別の要因|〈マンガ〉モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~【9】

「現実は理想のようにはいかない」そう思って話を切り上げようとしたところ…。

(▶これまでのお話

 

マンガ・モンスター患者~みんなが困り果てた金田さんのこと~

Vol.9 別の要因

うまい対処法をわかっているのなら、他のスタッフと共有すべきだったという持田さんに対し、『パートの私には、皆に物申す資格なんてない…思うことがあっても無難にやっていくのが1番だ。』と持田さんの理想と自分の現実にある差をに感じながら、「…私はフルタイムで勤務しているわけじゃないので、限界はあります…。ですが、できるかぎりやってみようと思います。」と持田さんに伝えました。伝えながらも内心、『このパターンは自分がやるパターンだ。反省の弁を口にして、とりあえず収束を図るやり方…。』と少し負い目を感じつつ、ごまかして飲みかけの冷えたコーヒーに手を付け、取材を切り上げようとしました。

 

すると、持田さんは「あなたは本当はわかっているんでしょう?」と静かに聞いてきました。意図もわからない予想外の質問に戸惑っていると、「金田さんがこの状況になったってこと、金田さんがこの病気になって得られたものという意味よ。」と質問に付け足しました。私は質問の意味を考えながら、「病気になったメリットってことですか?」と聞き返すと、「そうじゃなくて金田さんが病気になって光があたった部分ってことよ」と、持田さんはきっぱり言いました。

 

患者さんたちは、「病気になったから気づけたことがある」と口にすることが多い。そういう意味での光のあたった部分を指していることを理解した私は、「…金田さんは…多分、誰の言うことも聞かないから人に頼ることもしなかったろうし、だから病になって、体験されているのでは?と思うことがあります。」と答えました。すると持田さんも納得したように、「そうでしょ?どうすればいいかもわかっているのに、あなたはやろうとしない…でしょ…?」と言いました。ドキッとする私に、持田さんは続けて「私…今回あなたが金田さんのことを悩んでいるのには、別の要因があると思うの。」とこちらをまっすぐ見つめながら言いました。

 

「だって他のスタッフはここまで悩まず、自分には関係ないと放っとくんじゃないかなー?」「だからこれはあなたの問題なのよ。あなたは気づいているんじゃない?自分の問題に。」と言い切られ、私は何も言えず、固まることしかできませんでした。

 

私は持田さんを見つめながら、強く思いました。『この人からは逃げられない…。全てお見通しだ…』と。今までに出会った肩書きだけの偉い人とも違い、自論を展開して自分だけ気分がよくなる俗っぽさもない…こんな人初めてだ』と。

 

そして、持田さんにきっぱりといわれた「自分の問題…。」それに心当たりがあることも…実は分かっていました。


【著者プロフィール】

広田奈都美(ひろた・なつみ) HP

漫画家・看護師。某地方総合病院にて勤務後、漫画家としてデビュー。著書は「僕達のアンナ」(集英社)、「お兄ちゃんがコンプレックス」、「ママの味・芝田里枝の魔法のおかわりレシピ」(秋田書店)他。

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