看護って何? 臨床でモヤモヤしているナースをお助け!|本当に知りたいナイチンゲールの看護の話 【1】

 

看護の現場で、かんごるーは悩んでいた。

今日、患者さんに言われたこと。

「リモコン取って」「カーテン閉めて」。

 

あとは、リーダーからの伝言を医師に伝えたり…。伝書鳩…?

 

「これって看護なの?」

 

悩めるかんごるーの目に入ってきたのは、誰でも持ってるあの1冊。

 

 

どーーん!!

ナイチンゲールの『看護覚え書』(現代社)!

 

しかもよく見たら

 

 

サブタイトルが

『看護であること 看護でないこと』

…ですって!?

 

「何が看護で、何が看護じゃないのか…!」

これって、今悩んでることそのものじゃん!!

 

というわけで、

「看護っていったい何なの…?」

という多くの看護師のモヤモヤが、この本を読めば解消されるのではないか…。

 

そんな気持ちから、『看護覚え書』出版元の現代社で、ナイチンゲールを50年以上にわたり研究している小南さん、それに独自にナイチンゲール思想を研究されてきた金井さんにお話を伺いました!

(聞き手/看護師のかげ

 

本当に知りたいナイチンゲールの看護の話

【1】「看護って何?」臨床でモヤモヤしているナースを『看護覚え書』がお助け!

左:小南吉彦さん(現代社 社主、ナイチンゲール看護研究所 顧問)

右:金井一薫さん(ナイチンゲール看護研究所 所長)

 

ノーマルなかげさんのアイコン

こんにちは!看護師のかげです。

今日はよろしくお願いします。

私は今、ERと集中治療室に勤務しています。

 

記事の冒頭で、かんごるーも悩んでましたが、私自身、臨床で「今やってることって看護なのかな…?」と疑問に思ってつらくなることがあります。

 

「こんなに忙しく立ち回っているのになんだか虚しい」こんなふうに感じている看護師は多いと思うんです。

 

金井さんは、看護師としての臨床経験もお持ちですが、現場にいた当時、どのように感じていましたか?

 

金井一薫さんを表すアイコン

私は看護学生だった頃に、実習がとっても楽しかったんですよね。

実習中は座学と違って患者さんと接することが多く、授業で学んでいた技術を実際にできるようになるからすごく面白い。

患者さんと接することで得たものは、それは大きかったですね。

 

でも、「看護はすごく面白い」という感覚があるのに、看護師になってからは「看護って何なのか」はわからなかったので、足元はぐらついていました。

 

看護師として「看護の道を進んでいく」という確信が持てないわけです。

 

「看護って何なのか」教えてくれる人もいませんでした。

どうすれば「看護師としての道を進んでいく」ことに確信が持てるんだろう…と悩んでいましたね。

 

考えているカゲさんを表すアイコン

すごく共感します。

私は、看護のあいまいなところが苦手で…。

「これをやったら正解!」というのがないから、「これでいいのかなぁ…」と不安に感じることも多いです。

 

そのままの気持ちで看護現場にいると、バーンアウトというか、やりがいを感じられなくなってしまうと看護師の間でよく話題になります。

 

金井一薫さんを表すアイコン

そうですね…。

入職して最初のほうは、いわゆる「看護技術の上達」にエネルギー注ぎ、できていく達成感を感じることができると思います。

 

でも、ある程度の技術ができるようになったあと、どんなモチベーションで臨床にいればいいのか、わからなくなってしまう人も多いでしょうね。

私もその一人でしたから、よくわかります。

 

小南吉彦さんを表すアイコン

看護は珍しい仕事で、自分がよい看護をしたという成果が、他人からはほとんど見えないですよね。

「患者さんが満足した」すなわち「良い看護だった」とも違いますし。

 

体を拭いてあげたからといって何の役に立っているかはわかりにくいです。

良い看護を受けたから、病状が良くなった、と証明するのは簡単なことではありません。

 

看護の成果を科学的に証明するのは、本当に至難の技ですね。

 

 

初めて読んだとき、雷に打たれたような衝撃を受けたナイチンゲールの言葉

金井一薫さんを表すアイコン

そんなふうに、看護師になりたてで、臨床で悩んでいたとき『ナイチンゲール書簡集』を読んで、雷に打たれたような衝撃を受けました。

 

そこにはこう書いてありました。

 

看護の仕事は、快活な、幸福な、希望にみちた精神の仕事です。

 

犠牲を払っているなどとは決して考えない、熱心な、明るい、活発な女性こそ、本当の看護婦といえるのです。

浜田泰三 訳『ナイチンゲール書簡集』p.100,山崎書店,1964年(原文ママ)

 

看護って、全然自己犠牲の精神じゃないんだ!って、ものすごくびっくりしたんです。

 

「看護は、こんなに明るく、こんなに楽しい職業ですよ」とナイチンゲールが言っている。

それまで私が学んでいたナイチンゲールという人物は、いわゆる「白衣の天使」というイメージでした。

 

「身を粉にして働くのが看護師」とナイチンゲールが言っていると思い込んでいたんです。

 

自己犠牲の精神だけでは看護はつまらないじゃないですか。

ナイチンゲールが「看護をつまらなくしている元凶」のようなイメージすらもっていたんです。

でも、実像はまったく違った。

 

だから、雷に打たれたような衝撃でした。

それから、ナイチンゲールはどんな人だったんだろうと強い興味を持ち、研究をするようになりました。

 

喜んでいるカゲさんを表すアイコン

その後、50年近く、ナイチンゲールの研究を続けているということなんですね。

 

金井一薫さんを表すアイコン

はい。『看護覚え書』の中の思想を現代の若手看護師・看護学生に伝えるのが私の仕事です。

 

小南吉彦さんを表すアイコン

私は、とある看護書の出版社に入ったことがナイチンゲールに出会ったきっかけです。

1960年頃のことですが、雑誌編集のために当時の看護の本質論「看護とは何か」を調べていたんです。

 

そのときに、ルーシー・セーマーの伝記『フロレンス・ナイティンゲール』の翻訳本と偶然出会いました。

 

そこで、ナイチンゲールには著作が多くあることを知り、これがその後ナイチンゲール研究に取り組むきっかけになりました。

 

ノーマルなかげさんのアイコン

お二人の研究の歴史は後ほど詳しくお伺いしたいと思います。

 

冒頭でかんごるーちゃんも言っていましたが『看護覚え書』のサブタイトル「看護であること 看護でないこと」とはどういう意味なんでしょう?

 

金井一薫さんを表すアイコン

かんごるーちゃんも、かげさんも良いところに気がつきましたね。

このサブタイトルは、ナイチンゲールが覚え書を書いた目的を端的に示しています。

 

つまり、「この本を読めば何が看護で、何が看護でないのかがわかる」という意図で、ナイチンゲールはこのサブタイトルをつけたんです。

 

また、222ページでは「看護がなすべきこと、それは自然が患者に働きかけるに最も良い状態に患者を置くことである」と看護を定義しています。

 

一言でいえば、看護の役割は「生活を整えて、患者の自然治癒力の発動を助ける」ことなんです。

 

驚いているカゲさんを表すアイコン

えっ、そんなにシンプルなことなんですか?

 

金井一薫さんを表すアイコン

そうですね。シンプルですがとても奥深いです。

 

ノーマルなかげさんのアイコン

とっても気になります!

学生時代、レポート用に読んだときには全然わかりませんでした…!

ナイチンゲールは、何が看護で何が看護でないと語っているのか…。

次回、具体的に教えてください!

第2回に続く)

 

取材時撮影:kuma*

文・編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

●新刊

金井一薫 著

現代社白凰選書 48

新版・ナイチンゲール看護論・入門

―『看護覚え書』を現代の視点で読む―

(2019年6月27日発行)

 

●ナイチンゲール研究所

[ホームページ]

新しいナイチンゲール看護研究所

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小南 吉彦(こみなみ・よしひこ)

小南 吉彦さんを表すアイコン

●主な経歴
1966年8月
現代社を設立
1968年4月
『看護覚え書』(第1版)を出版
1973年2月
『看護覚え書』(第2版)を出版
1974年6月~1977年3月
『ナイチンゲール著作集Ⅰ~Ⅲ』を出版
1981年5月
『フロレンス・ナイチンゲールの生涯』を出版

金井 一薫(かない・ひとえ)

金井一薫さんを表すアイコン

●主な経歴
1993年1月~2008年3月
日本社会事業大学社会福祉学部 福祉援助学科 講師・助教授を経て教授
2008年4月~2009年3月
東京有明医療大学設立準備室
2009年4月~2013年3月
東京有明医療大学 看護学部看護学科 教授・看護学部長
2013年4月~2015年3月
東京有明医療大学 看護学部 看護学科 特任教授
2015年4月~
東京有明医療大学 名誉教授
2017年10月~
徳島文理大学大学院 看護学研究科 教授
2019年6月
『新版 ナイチンゲール看護論・入門』出版予定(現代社)
著書・論文多数

 

【聞き手:かげ】Twitter

ノーマルなかげさんのアイコン

総合病院で働き、絵を描く看護師です。医療の勉強に役立つ(てほしい)絵や仕事でのほっこり話などを発信しています。

 

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