呼吸音と体位の関係

 

聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説している『聴診スキル講座』ですが、ここでちょっと一息。
ここでは、本編とは別に、聴診に関する豆知識やグッズを紹介します。

 

コラムの第2話は、「呼吸音と体位の関係」の解説です。

 

皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)

 

〈目次〉

 

体位によって音の強弱が変わる

普段、聴診を行う際、皆さんは患者さんの体位を気にしたことがありますか? 実は、聴診と体位には、大きな関係性があります。患者さんの体位によっては、聴診で聴こえる音の強弱が変わってくることがあります(図1)。

 

図1聴診時の体位

 

聴診時の体位

 

A腹臥位に近い体位、B:正常位。

 

例えば、間質性肺炎のように捻髪音が聴こえる患者さんに聴診を行う場合、腹臥位(またはそれに近い体位;図1A)の姿勢で音を聴くと、正常位(図1B)のときに聴いた音に比べて、音が弱く聴こえます。これは、重力によって下肺野背側の肺が膨らむため、細気管支で閉塞が起こりにくくなるため、音が弱く聴こえます。

 

このように、音の大きさと、体位は大きく関係しています。聴診を行う際には、音の大きさが変わったからといって、すぐに体調の変化を疑うのではなく、まずは患者さんの体位が正常かどうかを確認しましょう。

 

聴診をする場合は、患者さんの体位をしっかりと確認しましょう
猫背になっていたり、姿勢が悪い患者さんの場合は、音の強弱が変わっているかも? と意識することが大切です。

 

 


[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授

 

[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授

 


Illustration:田中博志

 


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