びまん性汎細気管支炎(DPB)の疾患解説
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この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
より深い知識を習得したい方は、本文内の「目指せ! エキスパートナース」まで読み込んで下さい。
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。
今回は、閉塞性肺疾患である「びまん性汎細気管支炎(DPB)」について解説します。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
あまり聞いたことがない疾患だと思いますが、びまん性汎細気管支炎(DPB)という疾患を知っていますか?
う~ん、知らないです。
症状は、COPDや気管支喘息の患者さんと似ているんですね。
そういえば、確かに。
ただ、びまん性汎細気管支炎は、難治性と言われるほど難しく、治りにくい病気なんです。
〈目次〉
- びまん性汎細気管支炎(DPB)の基礎知識
- びまん性汎細気管支炎(DPB)の原因と症状
- びまん性汎細気管支炎(DPB)の治療
- 聴診時に気を付けるポイント
- ナースへのワンポイントアドバイス
- Check Point
びまん性汎細気管支炎(DPB)の基礎知識
びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)は、1969年に、本間日臣先生・山中晃先生によって、わが国で初めて提唱された概念です。
びまん性汎細気管支炎とは、気道と肺胞の境界にあたる呼吸細気管支を中心に、慢性の炎症が起こる、原因不明の難治性の呼吸器疾患です。
この疾患では、呼吸細気管支より中枢にある細気管支の部分が拡張します(図1)。
図1びまん性汎細気管支炎のイメージ(右肺モデル)
びまん性汎細気管支炎(DPB)の原因と症状
びまん性汎細気管支炎は、呼吸細気管支領域の浮腫や、分泌物の増加によって気道が狭められることが原因で起こります。
その症状は、呼吸困難や喘鳴、咳嗽、痰などで、気管支喘息と同じような症状が出ます。高い確率で慢性副鼻腔炎を合併し、胸部X線や胸部CTの画像所見で小粒状影が見られるため、画像検査は診断のヒントになります。なお、画像所見で見られる小粒状影は、呼吸細気管支領域の炎症が原因だと考えられます。
びまん性汎細気管支炎が進行すると、気管支の拡張も伴います。
memoびまん性汎細気管支炎を診断するための手がかり
画像診断のほかにも、呼吸機能検査の項目の一つである1秒率が70%未満に低下している場合や、捻髪音が聴こえた場合なども、びまん性汎細気管支炎を診断するヒントになります。
びまん性汎細気管支炎(DPB)の治療
びまん性汎細気管支炎の治療には、少量のマクロライド系抗菌薬を用います。マクロライドは、喀痰の低下を含めた呼吸器症状の改善や、生命予後の改善が証明されています(1、2)
聴診時に気をつけるポイント
びまん性汎細気管支炎の患者さんには、両側中下肺野を中心に聴診します(図2)。これは、びまん性汎細気管支炎の好発部位が両側中下肺野のためです。
図2びまん性汎細気管支炎の患者さんに行うべき聴診の位置
また、女性のびまん性汎細気管支炎の患者さんの場合、中肺野の聴診(中葉、舌区を意識)を行う際は、乳房を持ち上げて行うと、聴診音が聴き取りやすくなります。
ナースへのワンポイントアドバイス
びまん性汎細気管支炎の治療には、マクロライド系抗菌薬が使用されます。この薬剤には、エリスロマイシンやクラリスロマイシン、ロキシスロマイシンなどがありますが、生存率をきわめて良好に保つ薬剤のため、覚えておきましょう。
- びまん性汎細気管支炎(DPB)とは、気管支に炎症が起こり拡張する、原因不明の難治性の呼吸器疾患。
- びまん性汎細気管支炎の治療は、マクロライド系抗菌薬を使用した薬物療法。
- びまん性汎細気管支炎の患者さんを聴診する場合は、前胸部・背部ともに、両側の中・下肺野を中心に聴こう。
次回は、実際のびまん性汎細気管支炎(DPB)の患者さんの聴診音を聴いて、特徴をしっかりと覚えましょう。
[次回]
びまん性汎細気管支炎(DPB)患者さんの聴診音
- ⇒『聴診スキル講座』の【総目次】を見る
[文 献]
- (1)Kudoh S, Azuma A, Yamamoto M, et al. Improvement of survival in patients with diffuse panbronchiolitis treated with low-dose erythromycin. Am J Respir Crit Care Med 1998; 157(6 Pt 1): 1829-32.
- (2)Keicho N, Kudoh S. Diffuse panbronchiolitis: role of macrolides in therapy. Am J Respir Med 2002; 1(2): 119-31.
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
Illustration:田中博志