筋の収縮のメカニズム|骨格筋の機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、筋の収縮のメカニズムについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師
Summary
- 1. 筋肉は、構造と機能から骨格筋、心筋、平滑筋の3種類に分類される。
- 2. 骨格筋と心筋は横紋をもっているが、平滑筋には横紋がない。
- 3. 心筋と平滑筋細胞は機能的には合胞体のため細胞間の連絡があるが、骨格筋の筋線維間には連絡がない。
- 4. 心臓と平滑筋(内臓平滑筋)は、自発的に活動電位を発生するペースメーカ細胞をもっているが、骨格筋にはない。
- 5. 筋肉の種類を問わず筋細胞は、収縮タンパク(アクチンとミオシン)をもっており、アクチンとミオシンの滑走により収縮する。収縮には Ca2+が必要である。
筋肉は構造と機能から骨格筋(skeletal muscle)、心筋(cardiac muscle)、平滑筋(smooth muscle)の3種類に分類される。
骨格筋は横紋(cross-striation、図1)がよく発達し、正常では神経の刺激がなければ収縮しない。
図1横紋
また、筋線維間には形態的にも機能的にも連絡がなく、一般には随意性の神経(運動神経)支配を受けている(「骨格筋の構造」参照)。
心筋にも横紋があるが、心筋は機能的にはシンシチウム(syncytium、合胞体)である。そして心筋層の中に自発的に活動電位を発生するペースメーカ細胞(pacemaker cell、歩調取り細胞)があるために、心臓外からの神経支配を遮断した後でも心臓は自律的に収縮する。
平滑筋には内蔵型(単一ユニット型)と多ユニット型の2種類があるが、いずれにも横紋はない。内蔵平滑筋は、機能的にはシンシチウムであり、不規則に活動電位を発生するペースメーカ細胞をもっている。
そのため、不規則ながら自発的に収縮できる。大多数の中空性内臓器官の筋層は内蔵平滑筋からできている。一方、多ユニット平滑筋は、自発的に収縮することなく、1本の筋線維が刺激されるとその筋線維だけが収縮する。
その点は骨格筋に似ている。多ユニット平滑筋は大血管や眼の虹彩に存在する。筋肉の種類にかかわらず、筋細胞は神経線維と同様、化学的・電気的・機械的刺激によって興奮し、活動電位を発生する。
この活動電位は、筋細胞の膜に沿って伝わる。神経線維と異なる重要な特徴は、筋細胞は収縮タンパク(アクチンとミオシン)をもつこと、活動電位によって収縮機構が働くことである。すなわち、筋肉の種類を問わず、アクチンとミオシンの滑走が起こり、筋が収縮する。
この収縮機構にはカルシウムイオン(Ca2+)が重要な役割を果たしている。活動電位と収縮を結びつける機構を筋の興奮収縮連関(excitation-contraction coupling:E-Ccoupling)とよぶ。
骨格筋、心筋、平滑筋では、収縮張力の発生メカニズムに違いがある(表1)。
表1筋肉組織の収縮張力発生メカニズムの違い
次回以降は、骨格筋、心筋、平滑筋の興奮収縮連関について概説する。
※編集部注※
当記事は、2016年3月13日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版