2018/08/03 のクイズ

入院中の72歳男性Aさんは、妻と二人暮らしです。4週間前に脳出血を発症し、左片麻痺状態となりました。急性期は尿道留置カテーテルにて排尿管理されていましたが、発症後10日目にカテーテルを抜去しています。その時点での1日の尿量は1,200mL程度でした。カテーテル抜去直後は、ベッドに臥床している時間が長く、尿意の訴えも曖昧でほとんど失禁してしまっていたので、3時間ごとの排泄確認にて、おむつ交換をしていました。発症後3週間経過したころより、リハビリテーションが進み、臥床している時間を短くできるようになりました。排尿はベッドサイドで、看護師介助にて尿器を使って排尿することが増えました。
現在、尿意は、大体1時間半~2時間程度で生じ、1回の尿量は80mL程度ですが、1日3回程度は排尿行為をする際、すでにオムツに尿失禁をしている状態です。排尿直後の残尿量は15mLでした。本人より、「尿の回数が頻繁で大変だ。退院してからも心配。家族に頻繁に手伝ってもらうのは無理だと思う」と看護師に訴えがありました。この患者さんの現在の尿失禁分類と、考えられる排尿管理として、最も適切なものはどれでしょうか?
  1. 1. 尿失禁分類は切迫性尿失禁であり、尿道留置カテーテルを挿入し、排尿行為の負担を減らすよう考慮する。
  2. 2. 尿失禁分類は、切迫性尿失禁と機能性尿失禁の合併であり、より排尿行為が自立しやすいよう、自動吸引尿器などの導入を考慮する。
  3. 3. 尿失禁分類は溢流性尿失禁であり、尿道留置カテーテルの挿入を考慮する。
  4. 4. 尿失禁分類は腹圧性尿失禁であり、排尿行為の際に腹圧をかけずに済むよう、寝たまま使用できる自動吸引尿器の導入を考慮する。

挑戦者3110人 正解率74%

脳血管障害による排尿障害として、神経因性膀胱と機能性尿失禁があります。神経因性膀胱は、脳出血や脳梗塞のために、排尿をつかさどる部位が障害され、正常の排尿機能が保てなくなる状態です。症状としては、切迫性尿失禁などの蓄尿障害と、溢流性尿失禁などの排出障害、もしくは両方の合併の場合もあります。機能性尿失禁は、下部尿路機能に障害がなくても、脳血管障害による歩行障害や認知症による認知障害などのために、排尿行為自体がスムーズに進まず、失禁を来す状態です。
Aさんは、大体1時間半~2時間程度で尿意を生じ、1日3回の排尿回数と頻繁であることや、1回の排尿量が100mL以下であり、排尿行為をする際にすでに失禁していることなどから、蓄尿障害であるといえます。また、脳出血で入院中である状況も合わせると、Aさんは神経因性膀胱による切迫性尿失禁の状態であると考えられます。なお、残尿量は15mLと少なく、排出障害は否定的です。さらに、失禁の原因が切迫性尿失禁だけかというとそうではなく、左片麻痺があり尿器使用にも介助が必要なことから、排泄動作に時間がかかることによる機能性尿失禁も要因として含まれていると考えられます。
また、Aさんの主訴は、頻尿であることが身体的に辛く、今後退院した際に、排尿行為に介助が必要なままであった場合に、家族の負担となることを心配しているというものです。まず、泌尿器科的なアプローチとしては、過活動膀胱に使用する抗コリン薬の内服が効果的である可能性があります。排尿管理としては、今後もリハビリテーションを積極的に行い、身体機能を回復させることで排尿行為の自立を目指すことが必要です。排尿行為がより自立しやすいよう、手持ち式の安楽尿器や自動吸引尿器などの失禁用品を導入することも考えられます。

1. 尿失禁分類は切迫性尿失禁であり、尿道留置カテーテルを挿入し、排尿行為の負担を減らすよう考慮する。
不正解
2. 尿失禁分類は、切迫性尿失禁と機能性尿失禁の合併であり、より排尿行為が自立しやすいよう、自動吸引尿器などの導入を考慮する。
正解
3. 尿失禁分類は溢流性尿失禁であり、尿道留置カテーテルの挿入を考慮する。
不正解
4. 尿失禁分類は腹圧性尿失禁であり、排尿行為の際に腹圧をかけずに済むよう、寝たまま使用できる自動吸引尿器の導入を考慮する。
不正解

引用参考文献など

1)今村満美.西村かおる監.6 脳血管障害による排尿障害.ケースで納得!排尿障害のケア 病棟・外来編.ウロ・ナーシング2003年夏季増刊,2003,138-152.
2)高崎良子.谷口珠実ほか編.5 下部尿路機能障害の治療とケア.下部尿路機能障害の治療とケア.メディカ出版,2017,204-210.
3)石野佳保里.後藤百万ほか編.Ⅻ 排尿補助用具・器具.徹底ガイド排尿ケアQ&A.総合医学社.2006,180-181.

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