筋の収縮のメカニズム|骨格筋の機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、筋の収縮のメカニズムについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
筋肉は構造と機能から一般に骨格筋 (skeletal muscle)、心筋 (cardiac muscle)、平滑筋 (smooth muscle)の3種類に分類される。
骨格筋は横紋 (cross-striation)(図1)がよく発達し、正常では神経の刺激がなければ収縮しない。
また、筋線維間には形態的にも機能的にも連絡がなく、一般には随意性の神経(運動神経)支配を受けている。
心筋にも横紋があるが、心筋は機能的にはシンシチウム (syncytium:合胞体)である。そして心筋層の中に自発的に活動電位を発生するペースメーカ細胞 (pacemaker cell:歩調取り細胞)があるために、心臓外からの神経支配を遮断した後でも心臓は自律的に収縮する。
平滑筋には内蔵型(単一ユニット型)と多ユニット型の2種類があるが、いずれにも横紋はない。内蔵平滑筋は、機能的にはシンシチウムであり、不規則に活動電位を発生するペースメーカ細胞をもっている。
そのため、不規則ながら自発的に収縮できる。大多数の中空性内臓器官は内蔵平滑筋からできている。一方、多ユニット平滑筋は、自発的に収縮することなく、1本の筋線維が刺激されるとその筋線維だけが収縮する。
その点は骨格筋に似ている。多ユニット平滑筋は大血管や眼の虹彩に存在する。筋肉の種類にかかわらず、筋細胞は神経線維と同様、化学的・電気的・機械的刺激によって興奮し、活動電位を発生する。
この活動電位は筋細胞の膜に沿って伝わる。神経線維と異なる重要な特徴は、筋細胞は収縮タンパク(アクチンとミオシン)をもつこと、活動電位によって収縮機構が働くことである。すなわち、筋肉の種類を問わず、アクチンとミオシンの滑走が起こり、筋が収縮する。
この収縮機構にはカルシウム(Ca2+)が重要な役割を果たしている。活動電位と収縮を結びつける機構を筋の興奮収縮連関 (excitation-contraction coupling:E-C coupling)とよぶ。
骨格筋、心筋、平滑筋では、収縮張力発生メカニズムに違いもみられる(表1)。
次回以降は、骨格筋、心筋、平滑筋の興奮収縮連関について概説する。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版