コンプライアンス(コンプライアンス)って、なに?|人工呼吸ケア
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「コンプライアンス」に関するQ&Aです。
尾野敏明
杏林大学医学部付属看護専門学校非常勤講師
コンプライアンスって、なに?
コンプライアンスは「肺や胸郭の膨らみやすさ(伸展性)」のことです。数値が小さいほど硬い(=コンプライアンスが低い)と判断されます。
〈目次〉
コンプライアンスとは
コンプライアンスは、物体の伸びやすさを表す用語である。
人工呼吸ケアにおいてコンプライアンスという用語は、肺胸郭の膨らみやすさ(硬さ)を意味し、圧変化に対する容量変化の割合、つまり、1回の換気量を得るのに、どれだけの圧が上がったかを示す(図1)。
つまり、コンプライアンスとは、「1cmH2Oの圧をかけたときに何mL膨らむのか」を示す。そのため、単位はmL/cmH2Oとなり、数値が大きいほどやわらかいということになる。
肺・胸郭それぞれでコンプライアンスは異なるが、肺と胸郭を単独で測定することは臨床上不可能である。そのため、肺・胸郭コンプライアンスを呼吸器系コンプライアンスとして評価している。
コンプライアンスの高い病態には肺気腫、逆に低い病態には、肺線維症、間質性肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などが挙げられる。
動的コンプライアンスと静的コンプライアンス
呼吸器系コンプライアンスには、動的コンプライアンス(Cdyn)と静的コンプライアンス(Cst)がある。
Cdynは、換気運動の途中の数値を計算に使用する。そのため気道や呼吸器回路内抵抗も反映し、気道分泌物の貯留、気管チューブの影響を受けるという特性がある。
Cstは、吸気終末(プラトー)の状態で測定する。プラトーは流量がゼロの状態であるため、気流の影響を受けず、気道抵抗の成分は除外され、純然たる肺胸郭コンプライアンスを測定することができる。
CdynとCstは、以下の式で算出できる。
Cdyn=一回換気量÷(最高気道内圧-PEEP)
Cst=一回換気量÷(プラトー内圧-PEEP)
正常値は諸説あるが、大まかにCdynで30~80mL/cmH2O、Cstで50~100mL/cmH2O程度と覚えておけばよいだろう。
略語
- ARDS(acute respiratory distress syndrome):急性呼吸窮迫症候群
- Cdyn(dynamic lung compliance):動的コンプライアンス
- Cst(static lung compliance):静的コンプライアンス
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社