2017/12/11 のクイズ

発熱、下痢を主訴に来院した80歳の患者さん。来院時の状態は以下の通りでした。体温38.5度、脈拍110回/分、血圧110/60mmHg、ショック所見なし、皮膚乾燥・ツルゴールの低下あり。この患者さんに初期に投与される輸液製剤として最も適切なものは次のうちどれでしょうか。
  1. 1. 高カロリー輸液製剤
  2. 2. 生理食塩水
  3. 3. 5%ブドウ糖液
  4. 4. 1号液

挑戦者4249人 正解率45%

この患者さんは、発熱・下痢が主訴にあり、皮膚乾燥・ツルゴールの低下という状態から、脱水(循環血液量の減少)が最も疑われます。脱水に対する初期輸液には、細胞外液補充液(生理食塩水)や1号液が用いられます。しかし、状況によって異なるため、細胞外液補充液(特に生理食塩水)は、高ナトリウム血症を起こす可能性があり、注意が必要です。

1. 高カロリー輸液製剤
不正解

輸液製剤は、「水・電解質輸液」、「栄養輸液」、「その他」などに大別され、目的別に選択されます。脱水(水・電解質)を補正する目的の初期投与に、栄養輸液製剤である高カロリー輸液製剤は用いられません。

2. 生理食塩水
不正解

生理食塩水は、細胞外液補充液の代表的なもので、500mLを投与した場合、そのすべてがナトリウムの多く含まれている細胞外液となります。脱水の補正は可能ですが、高ナトリウム血症を惹起する恐れがあります。そのため、細胞外液と細胞内液の双方をバランス良く補充できる1号液の方が適切と考えられます。

3. 5%ブドウ糖液
不正解

5%ブドウ糖液は、低張性電解質輸液製剤です。ブドウ糖は代謝されると水に変化するため、細胞内に水分を分布させます。投与されたものは、細胞内液:細胞外液=40:20の割合で分布されるため、多くの水が細胞内液に分布され、脱水の補正としては不十分です。また、5%ブドウ糖液は電解質を含んでいないため、脱水に対する初期輸液には用いられません。

4. 1号液
正解

1号液とは、生理食塩水と5%ブドウ糖液を1:1の割合で混合したもので、細胞内液内と細胞外液内に分布されます。1号液500mLを輸液投与した場合、生理食塩水と5%ブドウ糖液が1:1の割合であるため、生理食塩水、5%ブドウ糖液ともに250mLとなります。生理食塩水はすべて細胞外液となりますが、5%ブドウ糖液は、細胞内液:細胞外液=40:20の割合で分布するため、細胞内液は約166mL、細胞外液は約84mLとなります。最終的には、生理食塩水分の細胞外液が足されるため、細胞内液は約166mL、細胞外液は約334mL(約84mL+250mL)で分布されます。この患者さんの場合では、脱水を補正しつつ、電解質補正もできる1号液が適切です。
なお、選択肢2の生理食塩水と迷う問題ですが、ショック状態でないことや、高ナトリウム血症を引き起こす危険性を考えると、1号液を選択します。

引用参考文献など

1) 山下亮.急性期患者の経静脈栄養:急性期の輸液投与の原則.全科対応 重症患者ケアパーフェクトブックQ&A, 学研メディカル秀潤社,2013,223-226.

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