療養型病院で働く看護師の仕事は、慢性期の患者さんの長い療養生活を支えることです。落ち着いた雰囲気で「仕事が楽そう」と思う人もいるようですが、ADLが低下している患者さんのケア業務で力仕事が多い面も。
そんな療養型病院で働く看護師の仕事内容や役割などを解説します。
目次
療養型病院で働く看護師の仕事内容・役割
療養型病院とは、療養病床をメインとした病院です。急性期の治療を終えた慢性期の患者さんが、長期的な療養を目的として入院しています。
療養病床の患者さんの平均入院期間は4~5カ月ほどですが、1年以上の長期にわたる場合もあります。
看護師の配置基準は20:1で、急性期病棟よりも多くの患者さんを受け持ち、業務範囲も広い傾向にあります。
患者さんの長い療養生活を支える
療養型病院の看護師の仕事は、ひとことで言えば慢性期の患者さんの長い療養生活を支えることです。
患者さんは急性期の治療を終えて状態が安定しており、ADLが低く寝たきりの状態の方や認知症の方などです。言葉でのコミュニケーションが取れない患者さんにも、安心して療養生活を送ってもらえるように支える役割が看護師に期待されています。
療養型病院の看護師 主な業務内容
- バイタルサインの測定
- 清潔ケア(清拭・入浴介助など)、排泄介助
- 喀痰吸引、褥瘡処置など
- 採血・点滴・注射などの処置
- 食事の準備や食事介助、与薬
- 経管栄養のケア
- 医師の診療補助
療養型病院では、患者さんのおむつ交換や入浴介助、食事介助、シーツ交換などの日常的なケアが中心です。看護補助者(看護助手・介護士)とも協力しながら、たくさんの患者さんをケアします。
経口摂取が困難な患者さんや寝たきりの状態の患者さんも多いので、経管栄養や褥瘡の処置も多くなります。
また、言葉による意思疎通が難しい患者さんに対しても、顔色や動作などのささいな変化を見逃さないように観察し、患者さんの状態に合わせた看護をする能力が求められます。
急変時の対応が必要になるときもありますが、急性期病院に比べると頻度は高くありません。
療養病床は、患者さんの医療の必要度に応じて、医療保険でまかなわれる「医療療養病床」と、介護保険でまかなわれる「介護療養病床」に分かれています。
このうち「介護療養病床」は2023年度末に廃止される予定で、その受け皿として新設されたのが「介護医療院」です。
介護医療院は、医療と介護の両方を長期的に必要としている高齢者が入居する施設です。日常的な医療を提供する機能と、生活施設としての機能を兼ね備えています。
療養型病院の看護師の1日のスケジュール
療養型病院は状態が安定している患者さんが多く、急変などによる突発的な対応はあまりないので、残業は少ない傾向にあります。
ただし、看護師ひとりが受け持つ患者さんの人数が多いため、「業務量が多くて大変」と感じる人もいるようです。また、一般病棟と同様に夜勤もあります。
療養型病院で働く看護師の日勤のスケジュール例は以下の通り。
【8:30】始業・朝のミーティング・申し送り
患者さんの情報収集、朝のミーティングを行います。
病院によっては、担当の患者さんを割り振られる以外に、「おむつ交換担当」「清拭担当」など業務ごとに担当が割り振られる場合もあるようです。
【9:00】午前の病棟ラウンド
患者さんのバイタルサインの測定や環境整備などを行います。患者さんのささいな変化も見逃さないよう、注意深く観察します。
【10:00】体位変換・清潔ケア
患者さんの体位変換や、入浴できない患者さんの清拭や洗髪などを行います。看護助手とも連携しながら、スムーズに業務を進めます。
【11:30】昼食介助・配薬
誤嚥に注意しながら、食事介助を行います。昼食前後の与薬なども。
【12:30】休憩
【13:30】午後の病室ラウンド・患者さんのケア
午後のバイタルチェックを行い、患者さんの状態や処置の内容を記録しておきます。必要に応じておむつ交換や体位変換なども行います。
【14:30】カンファレンス
患者さんの看護計画を評価したり、今後必要な看護について話し合います。
【16:30】看護記録の記入・申し送り
夜勤担当者への引き継ぎを行います。
【17:30】終業
キャリアアドバイザー
日勤でも夜勤でも、業務内容は一般病棟とあまり変わりません。状態の安定した患者さんが多いので、夜勤でも病棟は比較的落ち着いた雰囲気です。ただ、おむつ介助や喀痰吸引などのケアが多いので忙しいという声もあります。
療養型病院の看護師の給料は?
療養型病院で働く看護師の給料相場は、年収380万~550万円程度です。准看護師だと1~2割ほど少なくなる傾向です。
療養型病院の中でも病棟勤務の場合は、夜勤手当がつくので高めの水準です。急性期などの一般病棟と変わりませんが、緊急入院や急変などによる突発的な残業が少なめなので、人によっては「残業手当が少なくなって収入減」と感じることもあるでしょう。
一方で、社会福祉法人が経営する療養型病院ではボーナスが高い傾向があり、結果的に年収全体も高めになることがあるようです。
療養型病院の看護師のメリット・デメリット
療養型病院で看護師が働く場合、ルーティンワークが多く落ち着いて働けると感じる人がいる半面、変化が少なくて物足りないという人もいるようです。療養型病院で働くメリット・デメリットをまとめました。
療養型病院の看護師として働くメリット3つ
1ルーティンワークで、残業も少ない
療養型病院は基本的にルーティンワークが中心で、急変などによる突発的な対応は発生しにくく、残業が少ない傾向にあります。入退院も少なく比較的時間に余裕をもって働けるため、プライベートを充実させやすいでしょう。
夜勤はありますが、その分、急性期病院から転職した場合でも大きく給料が下がる心配は少ないと言えます。
2医療行為が少なめ
療養型病院での仕事は、おむつ交換や食事介助といった日常的なケア業務が多く、急性期病院と比べて採血や点滴などの医療行為は少なめです。
そのため、医療行為や手技に自信のない人でも働きやすい環境と言えるでしょう。
出産や育児でしばらく現場を離れていた人がもう一度病棟で働きたいと考えた場合にも、療養型病院は働きやすいかもしれません。
3患者さんと長期的にかかわれる
療養型病院は入院期間が平均で約半年と長いため、患者さんと長期的にかかわることができます。急性期病院と違って、患者さんをじっくり看護できることに魅力を感じる人もいるようです。
ただし、患者さんは寝たきりの状態の方や意識のない方も多いため、言葉以外でのコミュニケーションスキルも磨いていく必要があります。
療養型病院の看護師として働くデメリット3つ
1医療的な処置スキルを磨く場が少ない
メリットでも解説しているとおり、療養型病院では主にルーティンワーク的なケア業務を行います。
そのため、高度な医療行為にかかわったり、新しい手技を身に付けたりする機会はほとんどありません。
高度な医療知識・技術を学びたい人や、スキルアップしたい人にとっては、少し物足りなく感じる可能性があります。
2力仕事が多い
療養型病院ではおむつ交換、ベッドや車椅子への移乗介助、トイレや入浴の介助などの日常的なケア業務の比重が大きい分、力仕事が多くなってしまいます。腰痛に悩まされる人もいるようです。
看護助手(介護士)と連携しながら仕事をしていても、やはり大変な部分はあるので、体力に自信のない人は気をつけたほうがよいかもしれません。
3ひと通りの業務経験が求められる
療養型病院で働く看護師は全体的に年齢層が高めで、転職してくる人もある程度、病棟を経験している人がほとんどです。
業務もおむつ交換や入浴介助などの基本的なケアが多く、改めて丁寧に教えてもらえる環境は少ないかもしれません。
療養型病院はこんな看護師におすすめ!
療養型病院での勤務に向いているのは、以下のようなタイプの看護師です。
- ケア業務が好き
- 患者さんに長期的にかかわりたい
- ルーティンワークが苦にならない
- 体力に自信がある
- 他職種とも連携できる協調性がある
- プライベート重視で、残業はしたくない
- 夜勤OK!
- 年収はできるだけ下げたくない
療養型病院の看護師は、ケア業務が好きな人や、患者さんに長期的にかかわりたい人に向いています。
ルーティンワーク的な側面の強い仕事ではありますが、その中にやりがいを見出せる人は、とくに療養型病院向きと言えるでしょう。力仕事も多いので体力に自信のある人も歓迎されます。
また、たくさんの患者さんの生活をサポートするためには、看護助手などの他職種ともしっかり協力する必要があるので、協調性のある人にもおすすめです。
条件面で言えば、残業がほとんどない職場が多く、プライベートを大切にしたい人にとっても働きやすい傾向にあります。
夜勤がある病院がほとんどなので、できるだけ年収を下げたくない人にもよいでしょう。「介護施設で働いてみたいけど、給料も下げたくないし…」という人は、療養型病院を検討してみるのもよいかもしれません。