酸素療法にかかわる インシデントってあるの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「酸素療法にかかわるインシデント」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
酸素チューブの接続外れなど、数多くのインシデントがあります。なかでも、気管切開患者に関するものが多く、生命危機に直結するインシデントもあります。
〈目次〉
酸素療法にかかわるインシデントのうち、代表的な事例を紹介します。
酸素チューブの接続外れ(図1)
1事例
低流量システムにて酸素投与していた患者のSpO2が低下した。観察したところ、酸素チューブと接続部が外れていた。
2原因
接続外れは、特に、フレアタイプのチューブを切らずに使用した場合に生じやすい。
フレアタイプのチューブは、接続口に合わないため、抜けやすくなってしまうためである。
3対応
SpO2低下時は、まず、チューブの接続外れを確認する。
フレアタイプのチューブは、接続口に合わせて切ったうえで使用する。
酸素チューブの誤接続(図2)
1事例
気管切開患者に酸素3L/分の指示が出たため、気管切開孔に酸素チューブを直接つなげて酸素投与を開始したところ、呼吸困難・ショック状態となった。
2原因
気管切開孔が、酸素チューブでふさがれたことで呼吸ができず、窒息となった。
3対応
気管切開孔に酸素チューブを直接つなげない。
低流量酸素投与時は、人工鼻に人工鼻専用の 酸素供給チューブを使用する(→気管切開患者の酸素療法はどうするの?)。
人工鼻とネブライザーの併用(図3)
図3人工鼻とネブライザーの併用
1事例
気管切開孔に人工鼻を装着している患者にネブライザーを併用したところ、呼吸困難を訴え、SpO2が低下した。
2原因
人工鼻のフィルターは、ネブライザーと併用すると目詰まりを起こし、フィルターが酸素や空気を通さなくなる。その結果、呼吸ができなくなり、窒息する。
3対応
人工鼻とネブライザーは併用してはいけない。
なお、高流量システムとの併用も、フィルターの目詰まりを引き起こすため、禁忌である。
[文献]
- (1)田勢長一郎:酸素療法・酸素療法の適応と中止.丸川征四郎,槇田浩史 編,呼吸管理・専門医にきく最新の臨床,中外医学社,東京,2003:58-60.
- (2)瀧健治:呼吸管理に活かす呼吸生理 呼吸のメカニズムから人工呼吸器の装着・離脱まで.羊土社,東京,2006:95.
- (3)Kallstrom TJ. AARC Clinical Practice Guideline:Oxygen thrapy for adults in the acute care facility-2002 revision & update. Respir Care 2002; 47: 717-720.
- (4)宮本顕二:インスピロンQ&A「より安全にお使い頂くために」 Q10.日本メディカルネクスト株式会社.(2014年11月18日閲覧).
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社