「プリセプター研修」でおさえておくべきことは“4つ”

プリセプターを初めてやる看護師が、「これさえ読んでおけば一年乗り切れる」実用的な内容を連載でお届けします。

 

執筆/白石弓夏 看護師

監修/上村美穂

川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)

教育担当師長、集中ケア認定看護師

 

初めてのプリセプター。これさえ読んでおけば大丈夫!

Vol.2 「プリセプター研修」でおさえておくべきことは“4つ”

プリセプティを指導するところをみんなの前で発表するプリセプターのイラスト

 

 

 

[3月ごろ]プリセプターとして業務を行う前に(導入研修)

導入研修の目標(例)

新人を受け入れるための心構えができる。

 

第1回で解説したように、プリセプターと一口で言っても、その役割や求められる業務はさまざまです。

先輩たちはどんな内容の研修を受けて、プリセプターとしての業務を始めたのでしょうか?

 

4月に新人が入職する前、3月の段階では、それぞれの勤務先(以下、施設)の教育体制と、その体制におけるプリセプターの役割について、座学(導入研修)が行われる場合が多いようです。

 

導入研修は、新人を受け入れるための心構えなどを準備するために行われます。

一般的な新人の特徴や傾向について理解したうえで「プリセプターに求められること」を理解するための研修です。

 

 

1)プリセプターに求められることを理解しよう!

プリセプターに求められること

◯ いつも身近にいて見守り、悩んでいることや困っていることに気がつく。

✕ 専門家のように、カウンセリングができる。

 

◯ 新人が真の悩みを打ち明けられる(先輩として相談に乗ることができる)。

✕ 「優しいだけ」「声をかけやすいだけ」の友だちのような先輩にとどまってしまう。

 

◯ 「どんな新人に育ってほしいか」という目標を明確にした上で関わる。

✕ 新人が混乱し、不安に陥るような関わりをする。

 

最近では、新人育成はプリセプターに一任するのではなく「チーム全体で育てる」という考え方を取り入れている施設が多くなってきています。

(参考記事:「プリセプターシップ」「プリセプター制度」って実は曖昧。本当の意味、知ってる?

 

チーム全体で育てるとはいえ、新人が相談する際の窓口が不明確だったり、関わる先輩が多すぎたりすると、新人は混乱し、不安になってしまいます。

 

そのような新人の状況を理解し、いつも見守り助けることができるプリセプターでいることが、重要な役割です。

専門家のようにカウンセリングができる必要はありません。

 

しかし、「優しい」「声をかけやすい」といったことだけでは、新人は本当の悩みを打ち明けられず、成長にもつながりません。

新人に関わるにあたり、プリセプター自身が「どんな新人に育ってほしいか」という目標をもつことが重要です。

このような心構えを準備段階でもっておきましょう。

 

 

[5月以降、年2~3回]業務開始後の研修【フォロー研修】

フォロー研修の目標例

新人がリアリティショックやカルチャーショックを乗り越え、スムーズな職場適応ができるよう、フォローを行い、相談役になることができる。

 

導入研修を終え、4月に新人が入職してから年に数回、業務開始後にプリセプターのフォロー研修を行う場合もあります。

 

初回(5月ごろ)は、新人の状況についての情報交換や、職場適応を促すための座学などが行われます。

以降は、ロールプレイを通して具体的な場面を振り返る形式が多いようです。

 

 

2)ロールプレイを有効に使おう!

ロールプレイの目標例

新人との関わりを振り返り、自己を省みながらプリセプターとして必要な具体的行動を考える。

 

ロールプレイでは「新人との関わりの中で心に残っている場面」や「新人が看護を学んでいると感じた場面」などを取り上げます。

新人役とプリセプター役に分かれ、場面を実際に再現することで振り返りを行います。

 

ロールプレイの効果として、自分の新人への関わりが効果的であったのか、その後のフォローはできていたのかを自省し、次の行動を考えることにつなげます。

 

また、他者の事例を見聞きし、自分自身の実践と照らし合わせることで、自分の傾向を知る機会にもなります。

 

ロールプレイの具体例

・夜勤で患者が不穏になり、新人が対応に困っていたので声をかけ一緒にケアを行った。自分の知識や経験を伝えながら関わったことで、新人は次の勤務でその患者に学んだことを活かしてケアを行い、穏やかに過ごすことができていた。

 

・1カ月に一度行っている、プリセプターと新人との振り返りの当日、新人が部屋に入ってくるなりいきなり泣き出して、大慌てしたが、じっくり話を聴いて解決に導くことができた。

 

うまくいったことだけでなく、うまくいかなかった経験なども含めて事例検討していきます。

自分と他人の事例について、複数人の意見を聞きながら振り返ることで、より良い実践につなげていきましょう。

 

 

3)新人看護師技術チェックリストを用いた指導にバラつきが出ないようにしよう!

新人看護師技術チェックリストを用いた指導についての目標(例)

患者の安全安楽を考えた看護技術を指導する。

 

技術チェックリストの使用については、厚生労働省による基準はあるものの、施設によってその指導法はさまざまです。

過去に自分が新人として指導を受けているとはいえ、自己流にならないように注意が必要です。

 

●技術指導のバラツキが出ないようにするためにはどうする?

手技そのものは、看護師の経験から得た技があり多少の方法の違いはあって当然です。

しかし、看護手順書やマニュアルなどに載っているやり方と違う、薬剤の確認の仕方や、感染管理に関すること(エプロンや手袋の装着や着脱、廃棄について)など、部署独自のローカルルールに新人が戸惑ってしまう場合があります。

 

新人が集合研修で教わったことが、現場では守られていないと、「結局その時に先輩が言ったことが絶対」といったような、やや諦めのような感覚を新人がもってしまうこともあります。

 

そうならないように、マニュアルを確認し、ローカルルールがないか研修の場で確認することが必要です。

 

■ポイント

・プリセプター個人がマニュアルを再確認する。

・部署独自のローカルルールがないか、常に留意する。

 

 

 

[年度の終わりごろ]研修最終回

4)自分の傾向や、できたこと・できなかったことを確かめよう!

研修最終回の目標例

プリセプターとしての活動を振り返り、意味づけをすることができる。

 

年度の終わりには、プリセプターとしての1年を振り返る目的で研修が行われる場合があります。

 

1年を振り返っての印象として「大変だった」「思い通りにいかなかった」など新人との関わりの中でうまくいかなかったことが思い浮かんでしまうことが多いと思います。

 

しかし、集団の中で振り返ることを通して自分が何を大切にプリセプターとして新人に関わってきたのかを認識し、自分にできていること、成長を確かめることが大切です。

 

また、できなかったことや自分の傾向を知ることにより今後の継続した新人指導や、自分自身の実践、チームの中での役割に活かしていきましょう。

 

 

みんなが経験した研修内容

ここまでみてきた研修内容は、あくまでも例です。

勤務先によってプリセプター研修の内容はさまざま。

看護roo!のインタビューに応えてくれたみなさんの体験談をご紹介します。

 

◯3カ月おきに研修のあったAさん

・院内研修は3、5、8、10月に開催されました。「新卒を迎えるにあたって」というテーマで病院のスタッフ全員が受けるものをまず受講しました。プリセプターだけが集められて行った研修の内容は、「よき相談相手としてどのようなプリセプターであるべきか」を教わる座学でした。

 

◯OJTの考え方についてレクチャーがあったというBさん

OJT(on the job training)の考え方について、座学でレクチャーがありました。「教える(学ばせる)」ことと「考えさせる」ことは分けて行う、という考え方などをグループの先輩から教わりました。

 

◯座学での講義があったというCさん

厚労省のガイドラインを使用して、プリセプターの定義や役割、他スタッフとの関わりについてなどの講義を受けました。また演習でプリセプティに対し失敗した時にどのように声をかけるか、次に生かせるような振り返り方について座学がありました。

 

◯新人との接し方について学んだというDさん

新人の特徴や、時系列に沿った気持ちの変化を学んだり、自分がされて嬉しかった指導方法や言葉かけなどを思い出すワークをしました。

指導するときには、抽象的な言葉はできるだけ避け、具体的に話すなどを学びました。

 

◯座学や振り返りを行ったというEさん

3年目の終わりに、プリセプターの導入研修を受けました。それから1年でトータル3回ほどのフォロー研修がありました。

新人というのがどういう気持ちで入職してくるか、一度コミュニケーションの講師の先生がいらして、話し方や姿勢など基礎のお話をしてくれました。

 

◯コーチングスキルや、新人との関わり・グループワークを行ったというFさん

年に3回の研修で毎回コーチングスキルや新人との関わり方などの講義があり、その後グループワークを行いました。

そこで、新人に対しての関わり方を学びました。

 

◯研修は特になかったというGさん

詳しい説明や研修などはなく、プリセプター会議で確認したり、指導者や上司と確認しながら行っていました。

自分自身が新人のときに指導は受けているので、なんとなく流れはつかんでいました。

 

◯自分が新人だった当時を思い出していたというHさん

研修はなくて、実際に始まってから上司と相談しつつ指導を行う感じです。新人看護師技術チェックリストについては、自分が新人のときにやっていたので、まったく初めてという感じはなかったです。昔やってたので懐かしいなという。

 

 

おわりに:プリセプター研修を有意義な場にしよう!

プリセプターの役割や、それに伴う研修内容はさまざまです。

その中で、研修という貴重な場を最大限活かすために、4つのポイントをご紹介しました。

 

新人の育成は、プリセプターだけが担うものでは決してありません。

日々の業務も大変ですが、先輩に知恵を借りたり、先人の教授法・コーチング法などを学ぶのと同時に、この記事の内容がみなさんの役に立てばと思います。

Illustration/宗本真里奈

編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

(引用・参考文献)

1)目黒 悟:教えることの基本となるもの―「看護」と「教育」の同形性.(メヂカルフレンド社)

2)プリセプター制度の現状と課題:PDF(看護研究交流センター 地域課題研究報告)

3)新人看護職員研修 ガイドライン 【改訂版】:PDF(厚生労働省)

4)新人看護職員臨床研修における研修責任者・教育担当者育成のための研修ガイド:PDF(日本看護協会

5)OJT における新人教育で師長が果たす役割に 関する文献検討:PDF(川崎医療福祉学会誌)

6)新人看護師技術チェックリストの使い方について:PDF(厚生労働省)

 

【監修者 プロフィール】

上村美穂(かみむら・みほ)

1996年 聖マリアンナ医科大学 東横病院 脳神経外科病棟 入職

2003年 集中ケア認定看護師 取得

2006年 川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)ICU・CCU異動

2017年~ 同病院 教育担当師長

 

プリセプターについてのみんなの経験談はこちらから

▷『プリセプターについて』(看護師の掲示板:ナースカタリーナ)

▷『こんなプリセプティはイヤだ~!!』(看護師の掲示板:ナースカタリーナ)

 

 

 

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