上室起源の幅広QRS波|不整脈の心電図(9)
心電図が苦手なナースのための解説書『アクティブ心電図』より。
今回は、上室起源の幅広QRS波について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
[前回の内容]
〈目次〉
心室内伝導障害、脚ブロック
図1の心電図を見てみましょう。
PP間隔は約22コマで規則正しいですね。PQ間隔は約5コマで正常上限ですが一定です。QRS波の幅はV1で約4コマあります。他の誘導では狭く見えるところもありますが、幅の計測はいちばん広く見える誘導で行います。
P波から引き続いてQRS波が見られますので、これは心房の興奮が心室に伝導したもので、上室起源の幅広QRS波です。
房室結節からヒス束を伝導しているにもかかわらず、心室内で伝導に時間がかかっている場合を心室内伝導障害といいます。厳密には2.5コマ(0.10秒)までが正常QRS幅で、それを超えれば心室内伝導障害です。
さらに、心室内伝導障害のうち、QRS波の幅が3コマ以上で、V1、V2で高いR波が見られる場合を完全右脚ブロック、QRS波の幅が3コマ以上でV1、V2でR波が高くない場合を左脚ブロックとよびます(図2)。
アクティブ心電図病院の看護部に例えると、心室病棟内の申し送り、伝達に時間がかかっています。片方の脚主任がいないと、残りの脚主任を通して病棟に命令が伝達されますから、全体に指示が行き渡るのに時間がかかります。
WPW症候群
すでに勉強しましたね。ケント束があるために心房から心室に早いタイミングで興奮が伝導して、デルタ波ができます。このためQRS波の幅が広くなります。
まとめ
- 上室起源のQRS波が幅広になる理由は、心室内伝導障害かWPW症候群の2つだけ
- 心室内伝導障害のなかで、QRS波の幅3がコマ以上あれば、完全右脚ブロックか左脚ブロック
- デルタ波があって、P⊿間隔が3コマ以内ならWPW症候群
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『アクティブ心電図』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版