「3年後は訪問看護師」が約束された病棟ナースたち|病院ナースの訪問看護(4)

4年目に病棟から訪問看護ステーションに異動した二階堂さんの写真

 

訪問看護ステーションには、病院に併設していたり、同じ法人が運営していたりするタイプがありますよね。

 

在宅分野に力を入れたい、訪問看護ステーションをつくりたいと考える病院はこれから増えていく可能性があります。

 

そうなれば、看護師の異動は「病棟から病棟へ」だけでなく「病院から訪問看護へ」のパターンも増えるかも――

 

今回は「3~4年目に訪問看護師」というキャリアコースが選べる病院を取材しました。

 

 

病棟4年目、訪問看護ステーションに異動

軽乗用車で訪問先に向かう二階堂さんの写真

病棟4年目の秋に訪問看護ステーションに異動した二階堂さん

 

みさと南訪問看護ステーション(埼玉県三郷市)の二階堂祥加さんは5年目ナース。

 

同じ健和会(東京)が近隣で運営する、みさと健和会病院で約4年、外科病棟を経験した後、2018年秋に異動してきました。

 

利用者さんと笑顔で話している二階堂さんの写真

 

「病院で見ていた顔と自宅での顔が、もう全っ然、違うんですよ~!」

 

この日の訪問先に向かって車を運転しながら、ある利用者さんについてニコニコ話してくれました。

 

その利用者さんは、二階堂さんが病棟でも看ていた患者さん。

 

「入院中は『患者さんの顔』という感じだったんですけど、自宅に帰ってきたら、なんていうか…『その人の顔』、なんですよね。薬を飲みたくないとか、ご自分のこだわりもどんどん出てきて(笑)」

 

生活の場である在宅では、利用者さんが、治療の場の病院とは違う一面を見せることもしばしば。

 

二階堂さんは、そんな在宅の看護がものすごく楽しい!と、うれしそうに笑います。

 

 

「この子は、いずれ訪問看護に行くから」

東京と埼玉に3つの病院、8つの訪問看護ステーションなどを持つ健和会。

「将来は訪問看護師になりたい!」というナース向けに「地域看護コース」を設けています。

 

地域看護コースの説明イラスト。パターンAは1~2年目に病棟勤務、3年目以降に訪看ステーションに異動する。パターンB は1年目から訪看ステーションに配属され、クリニック・介護施設などでも研修しながら、3年目に訪問看護師として独り立ちする
※入職後、途中からコースに参加する選択も可能

 

二階堂さんはAのパターンで入職。

 

病棟では「この子は、いずれ訪問看護に行くのだから」と、訪看に行く前に病院で経験しておいたほうがいいことを積極的に学ばせてくれたそう。

 

「退院指導が必要な患者さんを意識的に多く持たせてくれたり、ストーマ外来で研修させてもらったり、訪看経験のある先輩が『これは勉強しておくといいよ』と介護保険のテキストをくださったりも!」

 

学生のころから訪問看護師を目指していたものの、新卒を採用するステーションが少ないことや、病棟も経験できる安心感から健和会を選んだという二階堂さん。

 

「最初に病棟で学べたことが今、生きているなと思います」

 

 

いつか病棟ナースに戻るのもいい

利用者宅から病院に電話する二階堂さんの写真

外来の処方薬について気になることを病院に確認。「健和病院の患者さんが多いので、ナース同士の連携が取りやすいです」

 

二階堂さんが病棟ナースから訪問看護師になって、もうすぐ1年。

 

病棟で担当していた患者さんを自宅で看取ったり、1人の患者さんの手術からICU、病棟、在宅までを同期のナースたちで連携して看たりという経験もしました。

 

ひとつの地域で病院と訪問看護の両方を経験して、今、「患者さんが真ん中にいて、みんなで看ている」と実感しています。

 

その一方で、「いつか病棟に戻るのもいい」とも思っているそう。

 

「同じ法人で、病院も在宅も身近だからか、『どっちもありだよね』という意識なんですよね。(病院にいる)同期のナースもそんな感じで柔軟に考えているみたいです」

 

 

訪問看護も若手ナースを育てなければ…!

利用者さんをケアしている健和会の訪問看護師の写真

 

健和会の副看護部長・小菅紀子さんは、

 

病棟と同じように、訪問看護にも若手を入れていく必要があります。若手を計画的に育てなければ、訪問看護の質が維持できない。事業としても継続が難しくなります」

 

と地域看護コースの必要性を説明します。

 

さらに2016年度からは、病棟勤務を経ずに1年目から訪看ステーションに配属される「地域看護コースB」という選択肢も用意しました。

 

つまり「新卒で訪問看護師」のコース

 

この選択をした2年目の渡部由稀さんは「わたしも初めは病棟を経験してから、と思ったんですが、先輩方に勧められて。そっか、いずれ訪看に行くなら1年目からでもいいのか、と(笑)」。

 

渡部さんの写真

「とりあえず病棟から、とは思ってたんですけど(笑)」という渡部さん

 

こんなふうに、病院と在宅の垣根をそこまで強く意識せずにいられるのは、法人全体で病棟看護師も訪問看護師も育てようという意識が根付いているから。

 

「ここまで来るのに一定の時間はかかりました。でも、こうして実際に若手が育ってくれることで『これでよかったんだ』と、みんながあらためて思える。その繰り返しですよね」(副看護部長・小菅さん)

 

 

大変そうだけど、すごく楽しみ

本間さんの写真

病棟を経験後に訪問看護ステーションに配属されるコースを選んだ本間さんは、まもなく異動の時期

 

もうすぐ、また新しく1人の病棟ナースが訪問看護師になる予定です。

 

地域看護コースの本間ひろみさんは、みさと健和病院の整形外科病棟に配属されて3年目になりました。

 

「在宅ではまたイチからのスタートでもあると思うので、少し不安です。

 

でも、先輩や同期も大変そうだけど楽しそうで、『早く訪看に来なよー』って言ってくれてて。わたしも、すごく楽しみです」

 

***

第1回:病院ナース、これから2年「訪問看護」やってみます!|病院ナースの訪問看護(1)

第2回:わがままで怒鳴る「困った患者」は、普通の気のいいおじさんだった|病院ナースの訪問看護(2)

第3回:訪問看護に興味はある…でも「見学させてください」は迷惑?|病院ナースの訪問看護(3)

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます

新卒ナースの私でも「訪問看護師」は無理じゃない|新卒からの訪問看護(1)

いつかやりたい訪問看護…でも知識やスキルは?|新卒からの訪問看護(2)

訪問看護師“倍増”計画…!? 「訪問看護師を増やすぞムード」がじわじわ来ている

2025年に必要な看護師、病院は97万人 訪問看護師の需要は2.5倍に

全国初「訪問看護師コース」が大学に誕生|看護roo!ニュース

SNSシェア

コメント

0/100

掲示板でいま話題

他の話題を見る

アンケート受付中

他の本音アンケートを見る

今日の看護クイズ

本日の問題

◆周術期・麻酔の問題◆手術体位と起こりうる神経障害の組み合わせで誤っているものはどれでしょうか?

  1. 仰臥位 ― 閉鎖神経
  2. 側臥位 ― 顔面神経
  3. 砕石位 ― 坐骨神経
  4. 腹臥位 ― 尺骨神経

1908人が挑戦!

解答してポイントをGET

ナースの給料明細

8984人の年収・手当公開中!

給料明細を検索