ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【7-1】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本7巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

訪問看護ステーションの師長になることが決まった持田さん。新たに知り合ったナース・小紫さんから、ヘッドハントされ……

 

「私…持田さんとやっぱり一緒に働きたいです。Aホームに副所長として迎えますのでご検討いただけませんか?」と小紫さんが言いました。持田さんは(それって…まさかの…ヘッドハントですか?)と彼女を見て思いました。

 

表紙のイラスト

 

持田さんは小紫さんを見て、美人だなと思いましたが、よくみるとスキがなく会話も抜け目のなさを感じました。もちろん頭はいいだろうし、現場ではできるナースとして重宝されていると思いましたが、でも絶対的に安心できない何かを感じるのでした。

 

後日、持田さんは師長に「師長、何やってんですか。あの女私をスカウトしに来てますよ」と言いました。師長は「あらやだ。マジで?」と言い、「え?まさか行くの?Aホームクリニック」と聞きました。持田さんは、「行くわけないでしょ!?ケンカしたとこに。師長がここを頼むって言っておきながら…何やってんですか」と言いました。

 

師長は「でも一緒に回ったんでしょ?どうだった彼女」と小紫さんについて聞きました。持田さんは「できますね…。臨床推論を使ってちゃんと判断を導き出してます。でもそれって医者の領域でしょ?看護師がやるとミニドクターになっちゃいません?彼女はそっちに行きたいみたいでしたけど」と答えました。師長はそれを聞いて、「看護師がそれを言ったらおしまいじゃない?そもそも看護師の仕事って何?」と持田さんに問いました。「…何って、療養の支援、診療の補助…とかじゃないですか?」「例えば?」師長はしつこく聞きました。

 

「治療中の患者さんを支援することですよ」「介護士さんだってできるんじゃない?ヘルパーさんもそう。リハビリはPTさんOTさん。病気は医者。食事のことは栄養士さん。薬のことは薬剤師さん。本当は看護師なんていらないんじゃない?それか安い人件費でつかえる医者の手下?」と師長は看護師の在り方について話しました。

 

持田さんは「それらを統括して患者さんを中心に見据えた支援を行うのがナースだと思いますけど…」と答えましたが、「なんか抽象的じゃない?」と師長。「医療の視点を持って患者さんを支援する、じゃダメなんですか?」と聞くと、「ダメかどうか世間に聞いてみるといいわね。看護師の仕事って世の中の人はどういう仕事って見ていると思う?」と師長が言いました。「…病気をした時お世話になる人…かなぁ」と持田さんが言うと、「ま、これは宿題にしとくあんたの。私はね胡坐をかいちゃいけないと思うのよね」と師長が言いました。

 

「あぐら?」持田さんが聞くと、「看護師が領域にこだわっていたら成立しないと思うのよ、この仕事は。必要だと思ったらどんな領域にも飛び込んでいく!!あいまいで多岐に亘る立場だからこそプロフェッショナルを持たないと」と師長は言いました。持田さんは(師長の言っていること半分はわかる。この仕事は医師の指示書がないと始まらない。従属的な立場でもある)と思いました。

 

(昔は医師のご機嫌うかがいみたいなところもあった。最近になって看護師も対等に意見を言い合えるようになったのはひとえに学び技術をつけてきたからだ。でも…)と考えていると、「持田さん」と深原さんに声を掛けられました。「このステーション文献少なすぎません?もっと資料が欲しいですよ!」と言われましたが、持田さんは(お前は勉強を患者さんのためにやってないだろーが)と思いながら「…予算がない…からね…」と答えました。「どう?訪問は?幸代さんと回ってるけど…」と様子を伺うと、「あぁ…まあまあですね、彼女」と深原さんが言い、(いや判断できる立場にないから…)と持田さんは思いました。

 

持田さんはその後、幸代さんに「幸代さんどうですか?彼女」と深原さんについて聞いてみました。「あぁ…深原さんですね…。勉強はすごくされてます。私も教わること多いんですけど。なんせ…患者さんの前にいくと固まりますね。借りてきた猫のように…」と幸代さんが言いました。持田さんが「想像つくわー。どう?独り立ちできそう」と聞くと、「うーん。内服の確認くらいなら…」と言われました。持田さんは(だめだこりゃ)と思い、その日の夜、馬淵さんに「深原さんを辞めさせて…戦力となる人が欲しいんだけどなー」と相談しました。
※表現の都合上、マスクなどの描写を省略している部分があります。

【2】に続く

 

 

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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