状況設定問題（144問）　症状・疾患・治療に応じた地域・在宅看護

第100回午前91問

次の文を読み問題1に答えよ。
Aさん（70歳、男性）は、65歳の妻と2人で暮らしている。Aさんは67歳のときに安静時に振戦が現れ、パーキンソン病と診断された。ヤールの重症度分類ステージⅢで、要介護3である。Aさんの症状として、仮面様顔貌、小刻み歩行および前傾姿勢がある。歩行練習を行っており、排泄は時間はかかるが自分でできている。Aさんの長男夫婦は車で1時間のところに住んでおり、週末に様子を見にきている。Aさんは訪問看護を2週間に1回利用している。

問題1
転倒を予防するために、Aさんと妻に対して行う訪問看護師の指導で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.　なるべく家の中で過ごす。
2.　方向転換はすばやく行う。
3.　夜間はポータブルトイレを利用する。
4.　動きが遅いときには歩行練習を増やす。
5.　歩行を開始する時は、妻がかけ声をかける。

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解答・解説

1.　なるべく家の中で過ごす。: ADLを維持するためにも、生活を縮小させない支援が必要である。
2.　方向転換はすばやく行う。: バーキンソン病は姿勢保持が困難で、動作は緩慢になる病態である。本人のペースに合わせて方向転換をしないと転倒などの事故につながる。
3.　夜間はポータブルトイレを利用する。: 小刻み歩行、前傾姿勢があるため、歩行時には見守りが必要である。今後の病状の進行も考慮し、妻の負担をできるだけ少なくするためにも、夜間のポータブルトイレ使用を考えたい。
4.　動きが遅いときには歩行練習を増やす。: 動作が遅いのはパーキンソン病の病態である。歩行練習の増加で解決する問題ではない。練習を増やすことで疲労からさらに病状が悪化する可能性もある。
5.　歩行を開始する時は、妻がかけ声をかける。: すくみ足が現れ、一歩目が踏み出せないので、かけ声をかけてリズムをつくるのは効果的である。

バーキンソン病は中脳の黒質の細胞の変化によりドパミン産生が低下し、体をスムーズに動かせなくなる疾患である。安静時の振戦、筋固縮、無動、姿勢保持障害が主な症状で、徐々に進行する。ヤールの重症度分類Ⅲ度以上かつ生活機能障害度Ⅱ～Ⅲ度の者は難病医療費助成制度の対象となる。Aさんは重症度分類Ⅲ度で姿勢保持障害がみられるが、自力で何とか日常生活ができている。