血液培養のうまいとり方

『エキスパートナース』2015年1月号<臨床の裏ワザ・裏知識>より抜粋。
血液培養のうまいとり方について解説します。

 

山本舜悟
京都市立病院感染症科副部長

 

きちんと消毒して適切な量の採血ができれば、血液培養は誰でもとることができます。では「きちんと」「適切な」とはどのようなものでしょうか?

 

〈目次〉

 

穿刺部位の消毒は、アルコール綿だけでもよい

血液培養採取前の皮膚消毒は、病院によっていろいろなやり方があると思います。また主な消毒薬として「アルコール」「ヨード剤」「クロルヘキシジングルコン酸塩」があります。

 

『血液培養検査ガイド』には、穿刺部位を2回アルコール綿で消毒したのち(この場合、アルコール綿は単包化されたものを使用)、10%ポビドンヨード(イソジン®液)または0.5~1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール綿で消毒すると記載されています(文献1)。非常にていねいに行う場合はこれがよいですが、じつはポビドンヨードでの消毒を追加せずにアルコール綿での消毒のみでも、コンタミネーション(皮膚表面の常在菌を拾って血液培養が陽性になること)の割合はほとんど変わらないという研究結果が、日本から報告されています(文献2)。

 

その考え方を反映した、“血液培養採取の簡単な流れ”を図1にまとめました。

 

図1血液培養の採取の仕方

血液培養の採取の仕方

 

アルコール綿での消毒は、消毒効果が出る(=乾燥する)まで待ったほうがよい

筆者が研修医のころは、ポビドンヨードで消毒を行った場合、乾燥するまで待たなければならないと教わりましたが、じつは接触時間が大切で、必ずしも乾燥するまで待つ必要はないようです。ポビドンヨード液の場合、30秒ほどで消毒効果が発揮されると言われます(文献3,4)。

 

よって、“乾くまで時間がかかるから“と、非常に薄くしか塗らなかったり、息を吹いて乾かそうとしたりするのは消毒効果が不十分になったり、唾の中の細菌が付着してしまう可能性があり、本末転倒です。穿刺部位が十分に消毒されるように、塗布してから最低30秒(理想的には2分間)待てば十分です。ただし、ヨード剤での消毒は省略してしまってもよいかもしれません。

 

アルコール綿で消毒を行った場合も、乾燥するまで待ったほうがよいです。アルコールは乾燥するときに消毒効果を発揮すると言われますし、乾燥する前に穿刺をするとアルコールがしみて痛いのが理由です。

 

血液培養ボトルのゴム栓は消毒しなくてはならない

血液培養ボトルは、キャップを外してゴム栓のところに注射針を刺して血液を注入します。

 

キャップで覆われているので、いかにも滅菌されている雰囲気を醸し出していますが、じつはこのゴム栓は滅菌が保証されていません。血液の注入前に消毒用アルコール綿で消毒しておく必要があります。

 

十分量が採血できなかった場合は、血液培養ボトルに注入する順番は好気ボトルを優先させてもよい

嫌気ボトルに空気が入らないように、嫌気ボトル→好気ボトルの順に注入するのが一般的です(文献1)。しかし、十分な採血量が得られなかった場合、好気ボトルの量を優先させて残りを嫌気ボトルへ注入するというやり方もあります。

 

これは、大部分の菌血症は好気性菌や通性嫌気性菌(つまり、好気環境・嫌気環境どちらでも発育する菌)であり、好気ボトルのほうがよく発育する(=検査が陽性と出やすくなる)ためです。

 

血液培養2セットは、2か所別々に採血する

血液培養2セットは、1か所で採血したものを2セットに分けてはダメです。どんなに注意深く消毒して採血しても、コンタミネーションをゼロにすることはできません。表皮ブドウ球菌は皮膚の常在菌なのでコンタミネーションとして血液培養から検出される菌の代表格です。

 

例えば1セットしか血液培養を採取せずに表皮ブドウ球菌が血液培養から検出された場合、この細菌が“皮膚にいただけなのか”“血液の中にいたのか”判断するのが難しくなります。もし2か所別々の部位から採取して、2セットとも陽性であれば、コンタミネーションがたまたま連続して起こるというのは確率的に考えにくく、真の菌血症だったのだろうと考えることができます。必ず2か所、別々の部位(例:左腕と右腕など)から採血しましょう。

 


[引用・参考文献]

 

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社

 

P.12~「臨床の裏ワザ・裏知識」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2015年1月号/ 照林社

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