2018/02/17 のクイズ

IABP(大動脈内バルーンパンピング)施行時の管理についての説明で最も正しいものを次から選んでください。
  1. 1. ベッド上安静による呼吸器合併症を予防するために、必ずヘッドアップする。
  2. 2. 体位変換を行うために動脈圧トリガーモードに変更した。
  3. 3. 致死性不整脈が発生したため、動脈圧トリガーモードに変更した。
  4. 4. 危険アラームが鳴り、突然IABPが駆動しなくなった。誤作動は危険であるから一旦電源を切った。

挑戦者6448人 正解率39%

1. ベッド上安静による呼吸器合併症を予防するために、必ずヘッドアップする。
不正解

IABPのバルーンはバルーン先端が左鎖骨下動脈の分岐より2cm下に位置し、下端は腹腔動脈や上腸管動脈、腎動脈にかからない下行大動脈に留置されています。ヘッドアップを行うとカテーテルが屈曲するリスクや、カテーテルの位置がずれて十分な効果が出ないことがあります。バルーンにより腹腔動脈、腎動脈起始部の閉塞から腹部臓器の灌流を障害し、腸管虚血や腎不全を起こすことがあります。そのため、安易にヘッドアップを行うとバルーンの位置が変わり危険です。医師の指示に沿って、必要時はヘッドアップを行います。特に体位変換時にはカテーテルに屈曲がないか、確実な固定ができているかを確認し、臓器の灌流障害がないか観察します。

2. 体位変換を行うために動脈圧トリガーモードに変更した。
正解

IABPは心収縮期直前でバルーンを収縮させ、心拡張期に膨張させます。トリガーモードには心電図トリガーモード、動脈圧トリガーモードなどがあり、通常は心電図トリガーモードを使用することが多いです。心電図トリガーモードはR波の直前でバルーンを収縮させ、T波の頂点で膨張させます。動脈圧トリガーモードでは収縮期の圧波形が立ち上がる直前でバルーンを収縮させ、拡張期始めに膨張させます。心電図トリガーモードでは、心電図にノイズが入ると正常にトリガーできず駆動できなくなるため、体位変換など心電図にノイズが入る場合には動脈圧トリガーモードに変更します。また動脈圧トリガーモードでは動脈血ガス分析などの採血時には、動脈圧波形が消失し、IABPが駆動できなくなるため、心電図トリガーモードに変更します。ケアを行う前には必ず駆動条件を確認し、適切なモードになっているかの確認が必須です。

3. 致死性不整脈が発生したため、動脈圧トリガーモードに変更した。
不正解

致死性不整脈が発生した場合、まずは胸骨圧迫を行い、ドクターコールと除細動器を準備し救命処置を行います。不整脈や心停止では心電図や動脈圧をトリガーできないために、IABPを駆動することができなくなります。そのため、すぐにインターナルトリガーモード(内部同期:設定された拍動数で駆動)を選択し、固定レートを設定して速やかなアシストを再開します。この場合、IABPの循環補助効果はほとんど期待できません。しかしそのまま放置すると十数分程度でバルーンの折り目に血栓が形成されるため、駆動を中断・停止しなければならない状況でもインターナルトリガーモードで必ずバルーンを駆動させておく必要があります。心拍が再開した場合にはインターナルトリガーモードでは心周期に同期してトリガーしないため、心電図トリガーモードなど適切なモードへ変更します。

4. 危険アラームが鳴り、突然IABPが駆動しなくなった。誤作動は危険であるから一旦電源を切った。
不正解

IABPのアラームの種類には危険アラームと注意アラームがあります。危険アラームはIABPの駆動を停止させるため、注意が必要です。すぐに患者の状態観察、モニター画面でのアラーム内容の確認、アラームの原因検索、適切な対処が必要です。そのために、すぐに電源を切ってはいけません。危険アラームは、バルーン破裂によるリークやカテーテルの屈曲、ねじれ、ヘリウムガスの不足などにより生じます。バルーン破裂の場合には早急にカテーテルの入れ替えが必要です。機器本体に問題がある場合には早急に、機器本体を交換します。その間、患者さんの血行動態が安定するようモニタリングに注意し、薬剤の調整を行います。また、バルーンの折り目の血栓予防のためには手動でのポンピングが必要です。ロック付きの50mLのシリンジで陰圧をかけたまま、バルーンの拡張と収縮を行います。

引用参考文献など

1)田林晄一ほか.澤芳樹監.大動脈内バルーンパンピング(IABP).研修医、コメディカルのためのプラクティカル補助循環ガイド.メディカ出版.2007,65-108.
2)塚原大輔.IABP/PCPS/VASの適応・禁忌・離脱のなぜ:仕組みと効果を比較しながら理解する.重症集中ケア.8(1).2015,4-12.
3)増田貴生.頻発インシデント対策 現場対応策IABP.重症集中ケア.14(5).2016,83-92.

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