おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~【7-2】

前回のお話

訪問看護師・持田は、自然で穏やかに母を看取りたいと願っていました。
認知症の母親に、介護についての希望を尋ねてみると…

 

前回のお話。これからの生活について、お母さん本人がどう思っているのか、まだわかっているうちに尋ねた持田さん。お母さんは「えっ?私そんなによくないの?」とショックを受けました。

 

 

「えっ?私そんなによくないの?」 持田さんのお母さんは自分のこれからの生活について持田さんに聞かれてショックを受けています。「そういうんじゃないわよ。お母さん、これは誰にでも聞くことなの。だって、いつどうなるかわからないでしょう?」ショックを受けるお母さんを持田さんはフォローしますが、お母さんはぐすぐすと泣きながら不安をこぼします。「私ったら…ボケちゃって…本当にこの頃情けないのよ。ボケ防止に編み物してるんだけどね…それが全然できなくて…」 はじめはカーディガンだったのがセーターになり、今ではわけが分からなくなっているとのこと。持田さんへのプレゼントだと聞くと、持田さんはマフラーにして、とリクエストをして、本題に戻りました。「ずっと決めてたんだけど…」と持田さんのお母さんは話し始めます。

 

「私は施設に入って、そこで死にたいわ」 お母さんの返事に持田さんは驚いて、思わず尋ねました。「……お母さん、遠慮してる?私たちに…」「ううん、そうじゃない。あなたから色々話も聞いてて大変そうと思ったのもあるけど」「私はね、働いているあなたが好きなの」戸惑う持田さんをまっすぐに見つめて、持田さんのお母さんは答えました。

 

持田さんのお母さんはさらに続けます。 「私が家にいることになったら、あなた仕事辞めちゃうでしょ?それは嫌なの」 あちこちに助けてもらうから辞めなくても大丈夫だと答える持田さんに、 「私はね、あなたを尊敬しているのよ。」 「あなたみたいな人が私をお世話してくれるって思ってるの。だから不安じゃない」と伝えます。 持田さんのお母さんは、真っ直ぐな瞳でこう続けます「あなたには私にかかりきりになるより、たくさんの人のお世話をしてもらいたい。大変な人を助けてあげてね。いっぱいいっぱいいると思うから。助けてあげてね。私の自慢なの、あなたが。」

 

お母さんとの話が終わると、翌日オンコールの持田さんは実家に泊まらずに帰ることにしました。自宅への帰り道、持田さんはお母さんとの会話を思い出しながら考えます。(親というのは、時々びっくりするくらい子供のことをわかっている時があって驚く。) 桜が咲いているのを眺めながら、小さい頃にお母さんをした会話を思い出します。 『純子ちゃん、将来何になりたいの?』

 

『私は看護師さん病気の人を助けてあげたいの。将来、お母さんのこともみてあげる』 小学生くらいの頃の持田さんがこう答えると、お母さんは『あら嬉しいわー』と笑いました。その後、看護学校を合格した時に一緒に喜んでくれたことや、夜勤のときに遠くからわざわざおはぎを持ってきてくれたこと、さっきの会話での「私ね、純子ちゃんが自慢なのよ」というお母さんの言葉を、持田さんは次々と思い出します。

 

ふと我に返った持田さんは、夜の冷え込みで患者さんが体調を崩していないか心配しながら、(私はずっと看護師でいよう。いられる限りはずっと)(そして、出会う患者さんを母だと思って接しよう。患者さんの家族は自分が同じ立場だったらどうするか考えて援助しよう)と決意しました。 (お母さんをお世話してくれる人も、そうでありますように)と願いながら―

 

「昨日から母さん食事とってないそうなんだ…」 仕事をしていると、お父さんからお母さんの具合があまり良くないことを伝える電話がかかってきました。「あれから体調崩してるみたいなの?」馬渕さんが心配して声をかけてきました。「そうね―。でも父は検査拒否しちゃってるし、どうなることやら…」と持田さんは返事をしました。そして、仕事帰りにお父さんと一緒にベッドに横たわるお母さんを訪ねながら、(日々衰えていく母を見ながら…父はどんな気持ちなんだろう…)と考えるのでした。

【3】に続く

 

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【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

 

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