特定行為研修はパッケージ化する…ってどういうこと?

看護師のイメージ画像

 

「2025年度までに研修修了者を10万人にする」という目標が、完全に“絵に描いた餅”状態になっている看護師の特定行為研修

 

この制度が一部、見直されることになりました。

 

その主な内容は「ニーズの高い特定行為研修をパッケージ化する」というもの。

 

現場でよく行われる特定行為に絞ったコンパクトな研修メニューをつくり、受講の負担を減らそうということなのですが…つまり、どういうことなのでしょうか?

 

 

負担が大きい特定行為研修

特定行為研修は、

 

医師の指示をその都度、待つ必要がなく、

あらかじめ作成された「手順書」に基づいて、

一定の診療の補助(=特定行為)を行える看護師

 

を養成する制度です。特定行為には21区分38行為が設定されています。

 

研修機関は、大学や病院など全国87か所(2018年8月現在)。

 

受講者は希望する区分を選択して研修を受ける仕組みですが、21区分すべての研修を提供できる機関は少なく、住んでいる地域や希望区分によっては、遠方まで行かなければならない場合も…。

 

研修のための費用や時間を確保する負担も大きく、修了者の伸び悩みにつながっています(2018年3月末現在、1006人)=関連記事=。

 

 

コンパクトな研修パックに

この現状をなんとかしようと新たに示されたのが「領域別のパッケージ化」です。

 

対象となる領域は、現場ニーズが高いとされた下図の3つ。

それぞれの領域で頻度の高い特定行為を厳選して組み合わせたコンパクトな研修メニューを用意する=パッケージングする、というわけです。

 

パッケージ化される3つの領域の表。在宅・慢性期領域パッケージ、外科術後病棟管理領域パッケージ、術中麻酔管理領域パッケージ

 

たとえば、在宅・慢性期領域のパッケージを見てみましょう。

 

このパッケージでは、「療養が長期にわたる患者」「最期まで自宅や施設で療養する患者」を想定して、修める特定行為を4区分の4行為に絞っています。

 

在宅・慢性期領域パッケージの研修イメージ表。パッケージ研修では4区分の4行為に絞られ、それ以外の特定行為はオプションで追加する

 

通常であれば区分単位で研修を受ける必要があるため、もしも、この4区分を選択するなら計7行為の研修を受けることになります。

 

一方、パッケージ研修では「膀胱ろうカテーテルの交換」「創傷に対する陰圧閉鎖療法」「持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整」は除外され、必要最小限の4行為だけを効率的に学ぶことができるという仕組みです。

 

パッケージ以外の研修は、それぞれの研修機関が必要に応じてオプションとするイメージです。

 

 

座学も短く、実習は時間数から症例数に

併せて、講義の重複部分を整理することで、座学の「共通科目」は315時間から250時間に圧縮。さらに、時間数で決められていた実習も経験症例数に変更されるなど、全体的に研修のスリム化が図られます。

 

在宅・慢性期領域パッケージの説明表。通常の特定行為研修では合計492時間を要するが、パッケージ研修では310時間プラス4つの特定行為ごとに5症例を経験することになる

 

外科術後病棟管理領域パッケージの説明表。通常の特定行為研修では合計673時間を要するが、パッケージ研修では365時間プラス15の特定行為ごとに5症例を経験することになる

 

術後麻酔管理領域パッケージの説明表。通常の特定行為研修では合計547時間を要するが、パッケージ研修では316時間プラス8つの特定行為ごとに5症例を経験することになる

 

厚労省は、今回のパッケージ化で、

 

  • 特定行為の研修がまとめて受けやすくなる
  • 医療機関が看護師を研修に送り出しやすくなる
  • 現場の需要に合った特定行為が網羅されるので、修了者のスキルが生かされやすくなる

―といった効果を期待しています。

 

2019年4月に関係省令を改正、2020年2月ごろから領域別パッケージの研修を行う研修機関の指定を進め、4月にもスタートさせたい考えです。また、今回の3つ以外の領域についてもパッケージ化が必要かどうか、今後検討していくこととしています。

 

 

パッケージ研修、目標は「2023年度末までに1万人」

しかし、区分単位での特定行為研修もこれまで通り、なくなるわけではありません。新たに領域別パッケージ研修の体制を整えようとする施設がどれほど出てくるかは、未知数です。

 

「特定行為研修を受けやすくまとめました!」と言っても、そのパッケージ研修を実施する研修機関がそもそも全国に数か所しかできないようであれば、結局は、研修修了者が伸び悩んでいる現状の二の舞でしょう。

 

ただ、今回のパッケージ化には「医師の働き方改革」が強く絡んでいます。

 

医師の長時間労働を改善する対策の一つとして挙げられている医師の業務移管(タスク・シフティング)。その重要なカギになる「特定行為研修を修了した看護師」を養成すべし!というプレッシャーは強く、厚労省も普及に力を入れてくるとみられます。

 

厚労省は2024年3月末までにパッケージ研修の修了者を1万人、研修機関を400か所程度にするという目標を掲げました。

 

医師の働き方改革の文脈で看護師の特定行為が語られることに疑問の声もありますが、2024年4月から医師の時間外労働に対する上限規制がスタートする中、これまで以上に看護師の役割が注目されているのは間違いありません。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

※編注)「第16回医師の働き方改革に関する検討会」(2019年1月11日)でパッケージ研修の養成目標が示されたことを受け、一部加筆修正しました(2019年1月12日)。

 

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(参考)

第19回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会資料(厚生労働省)

特定行為に係る看護師の研修制度(厚生労働省)

第16回医師の働き方改革に関する検討会 時間外労働規制のあり方について3(議論のための参考資料)(厚生労働省)

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