70万の眠れる看護力を引き出せるか!?ナースセンターへの届け出制度を創出

毎年5万人近い新人看護師が誕生する一方で、その半分にあたる2万4000人の看護師が退職しています。退職して新しい環境で働く人もいれば、結婚して家庭にはいったり、看護師の仕事をすっぱりやめて、資格を持ちながらも別の仕事をする人もいます。

 

潜在看護師70万人が人手不足の救世主?

70万の眠れる看護力を引き出せるか!?ナースセンターへの届け出制度を創出

 

このように、看護師としての資格を持ちながらも看護の仕事をしない人たちを“潜在看護師”と呼んでいます。厚生労働省によれば、潜在看護師の数は、なんと全国で70万人以上にものぼるそうです。

現在、看護職員として働く人の数が約150万人であることを考えると、実に半分の数が、資格を持ちながらもそれを活用していないということになります。

 

この70万の眠れる看護力をなんとか掘り起こすことができれば、看護の人手不足は大きく改善されるはずです。

そこで、潜在看護師の掘り起しをめざして、新たにできたのが「ナースセンターへの届け出制度」という制度です。

 

離職時にナースセンターへ届け出、継続した就職支援を

これは、看護師が離職する際に、住所や名前などの情報をナースセンターへ届け出ることをできるようにするものです。

あくまで“努力義務”ですので、届け出をするしないは自由ですが、届け出ることでライフサイクルを通じた就職支援を受けられるようにしていこうというのが、制度の狙いです。

 

潜在看護師の中には、「子育てが落ちついたからまた働きたいけど、ブランクがあるから不安」「看護師の仕事は好きだけど、子供がいるから夜勤はどうしてもムリ」など、さまざまな理由をもつ人がいます。

こうした人たちの実態を把握し、離職時も一定のつながりを保つことで、その時々の状況にあわせた情報提供やサポートを行っていこうというものです。

 

ナースセンターってなに? 看護師に知られていないのが最大の弱点

情報を一元管理することになる「ナースセンター」とは、看護協会が都道府県の委託を受けて運営しているもので、中央ナースセンターの下、全国47都道府県にそれぞれ設置されています。看護師専門の仕事紹介と同時に、研修活動も行っているのが特徴です。

 

じつはこのナースセンター、看護協会が運営するにもかかわらず、肝心のナースに対して知られていない、というのが最大の弱点なのです。

 

利用者数はハローワークの5分の1

看護師の転職はほとんどが民間の紹介会社やハローワークを通じて行われています。2009年に転職した11万5000人のうち、ハローワーク利用者が5万人なのに比べて、ナースセンター利用者は1万人にとどまっています。

 

いくら役立つシステムをつくっても、ナースセンターの存在そのものが知られていなければ意味がありません。そこで厚生労働省は、届け出制度の創出とあわせて、ナースセンター自体の普及活動をしていくようです。

 

根っこにあるのは看護師のワークライフバランス

届け出制度は、看護師の働く環境を少しでもよくしていこうとする、大きな流れの1つです。根っこには、看護師のワークライフバランス改善という、一番大切な問題があることは言うまでもありません。

 

一方で、制度がうまく機能して、働きたくても働けない看護師の就職をうまくサポートできるようになれば、今、医療現場で働いている看護師1人1人の負担が減ることにもつながります。10月にも始まる予定の届け出制度ですが、どのような詳細になるのか議論の行方が注目されます。

 

 

(参考資料)

日本看護協会の見解

厚生労働省社会保障審議会医療部会資料

 

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