ウイルス性肺炎: インフルエンザ

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はインフルエンザについて解説します。

 

 

平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師

 

 

インフルエンザとは?

インフルエンザは毎年冬から春先にかけて流行する感染症で、合併症としてインフルエンザ脳症インフルエンザ肺炎があります。

 

インフルエンザ肺炎はインフルエンザウイルスに感染することで、直接的に肺が傷害されて起こる場合と、気道粘膜が傷害されたのち細菌が感染することで起こる場合とがあります。

 

主な感染経路は飛沫感染接触感染です(表1)。

 

表1 インフルエンザの主なリスク因子と感染経路

インフルエンザの主なリスク因子と感染経路

 

65歳以上の高齢者では重篤化しやすく、インフルエンザワクチンは65歳以上では定期予防接種の対象となっています。

 

 

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患者さんはどんな状態?

発熱や頭痛、悪寒、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの症状に加えて、咳嗽や膿性痰を認めます。

 

 

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どんな検査をして診断する?

鼻腔・咽頭ぬぐい液による抗原迅速診断をします(図1)。

 

図1 抗原迅速診断

抗原迅速診断

★1 スタンダードプリコーション

 

他疾患との鑑別のために、A群β溶血性連鎖球菌の抗原迅速診断、肺炎球菌の尿中抗原検査や、血液検査、X線検査を行います(図2)。

 

図2 インフルエンザ診断の流れ

インフルエンザ診断の流れ

 

X線にて浸潤影やすりガラス陰影を認めます(図3)。

 

図3 インフルエンザ肺炎のX線、CT

インフルエンザ肺炎のX線、CT

 

 

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どんな治療を行う?

抗インフルエンザ薬を発症後48時間以内に服用することで、重症化予防に効果的とされています。

 

肺炎が進行し重症呼吸不全に陥った場合は、人工呼吸器管理が必要となります。

 

重症化した症例は細菌感染症を合併していることが多く、抗菌薬の投与も検討します。

 

 

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看護師は何に注意する?

インフルエンザ肺炎は重症呼吸不全へ移行し、人工呼吸器管理が必要となる場合があります。厳重な呼吸状態の観察・アセスメントが必要です。

 

インフルエンザは接触感染飛沫感染するため、患者さんへのケアの際にはスタンダードプリコーションを徹底し、特に排痰援助の際には分泌物の取り扱いに注意します。また、患者さんには飛沫感染予防のため咳エチケットの指導を行います(図4)。

 

図4 咳エチケット

咳エチケット

 

インフルエンザワクチンを接種することで、感染や重症化が予防できます。

 

memo:ワクチンの接種時期

ワクチンは接種してから効果が出るまで、約10日から2週間程度かかる。効果は約5か月間あるため、毎年1~3月の流行時期に合わせて、11月ごろからの接種を勧める。

 

 

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インフルエンザの看護の経過

インフルエンザの看護の経過は以下のとおりです(表2-1表2-2表2-3表2)。

 

表2-1 インフルエンザの看護の経過(発症から入院・診断)

インフルエンザの看護の経過(発症から入院・診断)

 

表2-2 インフルエンザの看護の経過(入院直後・急性期)

インフルエンザの看護の経過(入院直後・急性期)

 

表2-3 インフルエンザの看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

インフルエンザの看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)

 

表2 インフルエンザの看護の経過

※横にスクロールしてご覧ください。

インフルエンザの看護の経過

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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