患者・家族からのハラスメント対策を急げ|看護roo!ニュース

 

患者やその家族から暴力・ハラスメントを受けたことのある看護師は少なくありません。

            

女性が多い職種であること、身体的な接触を伴うケアを行うことなどから、看護職はハラスメント被害のリスクが高いとされます。が、その対策はそれぞれの職場に委ねられ、「看護師が安全に働ける環境」が必ずしも整っているとは言えない状況です。

 

こうした中、日本看護協会は国に対し、対策の充実を求める要望を行いました(2019年4月9日)。看護職の暴力・ハラスメント被害の現状と合わせて見ていきます。

 

 

「身体的な暴力」「セクハラ」の多くは患者から

誇りを持って働く看護師を傷つける暴力・ハラスメント被害は、どのくらい起きているのでしょうか?

 

日看協が2017年に行った実態調査によると、「過去1年間に勤務先や訪問先で暴力・ハラスメントを受けた」とする看護職は52.8%。2人に1人の割合に上ります。

 

どんな被害に遭っているのかを見ると、多い順に「精神的な攻撃」「身体的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「意に反する性的な言動」となっています。

 

 

こうした暴力・ハラスメント被害を誰から受けたのかを見てみます。

 

 

「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」は、同じ勤務先の職員によるケースが多いものの、「身体的な攻撃」「意に反する性的な言動」は、患者からが圧倒的に多数を占めています。

 

また、看護師が1人で利用者宅を訪れることの多い訪問看護の現場でも、被害は深刻です

 

全国訪問看護事業協会による全国調査(2018年)では、訪問看護師の約半数が身体的暴力、精神的暴力、セクハラを経験したことがあると回答しました。

 

 

 

日本医療労働組合連合会の2017年調査には、看護師たちの生々しい声も寄せられています。

 

「患者にベッドに引きずり込まれ、キスをされた」

 

「『自分は患者だから言うことを聞け』と恫喝」

 

「患者から執拗に身体を触られる」

 

「蹴る、殴る、噛みつかれる、引っかかれる、叩かれる」

 

各種調査の結果から、医療や介護の現場で暴力・ハラスメントがいかに日常的に横行し、看護職が危険にさらされているかがわかります。

 

 

国の規制案、「患者からのハラスメント対策」義務づけなし

現在、政府は「女性の活躍推進」の一環として、職場のハラスメント規制を強化しようとしています(女性活躍推進法、労働施策総合推進法の改正)。

 

パワハラ防止のための取り組みを事業者に義務付けたり、セクハラやマタニティーハラスメントについて相談した労働者への不利益な扱いを禁止したりすることが盛り込まれるなど、上司や同僚からのハラスメント対策が中心となっています。

 

その一方で、患者・家族からのハラスメントに当たる「顧客などからの迷惑行為(カスタマーハラスメント)」は、対策の義務づけが見送られました

 

 

「医療者にハラスメントを行ってはならない」啓発を

このため日看協は、患者・家族によるハラスメントからも看護職員を守るために

 

▼医療機関・事業所が講じる対策を明確に指針で示してほしい

▼対策に取り組む医療機関・事業所を支援してほしい

▼看護職員を含む医療従事者に対してハラスメントを行ってはならないと、国民に啓発してほしい

▼「看護師等の人材確保の促進に関する法律」を改正し、国や自治体、事業主等が対策に取り組むことを明記してほしい

 

との要望書を厚生労働省に提出。

 

厚労省は、法改正後に出す指針で対策を具体的に例示するほか、2019年度中に看護職員の暴力・ハラスメント被害の実態調査に乗り出す方針です。

 

改正法が成立すれば、2020年度にもハラスメント対策は強化される見通しで、「暴力・ハラスメントを許さない」という社会のムードはまた一歩、前進するでしょう。医療・介護現場についても、被害実態がさらに広く知られ、看護師が誇りを持って安全に働ける環境を整えることが不可欠です。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

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(参考)

看護職員に対する患者・家族等からのハラスメント対策の推進について日本看護協会

2017年看護職員実態調査(日本看護協会)

訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業(全国訪問看護事業協会)

2017年看護職員の労働実態調査(日本医療労働組合連合会)

介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書(三菱総合研究所)

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