清拭
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は清拭について解説します。
香取洋子
北里大学看護学部教授
新生児の清拭
近年は、新生児の低体温を予防するために出生直後に沐浴を行う施設は少なくなっている。
清拭の方法には、①全身清拭(蒸しタオル清拭、石けんや沐浴剤を用いた温湯清拭)と②部分清拭(頭髪、殿部など出生後の汚染が強い部分)があり、汚染の状況により方法を選択している。
山口ら1)は石けんを用いた清拭について、付着した石けんの60%を除去するためには3回以上の拭き取りが必要であると報告している。皮膚の薄さが大人の半分で、角質のバリア機能も未熟な新生児2)にとって、石けん清拭は拭き取りによる摩擦刺激も多くなる。
そのため、ここでは石けんを用いない蒸しタオル清拭を中心に説明する。
角質のバリア機能
近年、子どものスキンケアの重要性が取り上げられている。とくに秋生まれの子どものほうが生後早期に低温、低湿度環境にさらされるため、春生まれの子どもよりもバリア機能が低下しやすいという報告がある3)。
目的・意義
①皮膚を清潔にし、感染を予防する。
②血液循環を促進し、新陳代謝を促す。
③全身観察の機会とし、異常を早期に発見する。
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清拭の実際
1観察項目
出生時:在胎週数、出生体重、アプガースコア、母体感染症の有無。
生後1日以降:バイタルサイン、体重減少率、黄疸の進行度、活気、哺乳力、皮膚所見。
清拭の禁忌事項
「沐浴」を参照。
2環境調整
室温:24~26℃
湿度:50~60%
環境:風が入らないようドアなどを閉める。
3必要物品(図1)
タオル3枚、小ボールまたは洗面器、清拭用ガーゼハンカチ(顔用)1枚、バスタオル1枚、着替え(長着、短着、おむつカバー、布おむつ)、おしり拭きあるいは拭き綿、臍ケア用品(消毒液、綿棒、臍粉)、綿棒(鼻・耳清拭用)、くしまたはブラシ
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4手順(蒸しタオル清拭)
顔面(沐浴と同じ手順)
1着衣のまま、ガーゼを用いて目を拭く。眼脂がみられる際には涙腺の感染予防のため、目尻から目頭に向って、片方ずつガーゼの面を変えながら拭く。
2左手で軽く児の顔を固定しながら、右手で額、頬、口周囲をS字状と逆S字状(または数字の3と逆3)を描くように拭く(図2)。鼻と耳介の周囲も拭く(図3)。
顔面清拭の方法
涙は、上眼瞼外側の涙腺でつくられ目に入った細菌からの感染を防ぐ作用がある。目頭に付着した目脂を、目尻に向って拭くことは汚れを広げることになる。したがって、感染予防のため目尻から目頭へ向かって片方ずつ拭く。
頭部
1ウォッシュクロス(図4)で円を描くように頭を拭く(図5)。
2拭き終わったら下に敷いてあるバスタオルで水分を拭き取る。血液などで汚れがひどい場合は、児の保温・安静のためにおくるみをして、頭部のみの洗髪を行う(図6)。
上肢・躯幹
1衣類を脱がした後、拭くところ以外はバスタオルでくるむ(図7)。
2身体の上から下、末梢から中心に向かって拭いていく。頸部→上肢→胸部・腹部の順に拭く(図8、図9、図10)。
外陰部・肛門
おしり拭きを使って女児は陰唇を開き、前から後ろに拭く。男児は陰茎の後ろ、睾丸のしわなどに入り込んだ汚れを拭く(図11)。
身体の半分をおおうおむつをはずしたほうが下肢・背部が拭きやすいため本稿では先に行うが、清潔の観点からは外陰部や肛門の清拭は最後に行うことが望ましい。
殿部浴
胎脂には皮膚を保湿する効果があるため、無理にとらない。おむつかぶれは、拭くときに生じる摩擦によってバリア機能が低下している皮膚にかえって刺激を加え、悪化することもあるため殿部浴を取り入れるとよい。
下肢
膝や足首などの関節を支えながら、下肢を拭く(図12)。
背部
1沐浴時と同様に、左手で児の頸部を支え、右手の母指を肩の上に、ほかの4指を腋窩に入れて肩をつかむ。
2そして右前腕部に児の胸部が乗るようにゆっくりと児を傾けてそのままうつぶせにする(図13、図14)。このとき、呼吸がしやすいように児の顔が横に向くようにする。
3後頸部、背部を拭く。
4再び左手で児の後頸部を支え、胸の下に右手を入れてゆっくりもとの体勢に戻す。
着衣・臍ケア・鼻耳の清拭
1保湿ケアを行った後に、バスタオルを取り除き、準備してあった衣類を胸元は締めずに軽く合わせ、おむつも軽くあてておく(図15)。
2最後に臍ケアを行い、児の衣類や髪を整え(図16、図17)、小綿棒で鼻腔・耳孔を清拭する。
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引用・参考文献
1)山口瑞穂子:清拭における石けんの皮膚残留度の研究.順天堂医療短期大学紀要、(1):16、1990
2)山本一哉:小児の皮膚.新小児医学大系40A、p.11、中山書店、1993
3)繁田葉子:特集 子どものスキンケア—季節と子どもの皮膚.小児看護、29(10):1332~1336、2006
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版