気管支喘息
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は気管支喘息について解説します。
唐川達也
さいたま赤十字病院救急病棟A看護師
呼吸療法認定士
気管支喘息とは?
気道系疾患では、気道に慢性的な炎症が生じ、気道の防御機能低下や気道の過敏性の亢進が起こります。これにより、気道の狭窄による気流制限や、気道の閉塞をまねく病態となっています。
気道系疾患の一つである気管支喘息は、気道の慢性的な炎症により、気道狭窄や咳嗽などの臨床症状で特徴づけられる疾患です。
気管支喘息の主なリスク因子と感染経路は表1のとおりです。
慢性的な炎症により気道が常に狭くなっており、外的な刺激に過敏になっている状態(気道過敏性亢進)、また、治療不足により持続的に炎症が起こり、気管壁が厚くなってしまう状態(気道リモデリング)が特徴的です(図1)。
memo:アドヒアランス
「固守」「執着」という意味。医療現場では患者さんが治療方針の決定に賛同し、積極的に治療を受けることをいう。比較される用語として、「コンプライアンス」がある。コンプライアンスが一方的な指導関係であることに対し、アドヒアランスは、医療従事者と患者の相互理解を基にした関係である。
memo:コンプライアンス
コンプライアンスは、「従順」「服従」という意味で、医療現場では患者さんが医療従事者の指示通り治療を受けることをいう。
memo:気管支喘息発症における性差
気管支喘息の発症は、小児は男児、成人は女性にやや多い。
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患者さんはどんな状態?
主な症状として、咳嗽、喘鳴、呼吸困難、胸部絞扼感などの症状がみられます(図2)。
聴診では、ヒューヒュー・ゼーゼーといった笛音(wheezes)が特徴的で、呼気の延長もみられます。
急性増悪では気胸や縦隔気腫を併発することがあり、皮下気腫の有無の観察も大切となります。
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どんな検査をして診断する?
気管支喘息の診断は、患者さんの身体所見および臨床検査の結果から総合的に行われます(表2、図3)。
患者さんによって症状が大きく異なり、一般的な症状がないまま経過することもあります。また、COPDや心不全などの合併により診断が困難なこともあります。
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どんな治療を行う?
気管支喘息はアレルゲンの特定と、吸入ステロイド薬の長期管理が必要となります。
主には吸入薬による治療を行いますが、必要に応じて酸素投与や、点滴静注を行うことがあります。
重篤な場合は補助換気のもと、気管挿管・人工呼吸器管理を考慮します。
発作時と非発作時では治療が異なるため、症状の出現頻度を確認しておく必要があります。発作時治療薬をリリーバー、長期管理薬をコントローラーと呼んでいます(表3)。
表3 発作時治療薬(リリーバー)と長期管理薬(コントローラー)
長期管理時の治療ステップは1~4まで存在しており、症状の頻度や強度、夜間症状、FEV1%・%PEF値などから決定されています(表4)。
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看護師は何に注意する?
気道はガスの輸送路となっているため、閉塞により危機的な状況に陥る可能性があり、すみやかに閉塞を解除する必要があります。長期の薬剤治療が必要なため、服薬指導や症状コントロールなどセルフケア支援が重要となります。
視診・触診・聴診
呼吸数を観察し、酸素化を評価します。
チアノーゼ、末梢冷感、呼吸補助筋の使用、咳嗽、起座呼吸、呼吸困難感、皮下気腫の有無を観察します。
呼気時・吸気時に呼吸性喘鳴が聴取されるか確認します。
発作時の対応
喘息発作出現時は、急激な気道閉塞のリスクがあるため、迅速に対応することが重要です。また、他の疾患に類似した症状もみられるため、全身的な観察も大切です。
喘息発作出現時は呼吸困難感が強くパニックになったり、強い不安を抱いたりすることがあります。不安軽減に努め、できるだけ落ち着かせるようにします。
吸入の指導
正しく吸入できているか、吸入薬の使用前後の評価を行うことも、再発の防止につながります。
高齢者では吸気量が徐々に減少することが多く、正しく吸入できていない場合があります。慣れている人であったとしても、一度は実施状況を観察し、必要であれば指導や吸入補助具(スペーサー)を勧めてみましょう。
吸入後の含嗽は図4のとおり行います。
副作用の観察
NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)の使用でアスピリン喘息を発症する可能性があるため、使用時には十分な注意が必要となります。
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気管支喘息の看護の経過
気管支喘息の看護の経過は以下のとおりです(表5-1、表5-2、表5-3、表5)。
表5-3 気管支喘息の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社