4年ぶりの変更!第107回(2018年)看護師国家試験 出題基準|変更点~必修問題編~

第106回(2017年) 看護師国家試験は「難易度が高かったのではないか」という声が多数挙がったり、不適切問題が「8問」と過去10年で1番の多さだったりと、物議を醸しました。

 

そんな中、看護師国家試験の出題基準改訂が、4年ぶりに行われ、第107回(2018年)の看護師国家試験から適用されます。

 

第107回 看護師国家試験の出題基準

変更点~必修問題編~

 

必修問題では、おもに大項目(1)~(16)のうち、10項目で改訂が行われました。

おもな変更点を下記にてご確認ください(詳細は原典〈PDF〉をご覧ください)。

 

 

 

(1)健康の定義と理解

「健康の定義」が追加になりました。

 

2014年度の基準では、大項目が「健康に関する指標」であり、人口動態や健康状態を問うもののみの設問でした。

しかし、今回の変更(2018年度の基準)では、大項目が「健康の定義と理解」に変更され、「世界保健機関の定義」「ウェルネスの概念」が追加されました。

 

これまで、この項目ではおもに統計等のデータの暗記が求められましたが、今回の変更で、より抽象的・概念的な知識が追加で求められる可能性があります。

 

 

(2)健康に影響する要因

6つの項目と「ライフ・ワーク・バランス」が追加になります。

 

「排泄、活動と運動、レクリエーション、休息、清潔と衣生活、嗜好品」が追加となり、より具体的な生活習慣について疾病との関係などが問われる可能性があります。

 

また、過労死などが取り沙汰され、「働き方改革」が話題になる中、「労働」という項目名が「社会環境」へと変更となりました。

雇用形態や両立支援の項目は「ライフ・ワーク・バランス」に統合・変更されています。

 

 

(3)看護で活用する社会保障

「地域支援事業」が追加になります。

 

「地域支援事業」というテーマが追加となりました。

2025年問題を前に、厚生労働省を中心に「地域包括ケアシステムの構築」が推進されており、最近の介護環境の変化について問われることが予想されます。

 

また、項目名が「保健医療制度の基本」から「看護で活用する社会保障」に変更されています。

 

 

(4)看護における倫理

「倫理原則」の項目に、大幅な追加があります。

 

 

2014年の基準では「看護職の役割」「看護の倫理綱領」としてまとめられていたものそれぞれの詳細な内容が追加されました。

倫理原則として、「自律尊重、善行、公正・正義、誠実・忠実、無危害」、看護職の役割として「説明責任、倫理的配慮、権利擁護〈アボドカシー〉、エンパワメント」と明記されています。

 

一見難しいように思えますが、こうした倫理原則を知ることは、看護を行ううえで正しい判断や行為の筋道をたてるのに欠かせない内容です。 

 

 

(5)看護に関わる基本的法律

「業務従事者届出の義務」「臨床研修等を受ける努力義務」が追加となりました。

 

 

「保健師助産師看護師法」の項目では、保健師助産師看護師の「定義」「義務」が追加されました。

「保健師助産師看護師の業務」に関しては、以前にも含まれていましたが、今回は「定義」が追加され、業務を行ううえでの前提知識として問われる可能性があります。

 

また、「保健師助産師看護師の義務」としては、「守秘義務」に加え、「業務従事者届出の義務」「臨床研修等を受ける努力義務」が追加となりました。

 

「看護師等の人材確保の促進に関わる法律」では、「就業状況」が「ナースセンター」に変更となりました。

現在の看護師の働き方の改善、人材確保に向けた地域の看護協会の取り組みについて問われる可能性となります。

 

 

(7)人間のライフサイクル各期の特徴と生活

テーマが整理・統合されました。

 

 

【胎児期】・【老年期】では、それぞれ3つの項目が1つに統合されています。

また、【新生児・乳児期】では「先天性免疫と獲得免疫」の項目が削除となり、成長発達や親子関係などについて重きが置かれる可能性があります。

 

 

(9)主な看護活動の場と看護の機能

病院内だけでなく、「地域で行う看護」「地域へつなぐ看護」に焦点が当てられているようです。

 

 

「看護管理」と「関連職種との連携」が、「看護の機能と役割」に集約され、「退院調整、入院のオリエンテーション(入院相談)、地域医療連携、家族との調整」の項目が追加となりました。

 

「地域包括ケアシステム」推進の動きの中で、病院や施設内のみで行う看護ではなく、地域で行う看護・地域へつなぐ看護に焦点が当てられているようです。

 

なお、「学校・企業」の項目が追加になっています。看護師の“働く場所”の多様化が背景にあるように思われます。

 

 

(11)疾患と兆候

「臨床検査値の評価」が追加されました。

 

 

「血液学検査」「血液生化学検査」「免疫血清学検査」「尿検査」の臨床検査値の評価が追加となっています。

このことから、「症状」だけではなく、検査値からも疾患の兆候を判断する知識が求められる可能性があります。

 

また、「気分〈感情〉障害」が追加されたことにより、うつ病や双極性障害等について問われることになるでしょう。

 

 

(12)薬物の作用とその管理

4つの項目が追加になりました。

 

「抗血栓薬」「消化性潰瘍治療薬」「下剤」「抗アレルギー薬」が追加となり、作用と副作用について問われる可能性があります。

 

 

(16)診療に伴う看護技術

「輸血」が追加、「災害看護」が削除となりました。

 

 

2014年の基準では「輸液」のみでしたが、2018年の基準では今回の変更で「輸血」が追加となりました。

 

また、「災害看護」の項目は削除となりましたが、「救命救急処置」という項目内に「トリアージ」は含まれています。

 

***

次回は、一般・状況設定問題の各分野についてお伝えします。

【ライター:白石弓夏(看護師)】

 

 

【一般・状況設定問題編】

「精神機能」が追加!一般・状況設定問題編(1)|第107回(2018年)看護師国家試験出題基準変更点

 

(参考)

「保健師助産師看護師国家試験出題基準平成 30 年版」の改定概要について(厚生労働省)

看護師国家試験出題基準(平成26年版、厚生労働省)

看護師国家試験出題基準(平成30年版、厚生労働省)

 

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