退職・転職に際して、さまざまな手続きが必要になります。書類が多くて混乱してしまわないよう、しっかり整理しておきましょう。
目次
退職時に返却するもの・受け取るもの
今の職場を退職するにあたって、さまざまな書類を返却したり受け取ったりする必要があります。
書類によってはハローワークや転職先に提出するものもあるので、それまで大切に保管しておきましょう。
退職時に返却するもの
健康保険被保険者証
健康保険被保険者証とは、医療機関を受診するのに必要な、いわゆる「保険証」。
退職する際は必ず返却しましょう。新しい保険証は転職先で受け取ることができます。
キャリアアドバイザー
離職期間がある場合、健康保険は「今の健康保険を任意継続する」「国民健康保険に切り替える」「家族の扶養に入る」のいずれかの手続きをする必要があります。
このうち任意継続をする場合でも、保険証は必ず一度返却しなければいけません。
通勤定期券
電車やバスで通勤しており、退職日までに定期券の残日数がある場合、払い戻しの上、そのお金を病院に返さなければいけないことがあります。
退職時における通勤定期券の取り扱いは施設によって異なりますので、上司などに確認しましょう。
職場で支給されたもの
白衣や名札(IDカード)、ロッカーの鍵など、職場で支給されたものは私物ではないので、退職する前に返却するのが基本です。
ただし、靴などものによってはその限りではないので、迷ったら上司に相談しましょう。
退職時に受け取るもの
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを証明する書類です。
雇用保険は離職と同時に一度抜けることになりますが、働き始めるタイミングで再度加入することになります。転職先が決まるまで大切に保管しておきましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、1年間(1月~12月)にもらった給料・ボーナスの総額などが書かれている書類で、雇用主(病院)が年末に所得税の計算・手続きをする際に使われます。
これを年末調整といいます。
転職した場合、年末調整をするのは現職(前職)ではなく転職先。そのため、転職する本人が源泉徴収票を現職(前職)から受け取り、転職先へ提出する必要があります。
一方、離職したのち年末までに再就職しなかった場合、所得税の計算・手続きを自分でしなくてはいけません。これを確定申告といいます。
いずれにせよ、大切な書類なので必要なタイミングまで自宅で保管しておきましょう。
年金手帳
年金手帳とは、年金にまつわる情報が記載された手帳で、公的年金制度の加入者全員に交付されます。
入職時に原本ではなくコピーを提出した場合、返却されるものはありません。
離職票
離職票とは、離職したことを証明する書類で、退職前の賃金や離職理由などの情報が記載されています。
主に離職期間があり、失業保険を申請する場合に必要になります。離職票は退職から2週間以内に、前の職場から郵送で送られてくることが多いでしょう。
2週間たっても離職票が届かない場合、前職の担当者に連絡してみましょう。それでも送ってもらえない場合、ハローワークに相談すると、代わりに催促してもらえます。
離職期間が【ない】場合の手続き
転職先が決まっており、離職期間がない場合、転職先の担当者が諸々の手続きを代行してくれます。入職早々に迷惑をかけないよう、指定された提出期限を必ず守りましょう。
転職先に提出するもの
看護師として働くためには、看護師免許の提出は必須です。
コピーで提出する場合が多いので、事前に準備しておきましょう。
看護師免許を発行してから氏名や本籍地の変更があった場合、あるいは紛失した場合は、更新・再発行の手続きをする必要があります。
手続きには時間がかかりますので、提出期限に間に合わない場合は事前に連絡しておきましょう。
雇用保険への再加入手続きをしてもらうために、退職時に受け取った雇用保険被保険者証を転職先に提出する必要があります。
紛失して手元にない場合、一部のハローワークで即日再発行手続きをすることができます。
退職時に受け取った源泉徴収票は、転職先に必ず提出しましょう。
源泉徴収票とは、年末の所得税の精算に必要な書類ですが、病院などの組織に雇用されて働いている場合、その手続きを代行してもらえます。
これを年末調整といいます。
常勤で働く場合、基本的には厚生年金保険に加入することになります。
その手続きをしてもらうために、年金手帳を忘れずに提出しましょう。
病院によってはコピーでも良いとする場合もあります。
給与振込先届出書とは、毎月の給与やボーナスなどの振込先を指定する書類です。
転職先から指定の記入用紙が渡されるので、特に指定がない場合、これまで使っていた銀行の支店名や口座番号などを記入します。
印鑑を押す場合、シャチハタでOK。口座開設時の銀行印である必要はありません。
扶養控除等申告書とは、扶養している家族の有無や人数を知らせるための書類で、所得控除を受けるための年末調整で必要になります。
たとえ扶養家族がいない場合でも提出が義務付けられているので、指定の記入用紙を受け取り次第、記入して提出しましょう。
健康保険被扶養者異動届とは、扶養家族の内訳や変更について知らせる書類で、扶養家族がいる場合は転職先への提出が必要です。
事前に健康診断を受けるよう指定されている場合、その診断書を提出しましょう。
こんな書類を提出するケースも
必ずではありませんが、転職先によっては下記のような書類の提出を求められる場合があります。
離職票は基本的に離職期間がある場合にハローワークに提出するものですが、転職先によっては提出を求められることもあります。
退職時に離職票を受け取っていなかった場合、前職の病院に連絡し発行を依頼しましょう。
退職証明書とは、前職を退職していることを証明する書類で、前職の病院に発行してもらいます。
すでに退職している場合、電話やメールなどで事情を説明し、発行を依頼しましょう。
身元保証書とは、入職する本人が社会人としてふさわしい人物であること、重大な過失により転職先に損害を与えた場合、その損害賠償責任を負うことなどを証明する書類で、父母など複数名の家族に署名・捺印をしてもらう必要があります。
損害賠償と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、ローン契約時の連帯保証人などとは違い、効力は弱く実際に損害賠償を請求されることもほとんどありません。
雇用契約書とは、労働条件通知書と同様に給与や勤務時間などの雇用条件について記載されている書類で、署名をすることでその内容に同意したものとみなされます。
事前に口頭で説明されていた内容と相違がないか確認の上、署名して提出しましょう。
住民票記載事項証明書とは、住民票にあるさまざまな記載事項のうち、希望する項目のみ記載して発行することのできる書類です。
転職先から提出を求められた場合、どの項目を記載してもらう必要があるのかよく確認しておきましょう。
離職期間が【ある】場合の手続き
退職後の転職先が未定だったり、入職日までに離職期間が発生したりする場合、以下の手続きが必要になります。それぞれ期限が異なるので、迅速に対応しましょう。
失業保険の申請
転職先が決まっていないものの、就業意欲があって実際に就職活動をしている場合、雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)がもらえます。
ハローワークに離職票を持参して申請しましょう。もらえる金額や期間は、離職理由や年齢などによって異なります。
健康保険の切り替え
離職期間が少しでもできる場合、自分で健康保険の切り替え手続きをする必要があります。
切り替え方法としては、以下の3パターンが考えられます。
1今の健康保険を任意継続
加入期間が継続して2か月以上あれば、前職(現職)で加入している健康保険を継続することができます。
退職日の翌日から20日以内に手続きをしましょう。
原則これまでと同じ給付内容を受けることができますが、保険料は全額自己負担で2倍になります。
具体的な保険料は退職時の給料(標準報酬月額)によって決まり、この金額は任意継続できる最大2年の間、変わることはありません。
ただし、保険料には上限があり、退職時の標準報酬月額が30万円以上の場合、保険料は月額29,610円で頭打ちとなり、それ以上高くなることはありません(協会けんぽ・40歳未満・東京都在住の場合)。
※保険料について:全国健康保険協会『都道府県毎の保険料額表』
2国民健康保険への加入
各自治体が運営する国民健康保険に加入する方法もあります。
退職日の翌日から14日以内に手続きをしましょう。
国民健康保険の保険料は「前年の所得」を基に計算されます。
料率や金額は自治体によって異なりますので、ホームページや窓口で確認することをおすすめします。
国民健康保険には扶養の概念がないので、これまでの健康保険で扶養に入れていた家族がいる場合、その全員分の保険料も合わせて納めなければなりません。
ただし、2年目以降は離職理由や所得に応じて保険料が軽減・減免になる場合がありますので、あわせて相談してみましょう。
また、国民健康保険は任意継続に比べて加入期間の上限はないものの、給付内容が少なくなる場合があります。
※給付内容について:国民健康保険中央会『国民健康保険制度』
こうしたことから、国民健康保険は「独身」あるいは「前年の収入が少ない」場合、任意継続よりもお得な場合もあると言えるでしょう。
キャリアアドバイザー
任意継続か国民健康保険かで保険料を比べる場合、国民健康保険では2年目以降に軽減・減免された場合、トータルで任意継続よりも安く済む場合があります。試算する場合は2年間の保険料を計算しましょう。
3家族の扶養に入る
出産・育児、療養などで長期間の離職が見込まれる場合、配偶者や親の扶養に入ることもできます。家族が加入する健康保険で手続きが必要になるので、早めに相談しましょう。
扶養に入る場合、パート・アルバイトなどによる年収は130万円以下におさめる必要があります。
年金の切り替え
退職するまで保険料を支払っていた厚生年金は、企業などの組織に雇用されている人しか、加入することができません。
そのため離職期間がある場合は、年金の切り替え手続きをする必要があります。主な切り替え方法は以下の2パターンです。
1国民年金に加入する
配偶者の扶養に入る場合を除き、20歳以上の日本国民は皆、国民年金に加入しなくてはいけません(第1号被保険者)。
住んでいる地域の役所で、退職日の翌日から14日以内に手続きをしましょう。
給与に応じて保険料が増減する厚生年金と違い、国民年金の保険料は一律で月額16,540円です(2020年度)。
※まとめて前払いをするとやや割安になります。
月末日に退職した場合を除き「退職した月から」保険料が発生します。
年金は払った分だけもらえる金額も多くなるのが基本です。国民年金は厚生年金に比べて保険料が安い分、将来受け取る年金額も少なくなります。
キャリアアドバイザー
所得が少なく、保険料の納付が難しい場合は免除・納付猶予制度もあるので、事前に確認しておきましょう。
※国民年金の免除・納付猶予制度について:国民年金機構『国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度』
2配偶者の扶養に入る
厚生年金を納めている会社員・公務員の配偶者(第2号被保険者)がいる場合、その扶養に入ることもできます(第3号被保険者)。
この場合、配偶者の勤務先を通じて手続きをする必要があるので、早めに相談しましょう。
配偶者の扶養に入る場合、国民年金に加入するのと同様に、支払う保険料が減る(なくなる)ので、その分だけ将来受け取る年金額は少なくなります。
キャリアアドバイザー
国民年金は健康保険と違い、親など配偶者以外の家族の扶養に入ることはできません。よって独身の場合、必然的に国民年金に加入することになります。 |
住民税の支払い
住民税は「前年の1月1日~12月31日の所得」にかかる税金を、「毎年6月~翌年の5月」の期間で支払うもの。
雇用されている間は毎月の給料から天引きされますが(これを特別徴収といいます)、離職する場合でも「退職した月~次の5月分の住民税」を支払う必要があります。
納付の方法は自治体によって多少異なりますが、一般的には退職日のタイミングによって、以下のような流れになることが多いでしょう。
退職日が6/1~12/31の場合
退職日が6/1~12/31の場合、住民税は原則「普通徴収」に切り替え、自分で納付手続きをする必要があります。
現職の勤務先に普通徴収への切り替えを申請すると、自治体から住民税の納付書が送られてきます。
納付を分割で行うか一括で行うかを選び、期日までに支払います。
分割納付する場合、それぞれ6月末、10月末、4月末、1月末の全4回のタイミングで支払うことになります。支払う合計額は、一括納付の場合と変わりません。
一括納付する場合、希望すれば退職時の給料・退職金から天引きしてもらうこともできるので、現職の勤務先に相談してみましょう。
退職日が1/1~5/31の場合
退職日が1/1~5/31の場合、住民税は原則、退職時の給料・退職金から一括で天引きされます。
ただし、一括で支払う住民税が、退職時の給料・退職金の合計額よりも高い場合、「普通徴収」に切り替え、分割納付することもできるので、現職の勤務先に相談してみましょう。
キャリアアドバイザー
退職した月から5月までの住民税の納付が完了しても、6月からは再度支払いが始まります。住民税の支払いは「前年分」だからです。
退職した年の分は、翌年の6月から納付が始まります。
再就職した場合は給与天引き(特別徴収)されますが、6月以降も離職期間が続く場合、住民税は普通徴収で自分で納付する必要があります。
退職した年の給料・退職金の合計額が多いと、翌年の住民税は高額になるので、あらかじめ預金を確保しておく必要があります。
確定申告
年末までに再就職しなかった場合、確定申告をする必要があります。
国税庁の『確定申告書等作成コーナー』などを利用しましょう。
確定申告とは、年末に行われる所得税の精算作業。
1年の総所得などから支払うべき所得税を再計算し、足りない分を追加で納付したり、払いすぎた分が還付されたりする手続きのことです。
雇用されて働いている場合、この作業は勤務先が代行してくれますが(これを年末調整といいます)、年末までに再就職しなかった場合、自分で手続きしなければなりません。