禁煙治療
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は禁煙治療について解説します。
黒岩真由美
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師
わが国における喫煙の状況
令和元年(2019)国民健康・栄養調査によると、現在習慣的に喫煙している人の割合は16.7%で、男性27.1%、女性7.6%で、この10年間で減少しています(表1)。しかし、30~60歳代の男性の割合が高くなっています(図1)。
表1 現在習慣的に喫煙している者の割合の年次推移(20 歳以上)(平成21~令和元年)
図1 現在習慣的に喫煙している者の割合(20 歳以上、性・年齢階級別)
受動喫煙の割合は、飲食店が29.6%で最も多く、次いで路上、遊技場では27.1%となっています。
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喫煙によるリスク
タバコの煙には、5300種類以上の化学物質が含まれ、約250種類の有害物質の中には発がん性物質があります。
主に、ニコチン・タール・一酸化炭素(CO)の3種類の有害物質に大別されます(表2)。ニコチンには依存性があります。
これらの有害物質は、主流煙に比べ副流煙に多く含まれています(図2)。
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どんな治療?
禁煙治療では、医師と看護師は患者さんが禁煙を実行・継続できるように禁煙補助薬の処方やアドバイスをします。
やめられない喫煙の実態は、ニコチン依存症であることがわかっています。
2006年よりニコチン依存症に対する禁煙治療の保険適用が開始されました。
保険診療で禁煙治療を受けるためには表3の4つの条件をすべて満たす必要があります。
memo:ニコチン依存症に関するスクリーニングテスト
TDS(tobacco dependence screener)。「自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか?」「禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?」など10の質問に回答してもらい、「はい」を1点、「いいえ」を0点として評価する。「禁煙治療のための標準手順書」4)参照。
行動療法
喫煙者の行動変容のためには、行動科学的アプローチが必要です(表4)。
薬物療法
禁煙補助薬には、ニコチンを含まない飲み薬のバレニクリンとニコチンを含むニコチンパッチ・ニコチンガムがあります(表5)。
バレニクリン(図3)は医師の処方が必要ですが、ニコチンパッチとニコチンガムは薬局で購入が可能です。
標準的な禁煙プログラム(図4)と禁煙の効果(図5)は以下のとおりです。
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看護師は何に注意する?
禁煙できていることを賞讃し、今後も継続できるよう励まします(図6)。
禁煙によって得られる生活面や健康面の効果を確認します。
禁煙して生じた問題や、今後予想される問題点について話し合います(体重増加、抑うつ、お酒の席、家族や友人の喫煙者など)。
禁煙できていない場合、喫煙を責めないようにします。
禁煙できた期間と、喫煙再開のきっかけを確認します。
再チャレンジに向けて、小さな変化を見逃さず、小さな前進を認めます。
禁煙に再チャレンジするための傾向と対策を一緒に考えます。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社