ナースのチカラ~私たちにできること 訪問看護物語~【6-3】

ママナースもも子』でお馴染みの広田奈都美さんが描く、訪問看護師マンガ。

単行本6巻の発売を記念して、月刊誌『フォアミセス』より特別転載でお届けします!

訪問先での看取りの様子にショックを受ける深原さん。亡くなった母親のことを思い出して考えたことは……

 

前回のあらすじ

 

研修が終わり、馬淵さんと深原さんが話しています。「今日で最後ですね、お疲れさまでした。どうでしたか?訪問看護は。正直にお話しいただいて構いません」と馬淵さんが聞きました。「…訪問看護は私の固定観念を覆すものが多く、多様な場面に…」と深原さんが答え始めますが、(あれが許されるなら母だって許されていい。私だって…)と途中で考え込み黙ってしまいました。

 

(自ら命を絶ったようなもんだ)(子供がかわいそう)と過去に言われた言葉の数々を思い出し、(正しいことを言って私を苦しめた人達元気かな。今の私を見たらその人達なんて言うのかな。〝かわいそう〟〝心配〟〝気の毒〟)と今日の訪問先で見た光景、昔のことを考えた深原さんは黙ってしまいました。

 

(ヒバリが鳴いている。20分くらい無言の私を前に馬渕さんはずっと黙ってるけど退屈じゃないのかな…私なら耐えられない)と深原さんは思いました。黙り続ける自分に何も言わず一緒にじっとしている馬淵さんを見て、師長に言われた「これも看護よ」という言葉を思い出し、(あぁそうか…これも看護なんだ…傾聴ってやつか。私にできるかな…)とぼんやり考えるのでした。

 

シン…とした会議室。1人の看護師が「お疲れさ…」と入ってきましたが取り込み中のため出て行きました。その後も2人は黙ったまま時間が過ぎていきました。

 

(きっと私はこれからも嫌なことを言い続けると思う)と思いながら、やっと深原さんは口を開き、「すみません。考えがまとまりません…」とだけ言いました。馬淵さんも「…あぁそうなんだ」と気にしていない様子で言いました。

 

あるお休みの日、持田さんは師長と昔言ったラーメン屋が閉店したという張り紙を見ました。職場で師長にそのことを伝えると、「そうかーあのラーメン屋閉店したのね…残念…テイクアウトもしてなかったしね」と師長が悲しそうに言いました。「悲しいですね。コロナのせいですね」「ご主人高齢だったし…仕方ないわね…」「よく師長に連れていってもらいましたね…たくさん愚痴もきいてもらった…」と2人で昔のことを想いながら話しました。

 

「そうだったねぇ…あのラーメンもう食べれないんだ…」と師長言いました。持田さんは何かを考えましたが、「師長。私 所長やるんで安心して引退してください」と言いました。師長は「あら良かった嬉しい。決断したのね」と言い、持田さんが「師長は絶対ひかないだろうし」と半ばあきらめたような表情で言いました。

 

「よくわかってるじゃない」という師長の言葉に「本当はもう少し師長にいろいろ教えてもらいたかったんですが…ご隠居としてご意見番になってもらうのがいいかと…」とため息をつきながら言いました。「誰が隠居だって!?」と師長がツッコみました。場面は変わり、病棟に。「師長」と増田さんが声を掛けました。師長は「はいっ!?」とびっくりしました。「焼き芋好きでしたよね。これどうぞ」と言い、「…あ、ありがとう…」と師長は言いました。

 

夜、持田さんと増田さんが電話で話しています。「つまりそれで師長にお詫びした……と…」と今日あったことを聞き、持田さんが言いました。増田さんが「後輩が笑うのよね。何がおかしいのかサッパリわからない」と言いました。「…フーン……まあ一生わかんなくていいよ…」「何その言い方。あなたまた飲んでるな」「今日は彼女が辞めたので気分いいんだ」「辞めた?」「正確には〝研修が終わった〟…かな」と2人が話しています。

 

深原さんの研修が終わったことを増田さんに伝えると「…また来るわね絶対に」と言われました。「いや…来ないでしょ…私のこと見限ってるみたいだったし…」と話しながら、持田さんは(所長になる話…言い出せないな…「あんたに
できるの!?」なんて今言われたらポキッとなりそう…経営管理に人事…運営…交渉事もやらなきゃならない…自信なんてないよ)と思いました。電話が終わった後、お酒の空き缶を見ながら「酒も飲むの…控えなきゃ…」と独り言を言いました。

 

次の日、「おはよー」と持田さんが元気よく職場の皆に挨拶しました。みんなは何だか驚いた様子。「…ん!?なんで皆ひいてるの?」と持田さんは不思議そうに言いました。深原さんのことで元気がなかった持田さんを見ていた他の人は(本当に深原さんのこと嫌だったんだ)と思いました。

 

持田さんは(皆にも所長交代のこといつ話そう。とりあえず馬渕には先に言っておくか…)と思い、「ねえ帰りに今日ちょっと話があるんだけど」と馬淵さんに声を掛けました。馬淵さんは「辞めんの?」と持田さんを睨みました。「なんで?」と持田さんが聞くと、「ナースがふっ切れた感じでいるとだいたいそれは辞める覚悟ができた時だわ」と言いました。「今 あんたが辞めたらここはどうなると思ってんの」という馬淵さんの話を「ちょっと待て…」と遮ろうとするとガチャンとドアが開きました。

 

そこには深原さんが。「おはようございます。師長さんいらっしゃいますか?」と驚く2人とは裏腹に笑顔でい言うのでした。
※表現の都合上、マスクなどの描写を省略している部分があります。

【おわり】

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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