2018/02/26 のクイズ

CHDF(持続的血液濾過透析)施行時の管理について、最も正しいものを次から選んでください。
  1. 1. 透析液・補充液に使用される濾過型人工腎臓用補液は、細胞外液と同じ電解質濃度である。
  2. 2. 出血傾向のある患者では血液を体外循環させるためにヘパリン®を第一選択薬として使用し、灌流血液の凝固を予防する。
  3. 3. 抗凝固薬は脱血側の血液がACT(活性化凝固時間)100秒程度で管理する。
  4. 4. 空気が混入した時には直ちに血液ポンプを停止し、カテーテルの返血側をクランプし、左側臥位にする。

挑戦者3068人 正解率28%

1. 透析液・補充液に使用される濾過型人工腎臓用補液は、細胞外液と同じ電解質濃度である。
不正解

腎機能が低下すると、ナトリウムは変動が少なく、カリウムは高値になり、高カリウム血症になります。そのような、腎機能が低下した患者さんに投与される濾過型人工腎臓用補液は、ナトリウムは正常血中濃度と同等で、カリウムは正常血中濃度の約半分になっています。(表1)。そのため、小分子量であるカリウムは濾過や拡散によって低下しやすく、濾過透析を行うと容易に低カリウム血症になるため、電解質の定期的な検査は必須です。さらに、低カリウム血症では心電図がU波の出現や増高、T波の平坦化や陰性化が見られるので、モニタリングを継続して行いましょう。
また、濾過型人工腎臓用補液は、重炭酸とカルシウム、マグネシウムが同時に存在すると血漿析出を生じるため、A液とB液のパックがくっついたダブルパックになっており、使用直前に開通して混入します。開通せずに片側のみ投与すると高度のアルカローシスになるため、開通忘れには注意が必要です。

2. 出血傾向のある患者では血液を体外循環させるためにヘパリン®を第一選択薬として使用し、灌流血液の凝固を予防する。
不正解

血液を体外循環させる場合は、灌流血液を凝固させないよう抗凝固療法が必要です。血液透析で一般的に使用される未分画ヘパリン(ヘパリン®)は、血中濃度半減期が1~1.5時間と長く、回路内だけでなく全身の血液の抗凝固作用があります。出血傾向のある患者さんやCHDFのように持続的な治療が必要な場合には、出血傾向を助長させる危険性があります。そのため、ヘパリン®ではなく、ナファモスタットメシル酸塩製剤(フサン®)が第一選択薬として使用されることが多いです。その理由は、ナファモスタットメシル酸塩製剤(フサン®)は、血中濃度半減期が約8分と短いため、主な抗凝固作用はCHDFの回路内であること、また、ATⅢ(アンチトロンビンⅢ)と結合しないためです。特に、DIC(播種性血管内凝固症候群)を併発するとATⅢが低下傾向になるため、未分画ヘパリン(ヘパリン®)では十分な薬効が得られないことがあります。

3. 抗凝固薬は脱血側の血液がACT(活性化凝固時間)100秒程度で管理する。
不正解

患者体内の血液の凝固能は脱血側の血液のACT(activated coagulation time)に反映されます。血液の正常なACTは100秒前後です。しかし、CHDFを行う場合は、灌流血液の凝固を予防するために、抗凝固薬を投与し、ACTを延長させます。そのため、採血では脱血側だけでなく送血側のACTも測定する必要があります。送血側のACTを測定することで、回路内の血液の凝固時間が分かり、抗凝固薬の投与の目安になります。
CHDF施行時に抗凝固薬を投与する際は、送血側の血液はACT150~200秒程度になるよう調整します。成人ではナファモスタットメシル酸塩製剤(フサン®)を持続投与し、30~35mg/hが投与の目安になります。抗凝固薬の過剰投与は患者さんの出血リスクが高まり、過少投与では回路内に凝固のリスクが高まるため、抗凝固薬の投与と管理が必要です。重症な敗血症でDICを併発した場合、線溶系は抑制され、回路内の凝固を起こしやすくなります。その場合は、血小板やFDP(フィブリン分解産物)の推移と凝固能を評価し、抗凝固薬の追加投与量を検討します。

4. 空気が混入した時には直ちに血液ポンプを停止し、カテーテルの返血側をクランプし、左側臥位にする。
正解

血液が体内へ戻る直前に気泡探知器が付いており、回路内に空気があれば血液ポンプが停止し、血液濾過器の前後には少量の空気が混入しても回路内へ流れないようドリップチェンバーが付けられています。回路の接続不良や透析液が空になると空気が混入し、さらに気泡センサーが作動しないと体内に空気が入り、空気塞栓を起こすため緊急を要します。その場合の対処方法は直ちに血液ポンプを停止し、カテーテルの返血側をクランプすることです。脳への空気塞栓を防ぐために右心房に空気をトラップさせるよう左側臥位にします。100%の酸素吸入と呼吸循環管理を厳重に行います。小量の空気は体内に入っても症状は現れませんが、咳嗽、胸痛、呼吸苦、胸部不快、血圧低下、意識障害、ショック、痙攣などが現れたら、全身状態を観察します。

引用参考文献など

1)辻尾友利子ほか.CHDF.重症集中ケア.14(5).2015,75-82.
2)中敏夫.坂田育弘ほか編.持続的血液浄化装置(CRRT).すぐ対応!救急患者のアラームサイン.EMERGENCY CARE2006年新春増刊.2006,101-117.

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