看護師をお助け!医療情報をわかりやすく発信する“外科医けいゆう先生”ってどんな人?

医療情報を解説するブログが大人気のけいゆう先生を知っていますか?

外科医けいゆう”は、現役医師・山本健人さんのペンネームです。

 

現役医師でありながら、なぜネットで発信しているのか。その理由を聞きました。

聞き手:白石弓夏(看護師・ライター)

 

山本健人さん(外科医けいゆう)プロフィール

かんごるーちゃんと写真にうつる山本健人さん(外科医けいゆう先生)の写真

2010年 京都大学医学部卒業、神戸市立医療センター中央市民病院臨床研修医

2012年 神戸市立医療センター中央市民病院 外科

2015年 田附興風会医学研究所 北野病院 消化器センター外科(大阪市)

2017年 京都大学医学部附属病院 消化管外科・京都大学大学院医学研究科 博士課程

 

 

現役医師が看護師に向けてネットで発信するワケ

――山本さんは、看護roo!で連載をもったり、過去にはナース向けのTwitterアカウントを作成していたりと、看護師への情報発信に積極的ですね。そもそもなぜ看護師に向けた発信を始めたのでしょうか? 

 

看護師さんが調べものをするとき、最初にネットを使って検索するのをよく見ていました。

書籍をそろえて勉強するよりも、サクッとスマホで調べる人が多いそうですね。

 

私の妻が看護師なのですが「勉強するときにわかりやすい教科書が少ない」と話していました。

そのことを聞いて、読みやすくて理解しやすいサイトがあったら、ナースの役に立てるんじゃないかなと、数年前からぼんやり考えたんです。

 

その後、京都大学で博士課程の大学院生になり、臨床がメインの頃よりは時間が作れるようになりました。

そこで、ブログを1年半前くらいから、Twitterを半年前くらいから始めました。

 

ブログでナース向けに記事を書くときは、1~3年目くらいの方を読者と想定して書いています。

知識と経験を積んでいる過程なので、臨床で苦労が多い年代ですよね。

 

間接的にはなりますが、自分の書いたものが困っているナースの助けになればと思います。

 

けいゆう先生のブログのトップページ

山本さんのブログ「外科医の視点」

 

 

看護師が患者さんにとって一番身近な存在だから

――山本さんが医師として臨床にいるとき、看護師はどういう存在でしたか?

 

看護師さんは効率よく患者さんの情報を取ってくれているし、患者さんも医師に対してではなく、ナースに自分のことを話したり質問したりする頻度が高いですね。

 

医師はナースに比べてなかなか患者さんの情報を取れず、話せたとしても本音を聞けていないことがあります。

これは医師側が反省すべき点だとも思うのですが…。

 

私は、患者さんの情報は患者さんご本人だけでなく、ナースにも必ず聞くようにしています。

それくらい、医師にとってナースは頼れる存在です。

 

ナースが患者さんに質問されたときに「わからないから先生に聞いてください」と答える場面が、記事を読むことで少しでも減るといいな、と考えています。

これも情報発信をしている理由のひとつです。

 

 

看護師の負担を減らしたい

看護師向けの情報発信を行う目的について語る山本健人さん

 

――看護師に向けて情報発信する場合、どのようにトピックを選んでいるのでしょう?

 

たとえば、あるナースが、ドレーンの混濁を術後のラウンドで見つけたとします。

夜中ですぐに医師に連絡が取れない場合、何をするでしょう?

 

きっと患者のアセスメントをし、その後の処置を予測した行動をとりますよね。

必要な検査や処置の準備をしておく人も多いと思います。

 

でも予測ができなければ立ち往生してしまう。

 

医師がいないときでも「医師だったらこういう指示を出すだろう」という予測の精度が上がれば、ナースの負担はもっと減ると思うんです。

 

 

――たしかに、事前に準備ができていれば、医師の急な指示に慌てることもなくなります。

 

そうですね。

なので、ナースが知っていたらアセスメントに役立つであろう知識や、患者さんに質問されたときの助けになるトピックを選んでいます。

 

 

――記事の題材として、『コード・ブルー』などドラマを使われる場合も多いですね。

 

小難しい記事は、みんな読まないですよ。

臨床も忙しい中ですから、記事がつまらないと勉強してもらえなくなります。

 

エンタメの要素があったほうが頭に入りやすいし、記憶に残るのではないかな、と考えています。

 

看護roo! の連載もそうですが、ドラマを題材にした記事で、楽しく医学的知識を得てもらえたら嬉しいですね。

 

情報発信をした中での思い出を嬉しそうに語る山本健人さん

 

――記事を読んだ看護師の反応で印象的なものはありますか?

 

看護師さんから「わかりやすかったです」「勉強になりました」と言ってもらえればそれだけで嬉しいです。

 

私はこれまで、入職したばかりのナースが、厳しい現場に耐えられず、途中で辞めていった例を何度も見てきました。

誰しも社会人になったばかりの頃は苦しいものですし、人の命がかかった現場を選んだ以上、毎日悩むのは自然なことです。

 

ここを乗り切れば、光が見えてくる。

そんな思いで、1年目のナース向けに何度かブログでコラムを書いたことがありました。

これに対してTwitterのDMで「ブログを読んで勇気づけられました」という感想をたくさんいただいたときは嬉しかったですね。

 

1年目ナース向けにブログで発信したコラムの紹介「ようこそ、臨床の世界へ。医師/看護師1年目に伝えたいこと」

ようこそ、臨床の世界へ。医師・看護師1年目に伝えたいこと

 

 

わかりやすさと正確性のはざまで

文章を書くことの難しさを語る山本健人さん

 

――看護師以外にも、疾患や症状を調べる一般の方向けに記事を書いていますね。その際に、特に意識することはありますか?

 

ネットで病気のことを調べている患者さんやご家族の方々を不安にさせたり、傷つけたりすることが万が一でもないように気をつけています。

 

たとえば、以前あるメディアの連載記事で「盲信」という言葉を使ったことがあったんですが、「盲信」には“何も考えずに信じる”という意味があります。

 

その記事の編集者から、必要以上に強い言葉を使わないほうが良いのではないか、という指摘を受けました。

 

そこで「信じる」というフラットな言葉に直すことになりました。

 

文章を書いていると、無意識に事実よりも強い言葉になってしまうことがあります。

意図せず表現が過激になっていないか、伝えたいことが伝えたい幅で伝わるか、いまでも日々葛藤しながら書いています。

 

山本健人さんの写真

 

医師が発信することの影響力も考慮すべき点です。

 

たとえば、私が記事で「~だと考えられています」と表現したとします。

読者は「これが正しい」と解釈するし、「これが正しい」という認識が広まってしまうという前提で書いています。

 

その情報の背景に、科学的根拠のある論文が揃っていて、確度の高い情報だと思うときにストレスはありません。

 

でも、そうじゃない場合だってあるんです。

 

そういうとき、論文を引用しながら「これはこういう研究デザインで、こういう人たちを対象にしているので例外もあると解釈してください…」と難しく書くのは簡単です。

正確性だけを追求すればこのような論文的な表現が一番確実です。

 

でも、やっぱりそれだと難しすぎて一番届けたい人に伝わらないんですよね。

「わかりやすさと正確性」そのはざまでいつも葛藤しています。

 

 

多忙な中で大切にしていること

多忙な毎日の中で大切にしていることを話す山本健人さん

 

――山本さんは現役医師であり、大学院で研究を行っていて、2人のお子さんの父親でもあります。そんな中、毎日情報発信を行っていることに正直驚きます。忙しくてつらくなったりしないのでしょうか?

 

私の場合、現役医師として患者さんに医療を提供しつつ、論文執筆や学会発表などの学術活動を行うこと、大学院生として学位取得のために基礎研究に従事することが本分です。

これらが、自分が最も大切にしている職務であることは間違いありません。

 

でも、SNSやブログを通して発信することも、生半可な気持ちで取り組んでいるわけではないんです。

情報を発信する責任は、いつも強く意識しています。

 

家族との時間も大切です。

まだ子どもが小さいので、日々しゃべる言葉が増えていくのを見るのは嬉しいですね。

運動会にも参加しますし、週末は必ず家族で出かけるようにしています。

 

忙しすぎるということはなくて、それぞれの役割が互いに良い影響をもたらしてくれていると感じています。

 


山本健人 やまもと・たけひと

(ペンネーム:外科医けいゆう)

医師。専門は消化器外科。2010年京都大学医学部卒業後、複数の市中病院勤務を経て、現在京都大学大学院医学研究科博士課程。個人で執筆、運営する医療情報ブログ「外科医の視点」で役立つ医療情報を日々発信中。資格は外科専門医、消化器外科専門医、消化器病専門医、がん治療認定医 など。
「外科医けいゆう」のペンネームで、TwitterInstagramFacebookを通して様々な活動を行い、読者から寄せられる疑問に日々答えている。

※2018/12/10 著者プロフィールを更新しました。

 

取材・文・撮影/白石弓夏(看護師・ライター)

編集/坂本綾子(看護roo! 編集部)

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