筋肉内注射と皮下注射では注射部位が違うのはなぜ?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は注射部位に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
筋肉内注射と皮下注射では注射部位が違うのはなぜ?
いずれも神経、血管の少ない場所を選ぶのは同じですが、筋肉内注射は厚い筋層がある部位で行ない、皮下注射は皮膚に近いところに骨がない部分を選ぶためです。
〈目次〉
筋肉内注射の代表的部位
筋肉内注射を行なう部位としては、以下の部位が代表的です(図1)。
- 上腕部:三角筋前半部
- 殿部:①クラークの点(上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線の外側1/3の部位)、②四分三分法(中殿筋部)、③ホッホシュテッターの部位
- 大腿上部:①大腿前外側広筋部、②大腿直筋部
これらは大血管、神経損傷や筋の短縮、拘縮を避けるために選ばれた部位です。成人では筋肉の発育が十分なため、筋拘縮が起こることは比較的少ないのですが、3歳以下の幼小児では、大腿四頭筋拘縮症や殿筋拘縮症、三角筋拘縮症が起こることが多く、筋肉内注射の部位や回数には十分な配慮が必要です(一般には小児への筋肉内注射は筋肉の発育の比較的よい大腿上部が好んで選ばれます)。
皮下注射の代表的部位
皮下注射は、神経、血管が少なく、皮膚に近いところに骨がない部分なら、全身いずれでも可能ですが、一般的には、①上腕伸側(上腕後側正中線下1/3の部位)、②三角筋前半部、③大腿前外側中央部が選ばれます。
筋肉内注射と皮下注射の部位が違う理由
このように神経、血管が少なく、筋肉が豊富であり、皮膚に接して骨がない上腕の三角筋部や大腿前外側中央部などは、筋肉内注射、皮下注射ともに行なわれています。皮下注射の場合は、比較的露出するのが容易な上腕部が好んで用いられます(図2)。
筋肉内注射の場合は、上腕伸側は筋層がやや薄く、神経や血管を傷つけやすく不適当であり、三角筋部や大腿前外側中央部以外では、筋層の厚い殿部(中殿筋部)が用いられます。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版