筋力低下のある患者や麻痺のある患者の車いすへの移乗
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は筋力低下のある患者や麻痺のある患者の車いすへの移乗について解説します。
江口正信
公立福生病院診療部部長
筋力低下のある患者や麻痺のある患者の車いすへの移乗
- 転倒予防のために、端座位で動作を止め、起立性低血圧の有無を確認する。また、両足底がしっかりと床についているか確認する。
- 立位では、膝や腰を曲げない姿勢を保てるか、どのくらいの時間立位がとれるかといった立位の保持状況を把握する。
- 看護者は、車いすの正面への移動の際に、車いすに近い方を軸足にして、車いすに向き合うようにする。一瞬でも軸足を動かすと患者と看護者の全体重が片足にかかり不安定になって危険です。
- あらかじめ転倒予防のために離床の準備をギャッチアップから始めておく。日頃から、姿勢保持ができるようにバランス座位や等尺運動などの体幹や下肢の筋力保持のための訓練を続けておくと効果的です。
車いすへの移乗のポイント
移動スペースがない、または患者の機能障害の状態により、麻痺側の足側に車いすを置く場合があります。どちらに置いたとしても移動時の反動や衝撃が加わらない、麻痺側の下肢を巻き込まない、表皮剥離や骨折をしない、という移乗を行います。そのために患者がアームレストやベッド柵を把持して、身体を支えられ、移動距離が短くなるよう車いすの位置や方法を工夫するとともに、人員の確保や患者にあった車いすの選択をしていきましょう。
夜間のトイレや朝の起床時は、身体機能が低下しているため日中の活動時よりバランスを崩しやすくなっています。患者の1日におけるADLの変化を観察し、転倒を予防していきましょう。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版