転倒についてナースが思うこと|マンガ・ぴんとこなーす【49】

長編シリーズの第3回。
「この世から転倒がなくなればいい!」そんなナースの思いを語りました。

 

ナースの嫌いなもの三つ。褥瘡、体に入った管を抜かれる、そして転倒。

高齢者の方は尻もちをついただけでも、大腿骨頚部とか大転子部という辺りがぽっきりいってしまいます。ここは上半身と下半身を繋ぐとても大事な部分なので、ぽっきりいっちゃうと生活全般に影響を大きく及ぼします。治療が終わっても歩行器や車椅子が必要になってしまったり。最悪寝たきりになってしまったりすることも。

また、頭をぶつける形で倒れてしまうと、硬膜やクモ膜と呼ばれる部分が出血し、血液が溜まってしまうことがあります。脳が圧迫されると、認知面や動作等に異常が出ることもあります。

だからナースは患者さんが転倒してしまうと、その後の患者さんの人生を変えてしまったのではないかと言う罪悪感で、とても自分を責めます。転倒があると、ナースは事故報告書として事の顛末を報告書にあげます。転倒や事故のケースを集めることで今後の事故を防ぐのが目的ですが、「これで転倒減るか…?」と思っちゃう瞬間はあるにはある。

今まで普通に歩いていた人は、当然だけど受傷後も普通に歩こうとする。「動くときはナースコール押してってお話したじゃないですかー」といっても「トイレ行くくらい転ばないって」というけれど、そうやって言う人ほど転ぶんだよなぁ…

転倒のリスクがある患者さんは、高齢などの要因で下肢の筋肉低下がある方。精神疾患や認知症で現在の自分の状態を理解できない方。ナースコールが理解できない小児。アルコール離脱せん妄や術後せん妄などでナースコールを理解できない方。術後せん妄とは、手術の後麻酔などの影響で今時分のいる場所もわからない大混乱状態になっちゃうことです。

夜勤務中個室から叫び声が聞こえたのでナスさんが向うと、アイちゃんを押しのけて…

患者さんが飛び出してきました。

ナスさんは暴れる患者さんともみ合い、後ろ向きで抱きとめながら倒れてしまいました。

正気にもどったアイちゃんは「(患者さんは)大丈夫ですか!?」「(患者さんは)大丈夫!どこも打ってない」

帰ったら、ナスさんのお尻にでかいあざができていた。後日、ナスさんが患者さんにバックドロップかました…という噂になっていた。口頭指示は危険と改めて認識するナスさん。

転倒ってなくせないんですかねーと言うナスさんに、ヤマツジさんは「転ばない方法より、転んだときのことを考えたほうがいいわよ」というドライな答え

だからナースは物音に敏感。病棟で大きな音を立てると、冷たい目で見られることうけあい。

転倒しない人はこの世にいません。私達はせめて入院は安全に過ごしてもらいたくて力を尽くしますが、転んでしまう人はどうしても転んでしまいます。だから私達は転倒が嫌いです。転倒が嫌いなのであって転倒する人が嫌いなわけではないので、やり場のない怒りをつい自分に向けてしまいます。「世の中の床が全てゼリーかマシュマロになればいいのにぃ!」

転倒についてナースが思うこと(完)

 

 


【著者プロフィール】

ぷろぺら(@puropera44

現役で病棟看護師やってます
ぴんとこなーすをどうぞよろしくお願いします!

Twitter[https://twitter.com/puropera44

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