【場面別】リーダー業務のコツ「こんなときどうする?」|はじめてでもわかる!看護師リーダー業務(2)
この連載では、不安でいっぱいのリーダー業務が「なんだかできそう!」に変わるポイント&業務のコツをお伝えします!
リーダー業務に慣れないうちは、
「こんなとき、リーダーは具体的にどんなふうに動けばいいんだろう…?」
と、悩むことも多いかもしれません。
今回は、新米リーダーが対応に困りやすい10の場面を取り上げて、具体的な動き方・声のかけ方など「リーダー業務のコツ」をお伝えします!
もくじ
- リーダー業務、困りやすい10の場面はココ!
- 「こんなとき、どうする?」場面別のコツをチェックしよう!
- 【場面①】リーダーの情報収集、全然終わらない! どうすればいいの
- 【場面②】受け持ち患者さんの割り振りって、何を基準に考えればいいの?
- 【場面③】他病棟・他職種とのスケジュール調整がうまくできない…!どうしたら?
- 【場面④】 医師に指示をもらうとき・指示内容を確認するとき、どう言えばいい?
- 【場面⑤】メンバーへの指示・依頼の伝え方がわからない。ミスなくコミュニケーションをとるには?
- 【場面⑥】メンバーの業務が進んでなさそう…?!どうやったらうまくサポートできるの?
- 【場面⑦】緊急入院などの割り込みタスクでパニック!どうやったら乗り切れる?!
- 【場面⑧】インシデントの対応、リーダーは何をしたらいいの?
- 【場面⑨】インシデントなどが起きた後の「メンバーのフォロー」はどうすればいい?
- 【場面⑩】申し送りって、何を伝えればいいかわからない!
- おわりに
リーダー業務、困りやすい10の場面はココ!
新米リーダーが困りやすいのは、次のような場面です。
それぞれの場面で、「わたしは今、リーダーとして、どんな役割を求められているのかな?」と意識してみるのが、リーダー業務をスムーズに進めるためのポイント。
リーダーとしての3つの役割のうち、「この場面ではどんな役割をすればいいか」がわかると、迷わず動けるようになっていくはずです。
それでは、この3つの役割を踏まえて、具体的なリーダー業務のコツを見ていきましょう!
- 3つの役割について詳しくは:【第1回】リーダー業務は「3つの役割」を押さえよう!
「こんなとき、どうする?」場面別のコツをチェックしよう!
場面① リーダーの情報収集、全然終わらない! どうすればいいの?
リーダーの情報収集は「要点を絞る」ことがポイントです。
「リーダーだから、患者さん全員分の情報をきっちり取らなくちゃ!」とつい思いがちですが、それではいくら時間があっても足りません。
まずは「優先度の高い患者さん」「優先度の高い情報」に絞って、効率的に情報を取りましょう!
病棟業務の「仕切り役」として、リーダーが優先して情報収集する患者さんは、
- 新規の入院患者
- 重症患者
です。
こうした患者さんは状態が悪化するリスクが高く、どのメンバーに受け持ちを割り振るか、急変時はどうするかなど、その日の病棟業務を仕切るうえでカギになる患者さんです。
優先すべき患者さんを絞ったら、次のような点に注目して情報収集を行いましょう。
疾患や治療の詳細は、すでに情報収集したことがあれば、更新された情報がないかを確認するのみでも大丈夫。
状態が安定して比較的リスクの低い患者さんの情報収集は、その後に目を通しておければOKです。
始業前に取った情報を「最新に更新するための情報収集」も忘れずに!
その日の検査や処置などがきちんと実施されているか・患者さんに変化がないかは、リーダーとしてチェックしておきたいところ。
自分から「〇〇はどうなってますか?」などと声をかけたり、受け持ちのメンバーから報告をもらったりして、情報をアップデートしていきましょう。
また、1~2時間おきくらいにラウンドをして、自分の目で病棟全体を確認するのもオススメです。
場面② 受け持ち患者さんの割り振りって、何を基準に考えればいいの?
受け持ちを考えるのも、病棟の「仕切り役」であるリーダーの業務です。
メンバーのときは何気なく見ていた受け持ち表も、いざ自分が考えるとなると、どうしたらいいか不安になるかもしれません。
受け持ち患者さんの割り振りを考えるとき、注目するポイントは次の3つ。
- 状態悪化や急変に注意が必要な患者さん
- ケアの必要量が多い患者さん
- メンバーのスキル
状態悪化や急変に注意が必要な患者さんとは、ハイリスクな基礎疾患がある・侵襲の高い治療を受けているなどの患者さんのこと。
このような患者さんを受け持つメンバーは、一定のスキルや経験、いざというときの対応力が求められます。
一方で、急変などのリスクがなくても、「せん妄や認知症の症状がある」「全介助」など、ケアの必要量が多い患者さんは、看護師の業務負荷が大きくなります。特定のメンバーに受け持ちが集中しないように、バランスを取らなくてはいけません。
「5年目の△△さんは、知識も技術もあるから、状態が安定しない患者さんを受け持ってもらいたいな。その分、他の受け持ち患者さんは、ケアの必要量が少ない人にしよう」
「新人の◯◯さんは、まだ急変対応が不安。状態が安定した患者さんを数人と、見守りが必要な患者さんを受け持ってもらおう」
…など、「状態悪化や急変に注意が必要な患者さん」「ケアの必要量が多い患者さん」を中心に、メンバーのスキルに合わせて考えてみると、スムーズに受け持ちを決めることができます。
いろいろ考えることが多くて大変そうですが、前日までの割り振りを参考にしたり、悩んだときはリーダー経験のある先輩や上司に相談したりして決めていきましょう。
- 「メンバーのスキル」について詳しくは:場面⑦ 緊急入院などの割り込みタスクでパニック!どうやったら乗り切れる?!
場面③ 他病棟・他職種とのスケジュール調整がうまくできない…!どうしたら?
リーダーは、他病棟・他職種の間をつなぐ「橋渡し役」として、転棟や手術・検査などのスケジュール調整を担当します。
ただ、お互いの都合や考えが合わず、「雰囲気に押されて無理なスケジュールを受けちゃった…」ということも。
スケジュール調整の場面では、どちらかの都合だけを優先するのではなく、一緒に落とし所をすり合わせる気持ちで相談するのがコツ。
まずは相手がどうしてその時間を指定しているのかを聞いてみた上で、自分の病棟の状況についても伝えましょう。
そのときは、
- 1相手の希望するスケジュールが難しい理由
- 2スケジュールをずらした場合の新しい提案
を伝えられると、相手も対応を検討しやすくなります。
たとえば、病棟間の転入出や手術・検査の移動…など、さまざまな場面で、次のような伝え方を参考にしてみてください。
「そのスケジュールで動いたときに、患者さんに負担や悪影響が及ばないか」
「病棟を離れるスタッフが多くなって、他の患者さんの対応に支障が出ないか」
など、業務上の都合だけでなく、病棟全体の患者さんに目を向けて考えるようにしましょう。
迷って即答できないときは、自分だけで対応せずに「一度確認するのでお待ちください」と伝えて、先輩や上司と相談して決められればOKです。
場面④ 医師に指示をもらうとき・指示内容を確認するとき、どう言えばいい?
リーダーは「橋渡し役」として、医師とやり取りをする場面が多く発生します。
「指示をもらいたいけど、緊張でうまく報告できず怒られてしまった…」ということや、「指示の内容について確認したいことがあるけど、どう聞いたらいいのかな」と悩むこともありますよね。
医師に指示をもらうときは、「データ&所見を伝える」のがコツ。
電話の向こうにいる医師は、スムーズな診断・指示をするために「患者さんの状態がイメージできるような具体的な情報」を知りたいと考えています。
漠然とした報告や、ダラダラと長い報告にならないためにも、「I-SBARC」という報告ツールを活用しましょう。
I : Identify「報告者、対象者の同定」
→報告者・対象者が誰なのか
S : Situation「状況、状態」
→今何が起きているか、患者さんの状態はどうか
B : Background「背景、経過」
→どんな経過でその状況になったのか、患者さんの既往歴や前兆はあったか
A : Assessment「評価」
→患者さんの状態に対してどのように考えているのか
R : Recommendation 「依頼、要請」
→応援要請や、医師の診察依頼をするか、何を求めているのか
C : Confirm「指示受け内容の口頭確認」
→医師の指示内容の口頭確認
また、指示に対して、その経緯や理由を確認したいときも、「どんな点を疑問に思っているのか」を具体的に伝えましょう。
確認をしないまま実施してしまうと、「本当は必要な薬剤が投与されていなかった」「医師との認識がズレていて、実施すべき検査が漏れていた」などのミスが起きることも。
少しでも疑問を抱いたときは、すぐに確認して、安全に指示を実施していきましょう。
医師に報告や確認をしようにも、「先生が忙しくて、タイミングが合わない…」ということも。
- ● 外来、手術など医師のスケジュールをコピーして手元に置いておく
- ● メンバーからの要望をまとめて、一度に聞けるように準備する
- ● どうしても連絡がとれないときは、別の医師に相談する(事後の報告と確認は必ずしましょう!)
などの対策をしておくと、徐々にタイミングを見計らえるようになります。
場面⑤ メンバーへの指示・依頼の伝え方がわからない。ミスなくコミュニケーションをとるには?
「橋渡し役」&「仕切り役」として、メンバーに指示を伝えたり、割り込みタスクの対応依頼をしたりするリーダー。
業務をスムーズに進めるためには、相手に伝わるコミュニケーションが大切です。
コミュニケーションのポイントは、次の3つ。
- 結論から伝える
- 口頭だけでやり取りをしない
- メンバーの状況にも配慮する
指示や依頼をするとき、理由や経緯から伝えようとすると「大事なことが何か」がわかりづらくなりがち。わかりやすく伝えるには、結論→理由の順番で話すことを意識してみましょう。
また、よくあるのが、「指示はしたけど、忙しさでメンバーが忘れてしまった」「やり取りはしたのに、リーダーとメンバーで、指示に対する認識がズレていた」というコミュニケーションエラー。
口頭だけのやり取りにせず、指示内容が書かれたカルテを印刷して手渡す、実施確認を忘れないようにお互いにメモをとるなどもオススメです。
指示や依頼をするときは、「相手が対応できる状況なのか」というところにも配慮が必要です。
特に新人や若手看護師は、余裕がない状況でもリーダーや先輩からの依頼を引き受けてしまい、気づいたらいっぱいいっぱいに…なんてことも。
一方的なコミュニケーションにならないように、「この時間で対応できそうですか?」「もし大変だったら調整するので相談してください」などの一言を添えて伝えられると、より良いでしょう。
「先輩に依頼したいけど、忙しそうだな…気まずいな…」ということもありますよね。
そんなときは、
「◯◯の患者さんなんですが、△△の処置が必要なので、◎◎さんにお願いできたらと思うのですが、いかがでしょうか?」
など、相談するような気持ちで先輩に話しかけてみると、依頼もスムーズにしやすくなります。
場面⑥ メンバーの業務が進んでなさそう…?!どうやったらうまくサポートできるの?
リーダーには「サポート役」&「仕切り役」として、メンバーが困っているときに手助けや業務調整をする役割もあります。
特に、若手メンバーは、なかなか予定通りに業務が進められないことも多いですよね。
業務が進んでいないメンバーがいたら、進捗状況を一緒に確認し、「優先度・行動計画を見直すことで立て直せそうか?」「他のメンバーに分担すべき業務があるのか?」などを相談・調整しましょう。
他のメンバーに分担しやすいのは、次のような業務です。
- 軽介助・短時間で済むケア
- 定時の内服・点滴・バイタルサイン測定などの対応
ただし、
- 状態悪化や急変に注意が必要な患者さん
- ケアの必要量が多い患者さん
- 手術・検査出しなどのイベントがある患者さん
などは、受け持ち看護師が自分で情報を把握しておきたい患者さんです。なるべく担当者が対応できるように調整するのが良いでしょう。
新人や若手看護師の場合、自分からSOSが出せないこともあります。
患者さんのモニターアラームが鳴り続けるときや、同じ患者さんから何度もナースコールがあるときは、メンバーが困っているサインかもしれません。
リーダーから、「困りごとがないか」「進んでいない業務がないか」など、こまめに声をかけるようにしましょう。
リーダーは"ピリピリオーラ"を出さないように注意しましょう。
忙しくて余裕がない…ということもあるかもしれませんが、ピリピリしている人には、どうしても話しかけにくくなるものです。
いつでも報連相がしやすいリーダーだと、メンバーとのコミュニケーションも増えて、円滑に業務が進みやすくなります。
場面⑦ 緊急入院などの割り込みタスクでパニック!どうやったら乗り切れる?!
緊急入院・急変などの割り込みタスクが起きたとき、リーダーには「仕切り役」として業務調整をする役割が求められます。
いざというときに慌てずに病棟を回していくためにも、勤務開始時の情報収集や、受け持ち患者さんの確認などのタイミングで、「緊急入院や急変があったらこうする」をざっくりとでも想定しておくのがコツ。
たとえば、
「2年目の〇〇さんは、今日は業務に少しゆとりがありそう。入院対応にも慣れてきたし、緊急入院がきたらお願いしよう」
「5号室の患者さんは、状態悪化のリスクが高くて急変の可能性がありそう。もし急変したら、7年目の先輩にフォローを依頼しよう」
などのように考えておきましょう。
また、リーダーの想定をメンバーに伝えておくのもオススメです。あらかじめ認識を合わせておくことで、実際に緊急入院や急変が起きたとき、スムーズに動くことができます。
とはいえ、はじめのうちは「誰にどんなスキルがあるのかわからない」「予測は立ててたけど、いまはメンバーが忙しそう…」ということも多くあるかもしれません。
割り込みタスクに備えるためにも、「何か困ってませんか?」「進んでいない業務はありませんか?」など、リーダーから積極的に声をかけましょう。
現在の病棟全体の業務がうまく回っているか、誰に緊急入院や急変などに対応してもらえそうかがわかるようになっていきます。
その都度、先輩や上司にも相談しながら、対応していきましょう。
緊急入院を受けなくちゃいけないけど、誰も手が空いてない…!というときもありますよね。
そんなときは、一つ一つの業務を分解してみましょう。
「患者さんを受け入れるための業務」や、「緊急入院をメインで対応する看護師の担当業務」を、書類の準備/薬剤の準備/患者さんの移送/コール対応…などに分けるイメージです。
1人だけでは無理でも、たくさんのメンバーで少しずつ負担してもらうことでピンチを乗り切れるでしょう!
- 「リーダーの情報収集」について詳しくは:場面① リーダーの情報収集、全然終わらない! どうすればいいの?
- 「受け持ち患者さんの割り振り」について詳しくは:場面② 受け持ち患者さんの割り振りって、何を基準に考えればいいの?
場面⑧ インシデントの対応、リーダーは何をしたらいいの?
インシデントが発生したとき、「リーダーは何をすればいいの…?」とフリーズしてしまいそうになりますが、まずとるべき行動は、仕切り役として「現場を確認する」こと。
忙しいと、ついメンバーに対応を任せたくなってしまいますが、当事者だけでは冷静さが保てません。大事な所見を見逃したり、医師や管理者への報告が遅くなったりすることも。
リーダー自身が「何が起きているのか」「患者さんはどんな状態か」を確認して、「患者さんの安全のために何が必要か」を判断するようにしましょう。
リーダー自身が外せない業務をしていて、どうしても現場に行けないときは、対応できるスキルがありそうなスタッフや管理者に報告し、対応を依頼しましょう。
また、インシデントやクレームを受けたメンバーの動揺が大きく、その後の対応ができない場合もあります。
リーダーは、現場の確認から報告までの対応が終わった後、メンバーが安心できるように声をかけたり、業務調整を行ったりするなど、フォローしましょう。
- 「メンバーのスキル」について詳しくは:場面⑦ 緊急入院などの割り込みタスクでパニック!どうやったら乗り切れる?!
- 「メンバーのフォロー」について詳しくは:場面⑨ インシデントなどが起きた後の「メンバーのフォロー」はどうすればいい?
場面⑨ インシデントなどが起きた後の「メンバーのフォロー」はどうすればいい?
リーダーは、「サポート役」としてメンバーのフォローをすることも、大切な業務です。
特に、急変・インシデント・クレームなどの後は、受け持ち看護師はショックで落ち込んでしまい、その後の業務に影響が出てしまう…なんてことも。
患者さんの対応が終わった後は、メンバーに声をかけて気持ちを聞いてみたり、必要であれば短時間の休憩をとってもらうなどのフォローをしましょう。
トラブルなどが起きた後は、リーダー自身も注意が散漫になったり、慌ててしまったりすることがあります。
気持ちが焦ってしまうときは、無理をせずに周囲の先輩や上司にSOSを出してくださいね。
場面⑩ 申し送りって、何を伝えればいいかわからない!
リーダーは、「特に注意が必要な患者さんの状況」「メンバーの業務の状況」を中心に、申し送りを行います。
日勤・夜勤を通して安全な看護ができるように、情報共有をするのも仕切り役として大切な業務。「申し送り」というだけで緊張してしまうかもしれませんが、慌てずに情報を整理しましょう。
具体的には、次のような伝え方をしてみるのが良いでしょう。
最近は、業務の効率化・時間短縮のため、カルテに記載されている内容は申し送りを省略する病院もあります。どんな方法・内容で申し送るか、病院ごとに違うので、マニュアルなどを確認してみましょう。
自分がメンバーや前の勤務帯のリーダーから申し送りを受けるときも、ただ聞くだけではなく、上記のような項目について聞き漏らしがないか確認することが大切です。
メモをとったり、メンバーにすぐに情報共有をしたりして、確実に申し送りを行っていきましょう。
おわりに
リーダーは、さまざまな場面で役割を果たさなくてはならず、「大変だな…」「プレッシャーを感じる…」と思ってしまうかもしれません。
でも、「病棟全体の業務をうまく進める」というリーダーの仕事は、メンバー全員に協力してもらって初めてできることです。
慣れないうちは、積極的にメンバーに頼ったり相談したりすることで、「リーダーとしてどう対応するか」をつかんでいきましょう!
獨協医科大学埼玉医療センター 看護副部長石井 恵利佳
救急看護認定看護師。
熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学前期博士課程修了。
獨協医科大学越谷病院(現埼玉医療センター)に入職し、日本看護協会看護研修学校(認定看護師教育課程専任教員)への出向を経て、2020年4月より現職。
看護roo!編集部 小園 知恵(看護師)
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