終末期ガイドライン改訂、話し合い重ねるACP(アドバンス・ケア・プランニング)が核に

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が2018年3月、約11年ぶりに改訂されました。

 

年老いた夫婦が手を重ねているイメージ写真

 

意思決定支援のプロセスは繰り返して

人生の最終段階に、どこで、どんな医療・ケアを受けたいか-。

本人・家族の望む看取りを実現する上で、その意思決定プロセスを支援することは、看護師をはじめとする医療・介護従事者の大切な役割です。

 

ガイドラインは、そんな意思決定支援に携わる医療・介護従事者の指針として策定されたもの。今回の改訂は、多死社会に向かってその重要性が増している中での見直しとなりました。

 

【改訂のポイント】

 

1)病院だけでなく、在宅や介護の現場も想定。本人・家族らと話し合う「医療・ケアチーム」に介護従事者が含まれることが明確に

 

2)本人の意思は変化しうるものとして、医療・ケアの方針について繰り返し話し合うことを強調

 

3)本人が意思を伝えられなくなる場合を想定して、代わりに本人の意思を推定する人を事前に決めておくことを記載

 

4)単身世帯の増加を踏まえて、意思確認ができない本人に代わる人は「親しい友人」も含めるなど、より広い解釈に

 

5)繰り返し話し合った内容はその都度、文書にまとめ、本人、家族や親しい友人、医療・ケアチームで共有することを推奨
 

 

看取りの現場で近年、注目されているACPアドバンス・ケア・プランニング:Advance Care Plannning)の考え方が盛り込まれたのが特徴です。

 

 

医師・看護師の4割は「ACPを知らない」

ACPは

将来の治療・ケアについて、患者・家族、医療・介護従事者が事前に話し合うプロセス

と定義されます。

 

ポイントは、繰り返し話し合うことを重視する点です。

 

患者の気持ちや考えは、心身状態の変化や時間の経過などにつれて、さまざまに揺れます。そのため、一度だけでなく、話し合いを繰り返すことが、ACPでは強調されています。

 

ACPの考え方は、患者の意向を尊重した医療・ケアの在り方として、欧米を中心に普及しています。日本でも「終活」など、自らの最期に対する関心は高まっていますが、ACPについてはほとんど認知されていません

 

厚生労働省の調査によると、ACPを知っているとした一般国民は3.3%で、「知らない」が75.5%でした。医師・看護師では、知っている人が約2割にまで高まりますが、約4割は「知らない」と答えています。

 

ACPの認知度に関する棒グラフ。「ACPについてよく知っている」は一般国民が3.3%、医師22.3%、看護師19.9%、介護職員7.6%、「聞いたことはあるがよく知らない」は一般国民19.2%、医師34.6%、看護師36.5%、介護職員40.0%、「知らない」は一般国民75.5%、医師41.6%、看護師42.3%、介護職員51.7%だった。「ACPの実践状況」について「実践している」としたのは病院が23.6%、診療所13.3%、介護老人福祉施設38.7%、介護老人保健施設32.4%、「実践していない」は病院72.9%、診療所77.2%、介護老人福祉施設59.9%、介護老人保健施設65.7%

出典:平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査(厚生労働省)

 

 

ただし、施設単位でACPの実践状況を尋ねると、病院で2割超、介護施設では3~4割がACPを実践しているとしています。ことさらACPと意識していなくても、日頃の診療・ケアの中で取り組んでいる医療・介護従事者は多いのかもしれません。

 

 

使われないガイドラインから脱却へ、診療報酬でも後押し

さて、こうしたガイドラインは現場で活用されてこそ意味があるものですが、実は、改訂前のガイドラインは、医療・介護従事者の多くが「知らない」「参考にしていない」という状況でした。

 

改訂前の「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」の利用状況についての棒グラフ、「参考にしている」は医師が19.7%、看護師16.7%、施設介護職員22.7%、「参考にしていない」は医師22.5%、看護師22.9%、施設介護職員18.3%、「ガイドラインを知らない」医師33.8%、看護師41.4%、施設介護職員50.2%、ほかは「死が間近な患者・入所者にかかわっていない」「無回答」など

出典:平成25年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査(厚生労働省)

 

「病院から在宅へ」の一環で、本人の希望に即した看取りを国策として進める国は、今回の改訂に合わせてガイドラインの普及にも力を入れる考えです。

 

それがよくわかるのが、診療報酬での後押し。

 

2018年4月の診療報酬改定では、在宅のターミナルケアにかかわる訪問診療や訪問看護の評価条件に「ガイドラインを踏まえた対応をすること」を加えた上で、報酬点数をアップしています(「在宅ターミナルケア加算」「訪問看護ターミナルケア療養費」)。

 

このほか研修会の開催なども検討されており「使われるガイドライン」へと普及活動が進められるようです。

 

***

患者との話し合いを通じて意思を尊重した医療・ケアを提供することは、看護師がこれまでも実践してきたことであり、強みが発揮される分野でもあります。ガイドライン改訂を機に、意思決定支援の大切さが広く理解されれば、こうした看護師のスキルにさらに注目が集まりそうです。

 

【烏美紀子(看護roo!編集部)】

 

 

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(参考)

人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン・PDF(厚生労働省)

平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査結果・PDF(厚生労働省)

アドバンス・ケア・プランニング 第1回人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会資料3(厚生労働省)

アドバンス・ケア・プランニングはどう進める?(日経メディカル)

 

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