心臓はどのようにして血液を送り出しているの?
看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「心臓の機能」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
心臓はどのようにして血液を送り出しているの?
心臓は4つの部屋をもつ握りこぶし大の臓器です(図1)。休むことなく収縮と拡張を繰り返しており、この拍動を心拍(しんぱく)といいます。心拍数は成人で分間に60~70回で、1回あたり約70mLの血液を送り出しています。
図1心臓の位置
心臓はどのような機序で血液を送り出しているのでしょう。
心臓は左右で異なった血液を取り扱っていることです(図2)。心臓の右側には静脈血が、左側には動脈血が流れています。心臓内で血液が左右に移動することはありません。血液が流れ込むのは左右ともに心房で、血液が送り出されるのは左右ともに心室です。
図2心臓の血管
それでは、肺循環の流れからみていきましょう。全身を流れて心臓に戻ってきた静脈血は、大静脈から右心房に流れ込みます(図3)。
図3心臓での静脈血と動脈血の流れ方
右心房と右心室の間には三尖弁(さんせんべん、右房室弁)があり、右心房から右心室に静脈血を送り込むと同時に弁が閉鎖します。
次に、静脈血で満たされて拡張した右心室が心筋の働きで収縮すると肺動脈弁が開き、静脈血は肺動脈を通って肺に送られます。静脈血は肺でガス交換され、動脈血になります。
動脈血は肺静脈を通って左心房に戻ってきます。動脈血に満たされた左心房が収縮すると、動脈血は左心室に流れ込み、左心室が拡張します。左心室が動脈血で充満すると、左心房と左心室の間にある僧帽弁(そうぼうべん、左房室弁)が閉じます。
次に左心室が収縮して大動脈弁が開き、動脈血は大動脈へ流れ込んで全身を巡ります(図3)。左心室は、動脈血を身体の隅々に送る必要があるので、筋肉の厚さは右心室の3倍にもなります。
左右の心筋の収縮は交互に起こるのではなく、左右同時に起こります。心臓はポンプのように動き、一定の調律で心房と心室が連動しながら、収縮と拡張を繰り返しています。
MEMO心周期
1回の拍動で心房と心室が収縮・弛緩する過程を、心周期(しんしゅうき)といいます。心拍数75回/分(成人の平均心拍数)では、心周期は 0.8秒(60秒/75回)になります。
MEMO心筋の特殊性
心臓をはじめとする内臓の筋は、自分の意思で動かすことができない不随意筋です。通常、不随意筋は縞模様のない滑らかな筋肉(平滑筋)ですが、心筋だけは、不随意筋にもかかわらず縞模様をもつ横紋筋線維でできています。また、ほかの内臓の細胞が再生可能であるのに対し、心筋の細胞は壊死すると再生が不可能です。なお、刺激伝導系を構成する細胞は特殊心筋(とくしゅしんきん)といいます。
※編集部注※
当記事は、2016年5月16日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版