ストレスがかかると排便状態に影響が出るのはなぜ?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回はストレスによる排便状態に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
ストレスがかかると排便状態に影響が出るのはなぜ?
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(irritablebowelsyndrome:IBS)は、主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病態の総称です。
過敏性腸症候群は、①便秘型(慢性的な便秘や腹痛)、②下痢型(下痢症状が続くもの。一般的には血便を伴わない)、③不安定型(下痢便秘交替型ともよばれる。下痢症状が何日間か続いた後、便秘症状が起こり、これが交互に繰り返される状態)などに分類されます。
過敏性腸症候群の原因としてストレスによる腸管の運動異常が原因の1つと考えられていますが、脳がストレスを感じると腸管の運動に関係する自律神経系の異常が起こります。大腸の蠕動運動が亢進すると、十分な水分吸収が行われる前に腸管内容物が押し出される状態となり、下痢状態が起きてしまいます。
また、反対に大腸の蠕動運動が低下(抑制)と、内容物が腸管内に長く留まる状態となり、水分が過剰に吸収されて硬い便となり、便秘傾向となります。
嵌入便とその対応
嵌入便(かんにゅうべん):慢性的に直腸に便が滞留し便意が起こらないまま直腸内でカチカチに硬くなって、自力では排出できない状態です。このときむやみに下剤を投与すると大腸上部の下痢便が一気に下りてきて、直腸に便があるため自然と緩んだ内肛門括約筋の間から固形便が出ないまま下痢便だけが漏れて、だらだらと便失禁が続きます。
この場合は摘便を行います(図1)。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版