鎮静スケール(RASS)|知っておきたい臨床で使う指標[13]

臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。

 

根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長

 

鎮静スケール(Richmond Agitation-Sedation Scale;RASS)

 

鎮静スケールは、鎮静下に人工呼吸管理を受けている患者の鎮静深度評価を行うために使用します。鎮静スケールにはさまざまなものがありますが、Richmond Agitation-Sedation Scale (RASS) は、日本呼吸療法医学会が推奨している鎮静スケールです。

 

〈目次〉

 


 

RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)

 

RASS_RASSスケール_ラススケール_Richmond Agitation-Sedation Scale

 

 

 

 

RASSを主に使う場所と使用する診療科

RASSは主に手術室やICUなど、鎮静下に人工呼吸管理が必要になる場所で使用され、麻酔科医や集中治療医、救急医およびそこに配属されているナースなどが主に使用します。

 

 

RASSで何がわかる?

RASSは患者の状態を-5~+4の10段階で評価します。
0は意識が清明で落ち着いている、すなわちしっかりと理解ができ、従命できる状態を示しています。数字が大きくなる(プラスになる)につれて落ち着かなくなり、興奮し不穏要素が高くなって、チューブの抜去など突発的な事故が発生しやすくなっていきます。一方、数字が小さくなる(マイナスになる)につれて鎮静度が深くなっていきます

 

鎮静は人工呼吸管理や侵襲的処置を円滑に行う上で重要視されてきました。しかし、過度な鎮静は人工呼吸器からの離脱を遅らせたり、ICU滞在期間を延長させたりすることにつながるため、現在は「適切な鎮静」が求められています。目標とする鎮静度は患者さんの状態にもよりますが、0~-2を目標に鎮静することが一般的です。

 

 

RASSをどう使う?

評価方法は以下のとおりです。

 

  1. 患者を観察する(0~+4の判定)
  2. ・30秒間、患者を視診のみで観察し、0~+4のスコアを判定します。
  3. 呼びかけ刺激を与える(-1~-3の判定)
  4. ・大声で名前を呼ぶか,開眼を指示します。
  5. ・10秒以上アイ・コンタクトできなければ繰り返します。
  6. ・呼びかけ刺激に対する反応のみで-1~-3のスコアを判定します。
  7. 身体刺激を与える(-4~-5の判定)
  8. ・呼びかけ刺激に対して反応が見られなければ、肩を揺するか胸骨を摩擦します。
  9. ・身体刺激に対する反応から,スコア-4か-5を判定します。

 

 

RASSを実際に使ってみよう

症例1

 

68歳の男性。の悪性腫瘍の術後1日目。人工呼吸管理されているが、呼吸・循環動態も安定してきたため、人工呼吸器から離脱させ、気管チューブの抜去が予定されている。
30秒間の観察の結果、患者は開眼しており、簡単な質問に対してしっかりとアイ・コンタクトや頷くことで対応することができており、表情も穏やかである。この患者のRASS評価は何点?

 

答え:RASS 0

患者は呼吸・循環動態共に落ち着いており、アイ・コンタクトもしっかりとできている。また、簡単な質問にも頷きで対応することができていることから、「意識清明な落ち着いている」状態と判断できるため、0と評価する。

 

→RASSを確認

 

症例2

 

19歳の男性。糖尿病性ケトアシドーシスと高度な脱水により気管挿管下に人工呼吸管理されている。循環動態は未だ不安定であり、カテコラミンが投与されている。
30秒間の観察の結果、しきりに手を気管チューブに持っていき、首を持ち上げたり左右に大きく振ったりしている。この患者のRASS評価は何点?

 

答え:RASS +3

患者は手を気管チューブに持っていったり、首を大きく振ったりするなど、気管チューブを自己抜去しようとしていると考えられることから、「非常に興奮した」状態と判断できるため、+3と評価する。

 

→RASSを確認

 

症例3

 

64歳の女性。市中肺炎の診断で一般病棟に入院していたが、2日前に低酸素状態となったため気管挿管され、人工呼吸管理目的でICUに入室となった。
30秒間、患者を観察したが自発開眼はなく、手足も動かさない。大声で目を開けるように呼びかけたが反応はなく、痛み刺激を加えると顔をしかめるが、刺激をやめるとすぐに反応がなくなってしまう。この患者のRASS評価は何点?

 

答え:RASS -4

30秒間の観察で開眼も自発運動も観察されないこと、また大声で呼びかけたが反応が見られない、また痛み刺激で少し顔をしかめる反応が見られるが、すぐに無反応となることから、「深い鎮静状態」と判断できるため、-4と評価する。

 

→RASSを確認

 


[文 献]

 

 


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