オピオイド鎮痛薬|一覧表&簡易換算表でわかりやすく解説

病棟看護に必要な「オピオイド鎮痛薬」の基礎知識を、一覧表や簡易換算表をまじえて、わかりやすく解説します!

 

看護監修:林ゑり子(横浜市立大学大学院医学研究科 看護学専攻 がん看護専門看護師)

医学監修:森田達也(聖隷三方原病院 副院長・緩和支持治療科)

 

 

1 オピオイド鎮痛薬の一覧表

おもなオピオイド鎮痛薬は表1のとおりです。

 

表1おもなオピオイド鎮痛薬の一覧表

一般名 商品名 投与経路 特徴
モルヒネ MSコンチン®
モルペス®
経口(徐放性) 強オピオイド
呼吸困難に効果あり
おもな副作用は悪心・嘔吐、便秘、眠気
腎機能障害がある場合、使用しない方が望ましい
オプソ®
モルヒネ塩酸塩錠
経口(速放性)
アンペック®坐剤 直腸内
プレペノン®
アンペック®
モルヒネ塩酸塩注射液
皮下
静脈内
硬膜外
くも膜下
オキシコドン オキシコンチン®TR
オキシコドン徐放カプセル®
経口(徐放性) 強オピオイド
おもな副作用は悪心・嘔吐、便秘、眠気
腎機能障害がある場合、注意が必要
オキノーム®
オキシコドン内服液®
経口(速放性)
オキファスト®
オキシコドン注射液®
皮下
静脈内
ヒドロモルフォン ナルサス® 経口(徐放性) 強オピオイド
経口薬の場合、1日1回の服用で済む
おもな副作用は悪心・嘔吐、便秘、眠気
腎機能障害がある場合、注意が必要
ナルラピド® 経口(速放性)
ナルベイン® 皮下
静脈内
フェンタニル デュロテップ®MT 経皮(72時間) 強オピオイド
経口投与が困難な場合、貼付薬が使用できる
おもな副作用は悪心・嘔吐。便秘や眠気は比較的少ない
腎機能障害がある場合にも使用できる

ワンデュロ®
フェントス®
フェンタニルクエン酸塩1日用テープ

経皮(24時間)
アブストラル® 口腔粘膜(舌下錠)
イーフェン® 口腔粘膜(バッカル錠)
フェンタニル注射液 静脈内
硬膜外
くも膜下
トラマドール トラマール®OD 経口(速放性)

弱オピオイド
神経障害性疼痛に効果あり
おもな副作用は悪心・嘔吐、眠気。便秘は少ない
腎機能障害がある場合、注意が必要

医療用麻薬の指定薬ではないため使用しやすい

トラムセット® 経口(速放性)
ワントラム® 経口(除放性)

 

オピオイド鎮痛薬は、2018年に「WHO方式がん疼痛治療法」が改訂されて以降、患者さんの状態によっては診断時や治療中でも病期にかかわらず強オピオイドが使用されるようになっています。

 

オピオイド鎮痛薬の種類による違いで押さえておきたいポイントは、腎機能障害がある患者さんの場合、使用できるオピオイド鎮痛薬に制限があることです。

 

特にモルヒネを投与すると産生される有害な代謝物質(M6GおよびM3G)は、腎機能障害があると体内に蓄積されてしまい、せん妄や意識障害などをひき起こす可能性があります。

 

そのため、腎機能障害がある患者さんには、比較的安全に使用できるフェンタニルなどが使用されます。

 

 

2 オピオイド鎮痛薬の投与経路による違い

オピオイド鎮痛薬は経口投与が基本ですが、嚥下障害などで経口での服薬が困難な患者さんには、経皮投与、直腸内投与、皮下・静脈内投与などが選択されます。

 

投与経路別の特徴を覚えておきましょう(表2)。

 

表2オピオイド鎮痛薬の投与経路別の特徴

オピオイド鎮痛薬 投与経路別の特徴 経口/おもな選択理由:簡便で経済的で、容量の調節がしやすいため、基本的な投与経路。患者さん自身で積極的にセルフコントロールできる。注意点:嚥下に問題があると使用できない。 口腔粘膜(舌下錠、バッカル錠)/おもな選択理由:突出痛に対するレスキュー薬として使用。注意点:嚥下せずに口腔粘膜から吸収させる必要がある。口腔内を潤して使用する。 経皮(添付薬)/おもな選択理由:嚥下障害などで経口薬が服用できない。注意点:効果発現が遅く(添付後12~14時間後)、迅速な投与量の変更が難しい。 直腸内(坐薬)/おもな選択理由:嚥下障害などで経口薬が服用できない。注意点:患者自身で投与が困難なため、長期投与に向かない。 静脈内/おもな選択理由:他の経路では困難な大量投与が可能。皮下投与ができない場合などに選択される。注意点:他の投与経路に比べて侵襲度が高い。 皮下/おもな選択理由:血管に投与する静脈内投与よりは安全で、投与量の変更が迅速にできる。 硬膜外・くも膜下/おもな選択理由:全身投与と比べると、投与量や副作用が少ない。注意点:そう痒感が出やすい。実施できない施設もある。

 

 

3 オピオイド鎮痛薬の簡易換算表

オピオイド鎮痛薬は、副作用で増量が難しい場合や効果が十分に得られない場合などに、他のオピオイド鎮痛薬への変更が検討されます。

 

変更するときには、各オピオイド鎮痛薬の効果発現が同程度になる投与量を示した「簡易換算表」表3)が目安として使われます。

 

表3オピオイド鎮痛薬の簡易換算表

オピオイド鎮痛薬の簡易換算表 ※あくまで目安で、投与順や患者の状態などによって異なる

 

たとえば、経口投与で考えると、モルヒネの30mgを基準にした場合、トラマドールに換算すると5倍の150mg、ヒドロモルフォンに換算すると5分の1の6mgとなります。

 

換算した投与量はあくまで目安で、実際の投与量は患者さんの状態に合わせて調整されます。

 

担当患者さんのオピオイド鎮痛薬が変更になった場合、オピオイドの量が増えたのか減ったのかを把握しておきましょう。

 

 

4 オピオイド鎮痛薬使用患者さんの看護

オピオイド鎮痛薬を使用している患者さんの看護で大切なポイントは、疼痛マネジメントの支援です。

 

フェイススケール(図1)やNRS(図2)などの疼痛スケールを用いた疼痛評価や、疼痛の訴えの促しなど、患者さん自身が疼痛マネジメントを主体的に行えるようにサポートしましょう。

 

図1フェイススケール

疼痛の程度を表す人の顔の表情を患者さん自身に選んでもらって評価するスケール

 

フェイススケール

図2NRS(Numerical Rating Scale)

使用時には、患者さんに「全く痛くないときを0、これ以上耐えられないときの痛みを10にする」と定義づけてから、「今の痛み」や「レスキュー薬を使ったときの痛み」の程度についてどのくらいかを患者さん自身に選んでもらって評価するスケール

NRS(Numerical Rating Scale)

 

病院によっては、急激な痛みに対する早めのレスキュー薬を服用できるように、下記のような一定の条件を満たした患者さんに対し、オピオイド鎮痛薬の自己管理として、レスキュー薬1回分を自己管理できるようにしているところもあります。

 

A病院のレスキュー薬1回分の自己管理ルール

患者さんがレスキュー薬を定位置で管理し、看護師が使用済みの薬袋と新しいレスキュー薬と交換する
※患者さんがレスキュー薬の薬袋を破棄せずに行うため、看護師が使用を確認できる

以下の条件を満たした患者さんが対象
・意識レベルが清明
・医師が承諾した患者である
・看護師が入院中のルールを守れていると判断した患者である

レスキュー薬1回分を患者さんの自己管理で


***

 

患者さんが疼痛を我慢せず、適切な疼痛管理をするために、オピオイド鎮痛薬の基礎的な知識を身につけておきましょう。

 

執筆・編集:看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

参考文献

  • 1)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編.がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版.金原出版,2020,53ー81.
  • 2)医療用麻薬適正使用ガイダンス作成検討会委員.医療用麻薬適正使用ガイダンス.厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課.2017.

 

 

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