看護師とパワハラ~ナスさんの場合~|マンガ・ぴんとこなーす【178】

パワハラはあってはならないこと。だけど、現実に起こってしまっていること。ナスさんが経験したのは…

タイトル:看護師とパワハラ~ナスさんの場合~

パワハラという言葉をよく聞くようになりました。ナスさんが昔務めていた職場でもパワハラ(当時はいじめと読んでいた)にあった経験があります。そのころナスさんは、はじめての転職を経験し300床ほどの慢性期の病院で働いていました。

そこは古い病院で、スタッフステーションの中には、いわゆる「派閥」があり、ヤナハラさん、ヤマシタさん、ミカミさんという3人が一大勢力でした。

そんなことを知らなかったナスさんは、休憩で座った席が派閥の山下さんの特等席で、「そこあたしの席なんですけど」と詰め寄られ、早速地雷を踏んでいた。

おそらくそんなことで目をつけられてしまったナスさんは、派閥の一人、ミカミさんに患者さんのことを質問しても無視は当たり前でした。

大量にある経管栄養を先輩の分も作っておくと、「自分のところは自分で作るんで結構です。」と捨てられることもありました。それ以外にも細かなことは本当にたくさんあって、それでも頑張っていたある日…。ナスさんは病棟長に呼び止められました。

「この日に誤薬があったみたいでね…。」と問い詰められ、ナスさんは、「その日の受け持ちは、ヤナハラさんですよね?はんこもあるし」と答えると、病棟長は、「でもさ、こんなことする人、他にいる?」とまるでナスさんがミスをしたかのように言い放ちました。病棟長が自分を疑っているのだ、と衝撃を受けたナスさんは、全身の力が抜けていくのを感じながら、「はい…そうですね。」と引き下がりながらも、涙は出ませんでした。

仕事ができないのは事実かもしれないが、そうだとしても病棟長の言葉はナスさんの心を打ち砕くには十分で、「途中からやってきたよそ者は信用できない」と言われているように感じました。ナスさんはそんなときでも、食欲がなくなるようなことはなく、涙ながらにやけ食いを繰り返しました。そして、お腹が満たされると『我慢するのはやめた。理不尽だと思ったらちゃんと言おう』と決めるのでした。

翌日、あいかわらずナスさんの申し送りは無視されてしまいます。もはや反応は期待していないナスさんは「◯◯さんにはプルゼ使った方がいいと思います。」と送りました。少し経って、「◯◯さん排便ないんだけど。」と言う同僚に、「プルゼ使ってくださいって言いましたよね。」と言い返すと、同僚はニヤニヤしながら一言、「はぁー?聞いてないんですけどぉ?」と言いました。

見かねたナスさんは、「恥ずかしくないんですか?」と言ってしまいました。「私のことが気に入らないのはわかるけど、そういう姿は新しい人も見てます。それに、やっぱり危険ですよ。返事くらいはしてもらわないと…。」と言い返すと、スタッフステーションは一気にシーンと静まり返ってしまいました。

しかし、同僚は悪びれることもなく、「新しい人って、ナスさんのことですか?」とあげ足をとってきます。「てかぁ、ナスさんに信用がないのが問題じゃないんです?みんなそう言ってますよー。」とさらにつけあがっていきます。

黙って聞いていたナスさんですが、ついに堪忍袋の緒が切れ、大きな声で「みんなって誰だ!あんたらのやってることが正しいってんなら、一人ひとりの名前を言ってみやがれ!!」と言ってやりました。

「こんな下らない中学生以下のいじめみたいな…」とまくしたてていた最中に、「どうしたのー?大きな声だして」と止めに入ったのは、病棟長でした。結局このことは病棟長の「みんな仲よくやりましょ」の一言で何の解決になりませんでした。「みんな」は要するに派閥の人たちのことで、仲良くするために、ナスさんが精神的な負担を我慢しなければいけないのは許せませんでした。さらに上の総婦長に相談しても「山下さんたちは長いから…」と取り合ってくれません。

ナスさんは一人になったとき、『あぁやってしまった。明日からどんな顔で病院にこよう』とぼんやり考えていると、同僚のモトミヤくんが声をかけてきました。モトミヤくんは病棟唯一の男性看護師で、持ち前の調子の良さからヤマシタさんたちの使いっパソリされていました。ハタから見ていると頼りないひとだなぁと思われていました。

ナスさんが派閥に対して、啖呵を切ったことに感動したモトミヤくんは、「ナッさん、すげえな。俺、決めたよ。あいつらムカつくから、この缶入りポテチをいつか食ってやろうと思ってたんだ!」とヤナハラさんの缶入りポテチを開けて食べ始めたのです。その光景はは、あまりにバカバカしくて、でもその程度のことなんだと思えた瞬間でした。

それからというもの、変わらず無視はされています。でも返事をするまで、離れなかったり、変わらず経管栄養を作ってあげたりと、ナスさん自身、気にすることはなくなっていきました。

なぜなら、ナスさんは、自分が正しいと思うことを行動と言葉に出すように下からです。派閥トリオの態度は変わらなかったけど、周りの様子は少しずつ変わった気がしました。そんな頃、中途入社で新しい看護師さんがきました。関西方面からきたハヤシさんという方で、さっぱりとものを言うので、すごく気が合い、仕事についてもいろいろ経験を教えてもらいました。

ある日の日勤、寝たきり患者さんのベッドで、派閥トリオが「ハヤシさんって生意気じゃね?循環器から慢性期とか何しにきたのって感じ。ぜってぇつぶすー。」と悪口をいっていることに気が付きました。ナスさんは、静かに近寄って、「あの、聞こえてますよ。」とあえて会話に入っていきました。

「ハヤシさんほどのキャリアの方をつぶしてしまうのですか?」と一声かけると、隣にいたハナシさんは、しばらく黙ってトリオを見つめると

「あんたら最低やん。何しに病院来てんの?患者さんのベッドサイドは悪口いうとことちゃうで。後で個人的に聞くから、やる気ないならそこどきやー。」と関西弁でトリオに一蹴するのでした。ハヤシさんの正論は強烈で、トリオはなにも言えず、その場を去っていきました。

病棟の雰囲気が変わっていく中で、詳しいことは知らないけど、派閥のリーダー格のヤマシタさんが病院を辞めました。モトミヤくんはあいかわらず調子こきですが、やたら喜んでいました。病棟長はやたら機嫌をとってくるようになりました。

ナスさんは5年ほど務めてその病院を去りました。ハヤシさんも、結婚して辞めました。あのときから10年以上経つけれど、いまでも2人の親交は続いています。職場によっては変化を嫌う風潮もあり、自分たちこそ正義という顔で後から来たひとを排除することがあります。その正義が自覚なくパワハラとなることもあるが、それは当たり前にはなってはいけない。ナスさんは、この経験のおかげでたいていのことが笑い飛ばせるようになったが、変えられないひとは辞めて別の所働くのもひとつの選択肢です。

「逃げる」ことは負けじゃない。最終的に自分が楽しくやれていればそれが「勝ち」だと思う。そう思えば過去のどんな経験も決して悪くないと思えるのでした。もし今、そのトリオに会うことがあったら、感謝の意をこめて「おかげ様で毎日ハッピーに働けてまーす。ざまぁみろ!」と言ってやろうと思っているナスさんなのでした。

 

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【著者プロフィール】

ぷろぺら(@puropera44

現役で病棟看護師やってます
ぴんとこなーすをどうぞよろしくお願いします!

Twitter[https://twitter.com/puropera44

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