2020/08/04 のクイズ

◆精神科看護の問題◆Aさんへの対応として、適切でないのはどれでしょうか?
78歳でアルツハイマー型認知症(HDS-R15点)のAさん。肺炎を引き起こし抗生剤の点滴治療を開始しました。しかし、たびたび点滴を自己抜針します。
  1. 1. 点滴の自己抜針が続くため、精神保健指導医の診察、指示により拘束帯で身体拘束を行った。
  2. 2. 点滴のルートの走行や点滴の留置針の刺入部位を、できるだけ患者さんに見えないよう工夫する。
  3. 3. 患者さんの皮膚の不快感、掻痒感を減らすため、スキンケアや皮膚の保湿のためのケアを行う。
  4. 4. 点滴の固定絆創膏にはっきりと【点滴ですよ】と書き、視覚的刺激を活用する。

挑戦者9732人 正解率41%

1. 点滴の自己抜針が続くため、精神保健指導医の診察、指示により拘束帯で身体拘束を行った。
正解

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)では、多動、不穏があり、患者さんの生命の危険がある場合、かつ切迫性(緊急性)、非代替性、一時性などが認められる場合においては、身体拘束の適応となります1)。今回のケースでは、肺炎治療のために点滴治療が必要であることは事実ですが、それが即、身体拘束の要件を満たすものとはいえません。ほかの選択肢にもあるように、点滴のルートを工夫したり、できる限り点滴が必要でなくなるような対応をすることが身体拘束よりも優先となるため、このような対応は適切とはいえません。

2. 点滴のルートの走行や点滴の留置針の刺入部位を、できるだけ患者さんに見えないよう工夫する。
不正解

AさんはHDS-R15点ということで、中程度の認知障害があると思われます。そのため、自身が肺炎治療のための点滴をしているということをきちんと理解することは難しく、自分の視界に見慣れないルートなどがあれば、それを取り払い、引き抜いてしまうことにつながります。このように治療への理解や同意が難しい認知症患者さんの場合、点滴などのルート類は、衣類の中を通したり、腕ではなく足の血管から点滴を入れ、患者さんの視界に入らないようにしたりすることで、点滴の自己抜去を防げることがあります。

3. 患者さんの皮膚の不快感、掻痒感を減らすため、スキンケアや皮膚の保湿のためのケアを行う。
不正解

認知症患者さんでは、点滴ルートが皮膚に触れることや、テープ類が皮膚に張り付くことによる掻痒感・不快感などで、ルート類を自己抜去してしまうことがあります。また高齢者の皮膚は、表皮のバリア機能が弱く、ちょっとした刺激でも、かぶれや皮膚損傷を引き起こします。こうした皮膚損傷による不快感も、ルートの自己抜去につながってしまいます。点滴の留置針の刺入部周辺のスキンケアを丹念に行い、保湿剤を塗布することで、皮膚のバリア機能が強化され、掻痒感や不快感を除去することで点滴ルートを引き抜く行動が減少する可能性があります。

4. 点滴の固定絆創膏にはっきりと【点滴ですよ】と書き、視覚的刺激を活用する。
不正解

認知症の患者さんの場合、点滴のルートを見えなくしたり、刺入部位を隠したりすることで抜針を予防することもありますが、重度の認知症でない場合、実際に点滴ボトルや注射針、刺入部を見てもらうことで、具体的なイメージを持つことでき、安心感を得ることができるケースもあります。仮に記憶保持が困難であったとしても絆創膏などに『点滴です、触らないでください』というメッセージを書くことで理解してもらう方法もあります。

引用参考文献など

1)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律.(2020年6月閲覧)
2)日本総合病院精神医学教育・研究委員会.身体拘束.身体拘束・隔離の指針(日本総合病院精神医学会治療方針3).星和書店,2007,1-25.
3)小林美亜ほか.認知症・せん妄・身体拘束の最新エビデンスPart3 身体拘束にかかる最新エビデンス.エキスパートナース. 33(3), 2017,102-109.
4)釜英介.相馬厚ほか編.青木民子監.合併症治療にとっての隔離・身体拘束.身体合併症をもつ精神科患者へのアプローチ 東京都立松沢病院の看護実践から.精神看護出版,2003,50-53.
5)島橋誠.日本看護協会編.ケアを受け入れてもらうためのアプローチ.認知症ケアガイドブック,2016,85-87.(2020年6月閲覧)

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