【例文付き】研究計画書の書き方~研究計画を立てよう!|看護研究「攻略」マニュアル(4)

「看護研究の担当になっちゃった!」という若手ナースのみなさんに向けて、看護研究の進め方や無理なくできるポイントを連載で解説していきます(連載一覧はこちら)。

タイトルイラスト

第4回は「研究計画書」の書き方です。

 

「研究計画書を書くなんて、めちゃくちゃ難しそう…」と感じるかもしれませんが、看護研究の計画書にはある程度、決まった「型」があります

 

研究計画書の例文・見本も紹介しながら、計画書を書くときのポイントを解説していきます。

 

研究計画書の例文・見本文書のイメージ画像

※見本は計画書の書き方の解説用として看護roo!編集部と監修者が作成した架空の研究計画書です。

 

【例文】書き方見本(word)ダウンロード

 

 

 

研究計画書を書こう

看護研究の6つのステップ表。今回は「③研究計画書を作成する」

研究テーマが決まり、文献検索・文献検討も終わったら、「研究計画書」を書いてみましょう。

 

研究計画書とは、「こんな疑問・テーマについて明らかにしたいので、こんな考え、こんな方法で研究を進めます」という説明書のようなものです。

 

いざ研究に取り組み始めると、目の前のことでいっぱいになって「次は何をすればいいんだっけ?」「もともと何を明らかにする研究なんだっけ?」と、研究の方法や目的を見失いがち。

 

いつでも振り返って確認できる研究計画書をまとめておくことで、いちいち手順を考え直したり、研究があらぬ方向に向かったりすることなく、スムーズに進められます。

 

研究計画書は、次の項目についてまとめるのが基本の型となります。

 

研究計画書の基本項目の図表。項目は1.タイトル、2.緒言・序論・はじめに①研究の背景②研究の意義③研究の目的、3.研究の方法①研究の対象②データ収集方法③分析方法、4.倫理的配慮、5.文献

 

この基本の型を踏まえた「書き方見本(例文)」はこちらです。

 

【例文】書き方見本(word)ダウンロード

 

書き方見本や、先輩たちが担当したときの計画書を見ながら、自分の研究内容を当てはめていきましょう。

 

病院によってはテンプレートが用意されている場合もあるので、指導担当者に必ず確認してください。

 

研究計画書は、院内の研究倫理審査委員会の審査を受けるときにも必要です。計画書を提出して「研究計画に倫理的な問題がない」と承認を得てから、実際の研究へと進みます。


 

研究計画書はこう書く!【書き方ポイント解説】

研究計画書各項目の書き方を解説する看護師のイラスト

さっそく、研究計画書の各項目について具体的な書き方のポイントを見ていきましょう。

 

ここでは、上の書き方見本を基に終末期のがん患者さんをケアする一般病棟の看護師は、どんなことにストレスを感じているのか」というテーマの研究計画書を例にします。

※例文は、計画書の書き方の解説用として看護roo!編集部と監修者が作成した架空のものです。

 

研究計画書を書き始めてみると「まだそこまで深く考えてなかった」という部分もあれこれ出てくるでしょう。特にデータの収集・分析方法などは初めて知る統計用語もあり、看護研究に慣れていない人には難しいものです。

 

だからこそ「まずは研究計画書を書きながら必要な項目を考え、計画を埋めていく」のが効率的! 初めからサラサラと書けなくても、少しずつ進めていきましょう。

 

 

タイトル

(タイトル・例文)

終末期がん看護に携わる一般病棟看護師のストレスを生み出す要因

 

「タイトル」には、何を調べる・研究するのかをシンプルに書きます

 

2回「研究テー」を考えるときに整理したキーワードを入れるように意識してみると良いでしょう。キーワードを使うことで、「どんな患者さん・看護師・問題について、どんなことを調べようとしているのか」が、自然とうまく盛り込まれるはずです。

 

例では「終末期」「がん看護」「看護師」「ストレス」などのキーワードでタイトルを作っています。

 

「ストレスについて」など幅の広いタイトルにしがちですが、もう一歩詳しく、「ストレスを生み出す要因について」などと研究内容が具体的にわかるタイトルがGoodです!

 

研究の背景

(研究の背景・例文)

さまざまな苦痛を抱える終末期がん患者の看護に対し、ストレスを覚える看護師は少なくない。終末期看護に携わるがん専門病院と一般病棟の看護師のストレスを比較した看田1、看山2の研究では、一般病棟の看護師のストレスが有意に高いと報告しているが、そのストレス要因については明らかにされていない。一般病棟で終末期がん看護を行う当院において、看護師のストレス要因を明らかにすることが必要であると考える。

 

※編注:このテーマの先行研究は実際には多数ありますが、計画書の書き方をわかりやすく解説するため、見本・例文では「先行研究で明らかにされていない」こととしています。

 

 

「研究の背景」には、なぜこの研究をしようと思ったかを書きます「研究の動機」と言う場合もあります。

 

  • 研究テーマは今の社会や看護の中でどんな状況にあるか
  • 先行研究ではどこまでわかっていて、何が明らかになっていないか(文献検討の結果)
  • 自分はなぜそのテーマ・問題が大事だと思うのか

 

などを2~3文でまとめてみましょう。

 

「社会の中でどんな状況にあるか」が難しい場合は、似たテーマの先行研究でどう書かれているかが参考になります

 

例では「終末期がん看護にストレスを感じる一般病棟の看護師が多いこと」「自分の病院・病棟でも同じような状況がありそうなこと」を書いています。

 

引用の先行研究には、文献のリスト番号を振りましょう

 

 

研究の意義

(研究の意義・例文)

一般病棟看護師が終末期がん看護に対してストレスを感じる要因を明らかにすることで、看護師のストレス軽減、ひいては患者ケアの質向上につながることが期待される。

 

「研究の意義」には、なぜこの研究をする必要があるのかを書きます

 

この研究をすると、どんな効果・良いことが期待されるかなどを1~2文でまとめましょう。

 

この看護研究で調べたことが日頃の看護や業務に役立ちそうな場面や、逆に、これがわからないと困りそうだなという場面を想像してみると書きやすいでしょう。

 

例では「終末期がん看護にかかわる看護師のストレスを減らせれば、患者さんのケアにも良い影響があること」などを書いています。

 

 

研究の目的

(研究の目的・例文)

本研究は、終末期がん看護に携わる当院一般病棟の看護師が感じるストレス要因を明らかにすることを目的とする。

 

「研究の目的」には、この研究で何を明らかにしたいのかを書きます

 

基本的には、ここまでに整理してきた研究のテーマや意義とほぼ同じなので、文章表現を少し整えれば大丈夫でしょう。

 

 

研究の方法

「研究の方法」には、どんな方法で調査し、集めたデータをどう分析するかを書きます

 

研究の方法は、研究の対象データの収集方法データの分析方法-の小項目に分けて整理します。

 

①研究の対象

(研究の対象・例文)

終末期がん患者の看護に携わった経験のある当院一般病棟の看護師を有意抽出法によって抽出する。

 

どんな人・規模を対象に調査を行うのかを書きます。

 

対象者の決め方には、対象条件に当てはまる全員に行う「全数調査」と、対象条件に当てはまる集団のうち一部の人を選び出す「標本調査」があります。

 

標本調査はさらに「有意抽出」「無作為抽出」などに分かれます。

研究対象者の種類に関する解説イラスト

 

有意抽出は「この人に聞けば情報がありそう」と思われる人などを意図的に選ぶ方法です。一方の無作為抽出は、対象条件に当てはまる集団からランダムに抽出する方法です。

 

上の例は、インタビューでできるだけ意味のある情報が取れるように有意抽出で対象者を選ぶことにしています。

 

 

②データの収集方法

(データの収集方法・例文)

該当看護師の中で同意の得られた者を対象とした、半構成的質問紙を用いた聞き取り調査。終末期がん看護に携わる中で①ストレスを感じたこと、②ストレスが軽減されたと感じたことを聞き取る。

 

研究対象に対して、どんな調査を行い、どんなデータを集めるのかを具体的に書きます

 

どんな調査をするかなどは「研究デザイン」とも言います。

 

研究デザインには、インタビューなどで調査する「質的研究」(扱うデータは主に「言葉」)と、アンケートなどでデータを集める「量的研究」(扱うデータは主に「数値」)の大きく2つの方法があります。

 

質的研究と量的研究のイメージイラスト

 

どちらの方法がいいかは研究テーマによって変わり、1つの研究で質的研究と量的研究の両方を実施する場合もあります。

 

上の例文は、質的研究(聞き取り調査、インタビュー)です。なお、見本では質的研究と量的研究のどちらも実施する場合の書き方を例示しています。参考にしてみてください。

 

「半構成的質問紙」とは、大まかな質問リストを記載した用紙のこと。一問一答形式ではなく、話の流れに応じて質問の項目や順番を柔軟に追加・変更できる方法で、質的研究でよく用いられます(半構造化面接)

 

計画書には、半構成的質問紙で尋ねる項目も記載します

 

 

③分析方法

(分析方法・例文)

聞き取った内容は逐語録に書き起こした上で関連する項目を抽出する。抽出した項目はひとつの意味内容ごとにコード化し、それぞれをカテゴリーに分類する。

 

集めたデータをどう分析するかを書きます

 

……が、看護研究に不慣れな人にとって、この項目はかなりの難関!

 

「逐語録」「コード化」「◯◯変数」「回帰分析」「尺度」などの統計用語も出てくるので、ひるんでしまうかもしれません。

 

ただ、研究テーマが決まっていれば、データの分析方法もある程度、決まってきます。また、看護研究に不慣れな若手ナースが取り組む場合、シンプルで基本的な分析方法が使われることが多く、種類も限られるでしょう

 

先輩たちの看護研究ではどんな分析方法を使っているか、第6回・第7回で解説する分析方法なども参考に考えてみましょう。

 

分析方法がわからないと、どうしてもざっくりした書き方になりがちです。

 

たとえば「回答データは各項目について単純集計を行い、看護師の属性別に傾向を分析する」などはアンケートを用いる看護研究でよくある、ちょっぴり残念な書き方

 

「傾向を分析する」と言っても、何と何のデータの関連を見るのか、何の度合いを測るのかなどがイマイチぼんやりしているので、ここを具体的に書けるとバッチリです。

 

大変ですが、計画書の段階でこのあたりまで書いておければ、実際に大量のデータが手元に集まったとき「え~と…どうしよう?」とならずに済みます。

 

 

倫理的配慮

(倫理的配慮・例文)

質問紙調査においては、研究の目的等、前述の事項を書面で説明した上で自由回答とし、質問紙への回答をもって同意を得たとみなす。また、質問紙は無記名とし、得られた内容は本研究発表以外には使用しないほか、個人が特定されるような情報が研究担当者以外に知られることないように厳重に管理する。

 

「倫理的配慮」には、研究対象者の個人情報・プライバシー保護などの倫理的な注意事項を書きます

 

  • 調査に参加することについて、どのように同意を取るか
  • 研究で得た個人情報はどのように管理するか

 

などを具体的に書くのがポイントです。

 

とはいえ、なかなか考え慣れない項目なので、見本の例文や似たテーマの先行研究、先輩の計画書などを参考にするのがオススメです。

 

 

文献

今回の例文では「研究の背景」で、次のように先行研究に触れています。

 

終末期看護に携わるがん専門病院と一般病棟の看護師のストレスを比較した看田1)、看山2)の研究では、一般病棟の看護師のストレスが有意に高いと報告しているが、…

このように、研究計画書を書く上で参考にした文献があれば、「文献」の欄で詳細な書誌情報をリストにして記載します

 

(文献・例文)

1) 看田研ニ.◯◯(論文タイトル).看護roo!学会誌,15(2),2020,30-39

2) 看山究子.◯◯(書籍タイトル).第2版,看護roo!出版,2021,p.125

 

文献の記載方法(バンクーバー方式)

【雑誌論文の場合】

著者.論文タイトル.掲載雑誌,巻数(号数),出版年,論文の始まりのページ-終わりのページ

 

【書籍の場合】

著者.(いる場合は編者.)書名.第◯版(初版のときは不要),出版社,出版年,総ページ数p.◯◯

文献の記載方法にはいくつかスタイルがあり、ここで紹介しているのは、本文中の該当箇所に番号を振る「バンクーバー方式」です(このほか、本文の該当箇所に著者名・発行年を挿入する「ハーバード方式」があります)。

 

病院によって書き方のルールが決まっている場合も多いので、指導担当者に確認しましょう。

 

 

研究計画書は「お手本」を活用しよう!

先行研究や先輩の計画書を参考に書き進めてみる看護師のイラスト

 

研究計画書は、書くべき項目や内容などの「型」がほとんど決まっているので、そんなに構える必要はありません。

 

とはいえ、独特の「看護研究っぽい言い回し」や初めて知る統計用語などもあって、「これって、どう書いたらいいの…?」と戸惑うことも多いでしょう。

 

そんなときは、文献検討で確認した論文や、先輩たちの研究計画書を参考にするのが一番です。

 

ただコピペするだけではNGですが、

 

「こんな言葉を使えばいいんだ!」

「この文章の単語を置き換えたら、私の看護研究の目的をピッタリ言えそう!」

「分析方法ってこういうことか!」

 

など、お手本になる書き方が見つかります

 

第5回では研究デザインとデータの収集方法について、もう少し詳しく見ていきましょう。インタビューやアンケートをするときのポイントや例文もお伝えします。

 

 

監修

東京有明医療大学看護学部教授前田 樹海(まえだ・じゅかい)

「看護研究が嫌いになる看護師」を救いたい! 看護研究の目的は「将来の看護の発展に役立てること」ではありますが、看護研究に取り組めば、現場の課題を深く考える力や客観的にとらえる力がきっと身につきます。みなさんができるだけ肩の力を抜いて看護研究に取り組めるお手伝いをしていきます。著書『この1冊でできる!はじめての看護研究』(ナツメ社)『臨床ナースから看護研究者まで 研究発表のプレゼンもっとよくなります!』(日本看護協会出版会)。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

(引用・参考文献)

1)前田樹海. この1冊でできる!はじめての看護研究. ナツメ社, 2015, p159

2)大口祐矢. 看護の現場ですぐに役立つ看護研究のポイント. 秀和システム, 2017, p121

3)柴山大賀. 看護研究のイロハを学ぼう!-看護研究の進め方. 循環器ナーシング, 2016年12月号, 48-54

4)井上知美ら. 看護研究における臨床看護師が抱える困難. 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要, 21, 2014, 23-35

5)宇宿文子ら.終末期がん看護ケアに対する一般病棟看護師の困難・ストレスに関する文献検討.熊本大学医学部保健学科紀要,6,2010,99-108

6)池田友美ら.急性期と終末期患者が混在する病棟で働く看護師のストレスについて.東京医科大学病院看護研究集録,29,2009,39-43

7)標本調査とは?(総務省統計局)

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