ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【7-2】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本7巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

仕事に慣れない深原さんより、即戦力が欲しい。持田さんの本音を聞いた馬渕さんの反応は?(【7-1】はこちら

 

馬淵さんは「まだ結論出すのは早いよ。なんでそう見切っちゃうの?本人の意見も聞かずに」と持田さんを諭しました。持田さんは「…気に入られて手なずけてる人間は違うわー」と言いました。「よく彼女の言い分を聞くとわかることも多いよ。彼女…居場所が欲しいんだと思う。認められたいって理解してもらいたいって感じ伝わってこない?」と馬淵さんは持田さんに聞きました。

 

持田さんは「わかるけどそれが攻撃的なのよね…特に私に。いや私にだけ」と言うと、「それはサインだよ。一番わかってもらいたい人への」と馬淵さんが言いました。持田さんは「エー…たまったもんじゃないよ…なんで私なの?」と不思議がりましたが、持田さんは「…でもあんたが認めたら深原さんは満足して大きく変わる気がする」と真っすぐ持田さんを見つめて言いました。持田さんは(この頃の馬淵はぐんと大人びてきた)と思いました。

 

(友人を看取った時からかな。しっかり私に意見も言って…私以上にしっかり物事をとらえていることもある。周りの信頼も集めてるし…。でも距離を感じるな…師長交代の件も師長が治療中なのも言えてないし…言う機会を逸するとこうも言い出しにくいことなのか…)と持田さんは思いました。小紫さんにヘッドハントされたことも馬淵さんに言えていないことに気づき、小紫さんとの会話を思い出しました。「持田さんうちに来て一緒に働きませんか」

 

持田さんは小紫さんに誘われましたが即答で「あ、無理です。お宅の院長苦手なんで」と答えました。「それにそういう所で師長やってるならなおさら無理でしょ?意見合わないと思いますよ」と言いました。小紫さんは「じゃあもし私がここに勤めたいって言ったら雇ってくれますか?」と聞きました。持田さんは真面目な顔で「本気で来たいの?」と聞きました。

 

「本気なら考えるけど違うんでしょ?あたし今…忙しいんでからまないでください」と言いました。小紫さんは「…本気ですけど?」と言いましたが、「んなワケないでしょ?」「元々辞めたかったんで今の職場は…」と話しましたが、持田さんは(何か信用ならない人だなぁ…。何がしたいかつかめない…)と思い、「とりあえず今日はこの後用事があるので何かあれば連絡します。」とだけ言ってその場を後にしました。残された小紫さんは(どうせ連絡なんてしないつもりなんでしょ?)とお見通しでした。

 

1年前。「胃癌でしょ?じゃあ癌末でいいじゃん。この人訪問看護週に4日入ってくれる?」とAホームクリニックの院長が言いました。小紫さんは(またやってる…)と思いながら「…この方癌末ですか?」と聞きました。院長は「癌末でしょう?僕が診断したんだからいいんだよ…」と答えました。

 

「患者だってさー週に4日も入ってもらったら嬉しいじゃん!!看護師さんはとりあえずバイタルとオピオイドとかチェックして?楽でしょ?」と言い、小紫さんは「…まだこの方治療を希望しててADLも問題ないですけど…」と抵抗してみました。しかし院長は「在がんの患者さんは点数取れるからねー。こういう時に赤字を回収しないとねー。それに上限が合って患者はそこまで払わなくていいし、クリニックがつぶれたら患者が困るんだからこれってむしろ正しいんじゃない?なんでいつもグズグズこだわるの?真面目なんだねー」と言いました。小紫さんは(すごい…キラッキラした目でゲスイこと言う。今時の王子ってこんななのかも…)と思いました。「小紫ちゃんこそ!!高い給料もらえなくなるのは困るでしょ?」と院長が言いました。

 

ツイッターやインスタでイケメン院長として取り上げられるAホームクリニックの院長。「僕さーフォロワーいくついると思う?5万よ5万!!アイドルみたいって言われちゃったよ」と話す院長。彼は今自費出版の本を製作中だと言います。小紫さんは(人ってすごい。こういう人に騙されて本当に最期まで感謝して亡くなる人もいる。しなくてもいい訪問…治療…上げたらキリがない)と思いました。

 

癌末と診断された患者さんの訪問にて。ゼイゼイと苦しそうな患者さんに「息が苦しくて痰が止まらないのは点滴をしてるからですよ」と小紫さんが言いました。患者さんの家族は「…でも先生は命を延ばすためだって…」と言いましたが、「私は…ご家族から先生に相談してみることを勧めますよ」と言いました。(命が延びるといっても数日だ…そのために最期まで苦しい思いをさせるのが本当にいいこと?)と小紫さんは頭の中で考えました。「でもあの先生良い先生なんですよ。親身になって話を聞いてくれるし。いろいろ薬や注射もしてくれて…」と家族は院長のことを信頼しきっているようでした。小紫さんは(何も知らないって怖いな…)と思いながら「…そうですか」と答えました。

 

後日、「看取り予定のあの患者さぁ家族が点滴やめてって言ってきたんだよね。息苦しそうだからって」と院長が言いました。小紫さんは(言ったんだ…!!)と思いながら「そうなんですね…苦しそうでしたからね」と言いました。すると院長は「ヒドイと思わない?寿命を縮めろって言ってるのと同じじゃん。冷たい家族だよね」と言いました。

「命をなんだと思ってるんだろうね」と院長が言い、小紫さんは(すごい…マリアナ海溝よりも深い溝があっちとこっちの間にある…。どっちのことだよ…命うんぬんておまえが言うとは思わなかったよ…)と院長を軽蔑しました。(でもこの人にとってそれが重要なことなんだってことは理解できた。一日でも長く生かせることが正義なワケね…)とも思いました。

「そういや寿命を延ばして苦しむことになんの意味があるんですかってケンカ売ってきた看護師がいたなー」と院長が話し始めました。「あの看護師ヒドかったなー。独りよがりで偽善的でさー」「誰のことですか?」「知らない?8区のナースステーション。今は付き合いがないんで名前は忘れたんだけどさー。いらない治療するなとか非常識だよ医者でもないくせに。ただの看護師のクセにさー」と笑顔で院長が言い、小紫さんは(爽やかクズ)と思いました。

後日、他の看護師に聞くと、「あーあーその人は持田さんだわ」と教えてくれました。「知り合い?」と聞くと、「全然。でもよく研修のお知らせがくるから知ってる。先生とケンカしたのよね独居で認知症のおばあちゃんがいて、その人の終末期にウチとそのステーションが入ったんだけど、まぁ…いつもの感じでいろいろやってたわけ。仕方ないじゃない?もうさーお金残したって仕方ないし」「そう独居だから」と笑って話す看護師たちに(うわぁクズ)と小紫さんは思いました。

(ヤバいわこのクリニック…。いつかトラブルが起こる…いいところで辞めよう)と決めました。(金金金、そして名誉、自己顕示欲。人は騙される。その中にいて正気でいるのは難しい…あんなヤツに騙されるヤツいるのかと思ったけど結構いる…この世界ってなんてショボいの…)と帰り道に思う小紫さんなのでした。
※表現の都合上、マスクなどの描写を省略している部分があります。

【3】に続く

 

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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