PADガイドラインってなに?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「PADガイドライン」に関するQ&Aです。

 

古賀雄二
川崎医療福祉大学保健看護学科准教授

 

PADガイドラインってなに?

 

PADとは、痛み(Pain)・不穏Agitation)・せん妄(Delirium)を指し、ICUにいる成人患者のPAD管理のための診療ガイドラインを「PADガイドライン」といいます。

 

〈目次〉

PADガイドラインとは

2013年にSCCM(米国集中治療医学会)から出されたPADガイドラインは、2003年の「重症成人患者の鎮痛薬・鎮静薬の持続使用のための診療ガイドライン」の改訂版である。タイトルからも薬剤管理から病態管理へとコンセプトが変更されていることがわかる。

 

2014年9月、日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会より「日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン」が出された。これは、PADガイドラインの和訳ではなく、日本の医療背景に沿うよう内容調整が行われている。

 

重症患者の不穏は、不適切な痛み・不安・せん妄管理、人工呼吸の非同調により生じる可能性があるため、PAD各要素の評価スケールを用いて繰り返し評価を行うことが推奨されている。

 

PADガイドラインの概要

「痛み」については、痛みの評価はNRS、VAS、BPS、CPOTを使用してすべてのICU患者にルーチンに行い、処置に伴う痛みへの「先取り鎮痛」を行うことなどを推奨している。

 

「不穏」については、鎮静の深度と質の評価をRラスASSやSASでルーチンに行い、浅めの鎮静レベル(light sedation:ライトセデーション)維持のために毎日の鎮静中断・減量を行って鎮静プロトコールを使用すること、人工呼吸患者には鎮痛重視型鎮静(analgesia first-sedation:アナルゲージア ファーストセデーション)を行って非ベンゾジアゼピン系薬剤を使用することなどを推奨している。

 

「せん妄」については、CAM(カム)-ICUやICDSCでルーチン評価を行ってせん妄リスクを評価し、早期離床や睡眠促進のために患者環境の調整などの非薬理学的ケアや適切な薬剤の選択などを推奨している。

 

PADガイドラインケアを表1に示す。

 

表1J-PADガイドラインケアの概要

 

略語

 

  • SCCM(Society of Critical Care Medicine):米国集中治療医学会
  • NRS(numeric rating scale):数値評価スケール
  • BPS(behavioral pain scale)
  • CPOT(Critical-CarePain Observation Tool)
  • RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)
  • SAS(sedation agitation scale)
  • CAM-ICU(confusion assessment method for the ICU)
  • ICDSC(intensive care delirium screening checklist)
  • AAA(abdominal aortic aneurysm):腹部大動脈瘤
  • DSI(daily sedation interruption):毎日の鎮静中断
  • SBT(spontaneous breathing trial):自発呼吸トライアル
  • EEG(electroencephalogram):
  • ICP(intracranial pressure):頭蓋内圧

[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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