2018/06/10 のクイズ

87歳男性のAさんは妻(82歳)と二人暮らしで子どもはいません。今回、脳梗塞を発症し、入院となりました。入院前、ADLは自立しており、車の運転もしていました。現在は、右半身の不全麻痺があり、リハビリテーションを行っていますが、発症後1カ月半を経過した今も起き上がり動作や移動動作、食事のセッティングなどに妻の介助が必要です。多職種カンファレンスでは、主治医も担当セラピストもこれ以上のADL回復は難しいとの見解でした。Aさんは「家が心配で早く帰りたい」と強く訴えますが、Aさんの妻は「私も年だから、今の夫の状態では、家で看ることはできない」と自宅退院へ消極的です。Aさん夫婦への関わりとして最も適切なものは次のうちどれでしょうか?
  1. 1. Aさんに対し、「家には奥様がいらっしゃるので大丈夫ですよ」と話し、安心させる。
  2. 2. Aさんに対し、「もう少しリハビリをしたら良くなるので頑張りましょう」と励ます。
  3. 3. Aさんの妻に対し、「これ以上の回復は難しいので、自宅が無理なら施設を探しましょう」と助言する。
  4. 4. Aさんの妻に対し、「Aさんの退院後の生活で不安なことを聞かせてもらえませんか?」と話を聞く。

挑戦者4444人 正解率94%

1. Aさんに対し、「家には奥様がいらっしゃるので大丈夫ですよ」と話し、安心させる。
不正解

Aさんの「家が心配」という言葉には、単に家の状態が心配なだけでなく、入院の長期化や自身の身体的変化に伴った今後の生活再建への不安などが含まれている可能性があります。安易に「大丈夫ですよ」という言葉だけではAさんの安心感にはつながりません。まずは本人の隠れた欲求や不安を聞く必要があります。よってこの選択肢は誤りとなります。

2. Aさんに対し、「もう少しリハビリをしたら良くなるので頑張りましょう」と励ます。
不正解

発症1~2カ月のリハビリテーション時期の患者さんは、回復に伴い「自分一人でできるかもしれない」と挑戦したい気持ちがある一方、思うように改善しない焦燥感、人の手を借りなくてはいけないという申し訳なさなど、さまざまな気持ちを抱えています。主治医の「これ以上の回復の見込みがない」という見解があるにもかかわらず、看護師が安易に「良くなる」という言葉で励ますことは、患者さんに嘘をつくことになり、今後、医療者に対する不信感につながることもあります。病状の説明などは主治医がすべきであり、ここでは「リハビリ頑張っていますね」と現状をねぎらう方が良いでしょう。よってこの選択肢は誤りとなります。

3. Aさんの妻に対し、「これ以上の回復は難しいので、自宅が無理なら施設を探しましょう」と助言する。
不正解

「これ以上の回復は難しい」という病状についての見解や「施設を探しましょう」という助言は看護師がすべきことではありません。もし現状の説明が必要ならば、主治医から病状説明してもらうように機会を作ることが必要です。また、この選択肢ではAさんの希望を全く無視した対応になっています。このような医療者の一方的な発言は、倫理的配慮が欠如しているといえます。よってこの選択肢は誤りとなります。まず優先すべきことは、Aさんと妻の話をよく聞き、何が問題なのか、Aさん夫婦それぞれのニーズは何か、そのために看護師が支援できることはないのかをAさん夫婦と一緒に考えることです。

4. Aさんの妻に対し、「Aさんの退院後の生活で不安なことを聞かせてもらえませんか?」と話を聞く。
正解

Aさんの場合、入院から1カ月半が経っており、家族も、入院の長期化による心身の疲労が蓄積してくるころです。Aさんの妻も高齢であることから、Aさんの妻の健康状態にも注目すべきです。Aさんの妻の「家で看ることができない」との発言から、自身の健康状態が影響していないか、自宅生活でのイメージができていないのではないか、社会資源のことは知っているかなど、なぜ家で看ることができないと思うのかの理由を聞き出す必要があります。そこで得た情報を他職種とも共有することで、包括的にAさんの家族を支援する必要があります。

引用参考文献など

1)黒河内仙奈.水谷信子監.老年期に特有な健康障害と看護.最新老年看護学.第3版,日本看護協会出版会,2017,233-241.
2)水野敏子.水谷信子監.老年看護の倫理的課題と対応.最新老年看護学.第3版,日本看護協会出版会,2017,50-54.
3)六角僚子.支援体制領域のアセスメントとケア.アセスメントから始まる高齢者ケア 生活支援のための6領域ガイド.医学書院,2012,174-184.

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