人工呼吸器にはどんな種類がある?どのように使い分けるの?
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『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「人工呼吸器の種類・使い分け」に関するQ&Aです。
石井宣大
東京慈恵会医科大学葛飾医療センター臨床工学部技士長
人工呼吸器にはどんな種類がある?どのように使い分けるの?
人工呼吸器は、手動式と機械式、陽圧式と陰圧式、侵襲的と非侵襲的に分類できます。その他に、広義では体外循環式があります。
〈目次〉
- 1.人工呼吸器の分類
- 2.手動式人工呼吸器
- 3.機械式人工呼吸器
- 4.体外循環式人工呼吸器
人工呼吸器の分類
人工呼吸器の分類を図1に示す。
手動式人工呼吸器
バッグバルブマスクやジャクソンリース回路などの蘇生器具がある。
1バッグバルブマスク
- 自己膨張式で、ガス源がなくても操作できる。
- 呼気ガスを吸気しない非再呼吸方式である。
- 操作が簡便で、病院内から病院外・災害時まで幅広く適応がある。
- 組み立てが複雑で、熟練を要する。
2ジャクソンリース回路
- ガス駆動式で、酸素ガスが必要となる。
- 呼気ガスを一部吸気する再呼吸方式であり、酸素流量により再吸入量が変化する。通常、分時換気量の3倍程度の酸素流量が必要である。
- 構造は単純で、組み立てが簡単である。
- 操作に熟練を要する。
- ジャクソンリース回路は、バッグの壁が薄く、加圧時に気道抵抗やコンプライアンスを把握できる。また、バッグの膨らみから、自発呼吸の有無、換気量、換気回数を視認できる。
- 特に手術室、集中治療室などで使用されている。
機械式人工呼吸器
1侵襲的人工呼吸器
1)侵襲的陽圧式人工呼吸器
- 一般的な人工呼吸器を指す。気管チューブや気管切開チューブを介して、設定した換気様式でガスを送るものである。
- AC電源、医療用ガス(酸素、圧縮空気)を使用する。ただし、タービン駆動やピストン駆動で、圧縮空気を必要としない機種もある。
- 一般的には、本体、モニタディスプレイ、加温加湿器、呼吸回路の組み合わせで使用する。
2)在宅人工呼吸器
- 在宅で使いやすいよう、操作が簡便で、バッテリー容量などが強化されている。
- 内部にガス駆動源としてタービンやピストンを使用し、医療用ガスを必要としない。
- 酸素濃度を上げる場合は、低圧の酸素ガス(在宅酸素療法で使用する酸素)を接続して使用する。
2非侵襲的人工呼吸器
1)非侵襲的マスク式人工呼吸器
- 一般的にNPPVと呼ばれる機器である。
- 患者とのインターフェイス(接続)として、気管チューブなど侵襲的な器具を使用せずに、非侵襲的なマスクを介してガスを送り込む。
- 医療施設から在宅まで広い用途で使用する。
- 本体内部にタービン駆動を持ち、回路内に使用するガスを作り出す。医療ガスは、壁のアウトレットに接続する高圧酸素を使用する機種や、酸素流量計から供給する低圧酸素を利用する機種がある。
2)陰圧式体外式陽陰圧人工呼吸器
- 胸腹部にドーム状キュイラスを密着させ、キュイラス内を陽陰圧にすることで、陰圧では肺にガスを取り込み、陽圧で吐き出す機器である。
体外循環式人工呼吸器
- ECMO/エクモ(膜型人工肺)とECCO2R(体外式炭酸ガス除去)に分類できる。
- ECMOは、ポンプにより高流量の体外循環を行い、人工肺で酸素化と換気を行うものである。呼吸補助が目的であればveno-venousモード(静脈脱血-静脈送血モード)を行う。
- ECCO2Rは、人工肺を用いて、低流量のポンプや動-静脈圧の差圧を駆動圧として、二酸化炭素除去を目的に使用する。
略語
- ECMO(extracorporeal-membrane oxygenation):膜型人工肺
- ECCO2R(extracorporeal carbon dioxide removal):体外式炭酸ガス除去
[文献]
- (1)Slutsky AS. Mechanical ventilation. American College of Chest Physicians' Consensus Conference. Chest 1993; 104: 1833-1859.
- (2)妙中信之:血液ガスから人工呼吸治療へ―人工呼吸が必要になる病態―.クリニカルエンジニアリング2004;15:341-347.
- (3)日本循環器学会:循環器病の診断と治療に関するガイドライン.急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版).(2014年11月18日閲覧)
- (4)Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD). Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease.(updatee2013).(2014年11月18日閲覧)
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社