめざすべき内容を示している。以下に、その概要を示す。
安全管理体制
1人工呼吸安全対策委員会の設置
人工呼吸療法に関与する施設管理者、医師、看護師、臨床工学技士などで構成する委員会を設置し、安全対策を講じること。
2教育システムの整備
人工呼吸器に直接かかわる医師、看護師、臨床工学技士に対する取り扱い教育、安全管理教育を系統的かつ定期的に実施すること。
特に、医師、看護師は、患者の呼吸のアセスメント能力の向上に努めること。
人工呼吸管理を施行する部署
人工呼吸療法を施行する部署は、集中治療施設基準を満たすことが望ましい。
警報装置およびモニタ
1警報設定
人工呼吸器の各警報装置は、それぞれの意義(表1)を理解し、それぞれ適正値に設定すべきである。
人工呼吸器の警報の意義
警報の設定値だけでなく、設定値を外れた場合に確実に作動することの確認が必要である。
2モニタ
人工呼吸療法中は患者の呼吸に関するモニタリングが不可欠である。余裕があればその他の生体情報をモニタリングすることが望ましい。
モニタリング情報は、一定期間記録・保存できることが望ましい。
緊急事態への対応
停電、人工呼吸器の故障、呼吸回路の損傷などの緊急事態に備えて、酸素投与下の手動式換気装置一式(蘇生バッグ、ジャクソンリース回路など)、気管挿管用器材一式、蘇生用薬剤をベッドサイドに常備しなければならない。
担当看護師が異常事態を随時把握できるシステムであること、医師が即応できる体制であることが望まれる。担当医師、担当看護師はACLS(二次救命処置)*・BLS(一次救命処置)*に習熟していることが望ましい。
人工呼吸器の定期点検
耐用年数を超えた人工呼吸器の定期点検、使用頻度の低い人工呼吸器の定期点検は、頻回にしかも綿密に行うべきである。
- ACLS(advanced cardiac life support):二次救命処置
- BLS(basic life support):一次救命処置
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社