糖尿病療養指導士になるには?認定試験の合格率、取得のメリットを解説

「看護師が取りたい資格図鑑」の「糖尿病療養指導士」の記事のMV

糖尿病患者さんのセルフケア能力を伸ばし、専門的な知識で療養の指導をしていくのが糖尿病療養指導士です。

 

この記事では、糖尿病療養指導士の資格の概要、資格取得までの流れ認定試験の内容と合格率資格取得のメリットなどをわかりやすく解説します。

 

 

糖尿病療養指導士の資格とは?

糖尿病療養指導士(CDE)は、日本糖尿病療養指導士認定機構が認定する民間資格です。

 

糖尿病患者さんに最適な療養とセルフケアの指導・支援を行う糖尿病療養指導士は、糖尿病治療の臨床で重要な役割をもつ専門職です。

 

糖尿病療養指導士の有資格者は、全国に18,012人います(2023年6月時点)。そのうち看護師・准看護師が約44%(7,921人)を占めています

 

糖尿病療養指導士は看護師に認知度が高く、人気がある資格と捉えていいでしょう。

 

 

日本糖尿病療養指導士(CDEJ)と地域糖尿病療養指導士(CDEL)の違い

糖尿病療養指導士には、2つの資格があります。「日本糖尿病療養指導士」と「地域糖尿病療養指導士」です。

 

略称で呼ばれることも多い資格ですが、混同しやすいので注意が必要です。

 

糖尿病療養指導士(CDE)の末尾に、日本(Japan)の”J"がついた「CDEJ」が日本糖尿病療養指導士、地域(Local)の”L"がついた「CDEL」が地域糖尿病療養指導士、と覚えるとわかりやすいでしょう。

 

日本糖尿病療養指導士(CDEJ)と地域糖尿病療養指導士(CDEL)の違いを表した図版。対象職種や略称、研修内容などに違いがある

 

日本糖尿病療養指導士は、冒頭で説明した通り、日本糖尿病療養指導士認定機構が認定する資格です。

 

全国共通の研修、試験によって認定されるため、資格認定者の糖尿病療養のレベルは高く、しかも一定に保たれています

 

地域糖尿病療養指導士の育成講習会で、講師を務めることもあります。

 

地域糖尿病療養指導士は、各地域で設立された認定団体が認定する資格です。

 

受験できる職種も、地域の糖尿病療養指導に関わる幅広い職種が対象となっています。地域糖尿病療養指導士は、医療機関を中心とした糖尿病療養のサポートを行います

 

※この記事では、日本糖尿病療養指導士について解説していきます。

 

 

看護師が糖尿病療養指導士の資格を取ると何ができる

看護師が糖尿病療養指導士の認定試験を受けるためには、糖尿病療養の実務経験を積んでいる必要があります。

 

そのため、資格取得のきっかけには「糖尿病についてもっと勉強したい」「糖尿病患者さんの生活支援をしたい」などがあります。

 

糖尿病療養指導士の資格を取ると、糖尿病患者さんの療養、生活指導についての高度な専門的知識と技術を身につけられます

 

患者さん1人ひとりの問題を理解し、適切な療養指導に当たることができるでしょう。

 

さらに糖尿病療養指導士は、糖尿病看護の経験が浅い看護師の模範となって、病院全体の糖尿病看護実践の向上に寄与することができます。

 

資格取得後に、自主学習して得た知識と技術を、病院内や地域の多職種と共有して、チーム医療の中心的な役割を担っていくことができます。

 

 

看護師が糖尿病療養指導士の資格を取るメリットは?

看護師が糖尿病療養指導士の資格を取得すると次のようなメリットがあります。

 

糖尿病療養指導士の資格を取るメリットを表した図版、1)糖尿病療養指導のエキスパートになれる、2)キャリアアップを目指せる

 

1糖尿病療養指導のエキスパートになれる

糖尿病療養指導士の資格を取ると、糖尿病の治療と療養について専門的で高度な知識が得られます

 

その知見を臨床で活かしていくことで、糖尿病療養指導のエキスパートになることができます。

 

患者さん1人ひとりへの的確な生活指導によってセルフケア能力をしっかり伸ばすことができるので、患者さんのQOL向上を実感しやすくなり、仕事のやりがいを感じることができます。

 

 

2キャリアアップを目指せる

糖尿病療養指導士の資格を持っていると、看護師としてキャリアアップを目指せることもメリットの1つです。

 

糖尿病療養指導士は、資格取得や更新の際に、糖尿病療養指導士として必要なレベルに達している必要があります。そのため、資格認定者は糖尿病の療養指導の専門職であるという評価を得られます。

 

院内はもちろんのこと、糖尿病療養指導士(日本糖尿病療養指導士)は全国共通なので、転職をする際にも高評価を得られるでしょう。

 

さらに、資格手当も見逃せません。

 

糖尿病療養指導士の資格を取得すると、毎月の給料に資格手当がつくことがあります。糖尿病療養指導士の資格手当は数千円から2万円程度です。

 

糖尿病療養指導のエキスパートになり、さらに資格手当もつくので、資格取得をお考えの人にとってはモチベーション向上につながるのではないでしょうか。

 

 

糖尿病療養指導士の資格を取る方法

この章では、糖尿病療養指導士の資格取得までの流れや受験資格、認定試験について解説します。

 

 

糖尿病療養指導士の資格取得までの流れ

糖尿病療養指導士の資格取得の流れは次のとおりです。

 

糖尿病療養指導士の資格取得までの流れを表した図版6月ごろから講習会が始まり、翌年5月末に認定証がもらえる

出典:日本糖尿病療養指導士認定機構『CDEJの資格を取るまでの流れ

 

 

糖尿病療養指導士の受験資格

糖尿病療養指導士を受験するには、次のいずれかの医療職資格を持っている必要があります。

 

  • 看護師
  • 管理栄養士
  • 薬剤師
  • 臨床検査技師
  • 理学療法士

 

この資格を持っている上で、次の1から3に当てはまる医療機関での実務経験等も必要です。

 

  1. 1医療施設で過去10年以内に2年以上継続して勤務し、糖尿病患者の療養指導業務に従事して、なおかつ通算1,000時間以上、糖尿病患者に直接療養指導を行っている
  2. 2①の糖尿病療養指導業務に従事した期間に、糖尿病療養指導の自験例が10例以上ある
  3. 3日本糖尿病療養指導士認定機構が開催する講習(eラーニング)を受講修了している

 

なお、上記の1と2は、次の条件をすべて満たす医療機関での経験でなければいけません。

 

  • 日本糖尿病学会専門医、もしくは日本糖尿病学会の会員で糖尿病の診察と療養指導に従事する常勤医師が受験者を指導している
  • 糖尿病患者の外来診療が行われている
  • 糖尿病患者の教育、食事指導が行われている

 

これらの要件認定の基準日は12月5日となっています。この日の時点で、すべての要件を満たしていなければいけないので注意してください。

 

 

糖尿病療養指導士の認定試験について

受験概要は次の通りです。

 

糖尿病療養指導士の認定試験の概要を表した図版

出典:一般社団法人日本糖尿病療養指導士認定機構『認定試験概要

 

CBT方式とは、パソコンを使用して受験する方式です。画面に問題が表示され、その答えをマウス等で選択して回答していきます。

 

合格基準は非公開となっています。

 

 

糖尿病療養指導士の資格の合格率、難易度

糖尿病療養指導士の認定試験の合格率は90%前後で推移しています。

 

合格率から見ると、試験の難易度は高くないと言ってもいいのではないでしょうか。

 

原則的に、試験内容は『糖尿病療養指導ガイドブック』から出題されます。ガイドブックでしっかり学ぶことが、糖尿病療養指導に必要な知識も得られ、なおかつ試験対策にもなります。

 

 

糖尿病療養指導士資格の更新

糖尿病療養指導士の資格は、5年ごとに認定更新が必要です。

 

糖尿病療養指導士の認定更新を3回すると、金色の認定バッヂが取得できます。金色の認定バッジは、ベテランの糖尿病療養指導士である証です。

 

「金の認定バッジを獲得する」という目標を持ち、糖尿病療養指導を突き詰めていくのもおすすめです。

 

 

あわせて考えたい資格「フットケア指導士」

フットケア指導士は、糖尿病患者さんの足病変など、足に起こるトラブルの予防とケアを行い、患者さんのQOLを高める役割を担っています。

 

フットケア指導士は国家資格ではなく、日本フットケア・足病医学会が認定する資格になります。

 

フットケア指導士の受験資格は、次の5つです。

 

  1. 1医師、看護師、准看護師などの資格を持っている
  2. 2看護師等として3年以上の実務経験がある
  3. 3フットケアの実務経験がある
  4. 4フットケア指導士認定セミナー(2年以内)を受講している
  5. 5日本フットケア・足病医学会の会員である

 

この5つの条件をすべて満たすことで受験資格を得られます。

 

試験は年に1回行われます。合格率は65%前後です。難易度が高すぎず、取得しやすい資格と言えるでしょう。

 

糖尿病療養指導士資格とあわせて取得することで、糖尿病療養のエキスパートを目指すことができます。

 

 

フットケアをする看護師のイラスト

 

まとめ

日本には糖尿病患者さんと予備軍があわせて2,000万人以上いると言われています。

 

今後もその人数は増えていくと予想されていて、糖尿病療養指導士は今後さらに必要不可欠な資格になっていきます。

 

一方、糖尿病治療もどんどん進化しています。新薬や新しい治療法、機器ができ、糖尿病看護のためにはそれらをしっかり把握しておく必要があります。

 

糖尿病療養指導士は、そのような専門的知識を常に学び、自己研鑽しながら、院内にとどまらず地域の多職種と連携して糖尿病療養の中心となっていくことが期待されています。

 

糖尿病療養を極めたいと思っている人は、糖尿病療養指導士の資格取得に挑戦してみてはどうでしょうか。

執筆:看護roo!編集部 中山智喜

 

 

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