「もっと早くシフトを出して!」と師長に思う時、まずやってみてほしいこと2つ。

前回は伊藤師長の「希望が全部通る」「出るのが早い」シフト作成の秘訣をご紹介しました。

そのシフトが実現できているのは、病棟スタッフの協力があってこそ。

「もっと早くシフト出してよ!」と師長に対して思ってしまう時、まずやってみるといいことを2つご紹介します。

 

シフト作りの舞台裏【2】

「もっと早くシフトを出してよ!」と師長に思う時、まずやってみてほしいこと2つ。

スーパー師長、伊藤さんの写真

(伊藤優子さん/川崎市立多摩病院 6西病棟師長)

ライター:白石弓夏(看護師)

 

師長のシフト作りに不満がある時、まずやってみてほしいこと2つ。

 

前回お伝えした通り、伊藤さんは申請する勤務希望の日数を制限をしていません。

たとえば「休み希望は3日が上限」などの具体的な数字によるルールを設けていないのです。

 

でも、「これだけは守ってくださいね」というお願いごとを文書にして、部署配属時に配布しているそうです。

 

・勤務希望提出の締切を守る

・周囲に配慮して希望を記入する(自分が1カ月にもらえる休みの日数や、連休の希望は常識の範囲で記入する)。

 

このように、具体的な数字で制限しないやり方だと、慣れない新人看護師が、勤務希望を遠慮なく入れてくる場合もあるそうです。

そんなときは「一人で働いてるんじゃないんだから、常識の範疇で希望を考えるのよ。私が調整できる範囲ならうるさくは言わないけど」とハッキリ伝えているとのこと。

 

ルールで縛るのではなく、自主的な譲り合いを推奨しています。

 

伊藤さんのお話を聞いて感じたのは、ルールがある場合でも、組織の中で働く身としてこの2つに留意するのはとても重要だということ。

 

「もっと早くシフトを出して!」など、師長のシフト作りに不満がある時、スタッフだからこそできることを心がけてみてもいいのではないでしょうか。

 

 

スタッフ目線での指導

自主的な譲り合いを推奨しているとはいえ、スタッフ間での勤務交代については、先輩が後輩に依頼している場合は、注意することもあります。

「ここ入れないから代わってくれない?」など、先輩が後輩にお願いしている様子はよく見ますよね…。

 

そんな時に伊藤さんは「後輩は断れないんだから、それはパワハラでしょ~。同等の人にお願いしなさいよ!」と言うそうです。

 

 

年次関係なくスタッフの満足感を重視している「スタッフ目線での指導」なのだなと思いました。

 

ルールで縛るよりも、手間がかかるやり方だと思いますが、メンバーにシフトの大切さを伝える方法だと感じます。

シフトは心身ともに気持ち良く勤務するためにとても重要なものだからです。

 

 

「シフト作りが大変」は師長の都合

ルールで厳重に管理すると、スタッフの満足度は下がる、と伊藤さんは言います。

「休み希望について『ここは絶対休みたいです!』と意思を伝えてくる人もいるんですが、そうなるのは『希望は通らないもの』という不信感があるからだと思います。だから希望は全部通しますよ!といつも言っていると、スタッフとの信頼関係ができて、意固地な希望を出してくることもなくなると思うんです」

 

看護roo!のアンケートでも、シフトが発表されたときに真っ先に見るのは「希望が通っているか」という結果が出ています。

 

■シフトが出たとき、最初に何をチェックする?

“希望が通っている”という満足感は、業務へのモチベーションにつながってきますよね。

 

「今の病棟スタッフは、『シフトを見ると頑張ろうって思える』と言ってくれます。こういうふうに感じてくれるのが一番嬉しいです。師長がどういう気持ちで勤務表作っているかなんてスタッフにはわからないですから。スタッフのモチベーションが上がることが、一番の望みです」

実際にやってみないことには、シフト作りの大変さはわからないのだと、伊藤さんは伝えてくれました。

 

 

管理職を10年やってもスタッフ目線

今回の取材にあたり、私は「師長さんと話す」ということ自体に緊張していました。

恥ずかしながら「師長=怖い」というイメージを持っていたので…。

 

実際には、とても楽しくお話させていただき、病棟でもこんな風に冗談を言い合ったり、笑いが起こるような場面が多いのだろうな~と普段のコミュニケーションの様子を垣間見れたような気がしました。

 

よく話のなかで気になった言葉は、「そう、みんな助けてくれるの」「スタッフがシフト楽しみにしているので~」など。

こんなふうにコミュニケーションをとってくれる師長なら「スタッフのために頑張ってくれている」と感じるので、自然と「協力したい」と思うのではないでしょうか。

伊藤さんは「管理職を10年やってもスタッフ目線」なのだなと感じます。

 

 

■おまけ

シフト作成ツールを使いこなす伊藤さんは、ITスキルがバリバリのガジェット好きかと思いきや携帯はガラケー。

伊藤さんのシフトをナスカレ(看護師のスケジュール管理アプリ)に入力する係は、ナースマンの甥っ子さんだそうです。

 

「自分のことになるとからっきしダメ」という伊藤さん。

伊藤さんのITスキルはすべてスタッフのために使われているのかもしれません。

 

 

今でこそスタッフの満足度の高いシフトを作る伊藤さんですが、昔はシフト作りで苦労されたこともあったそう。

次回は、伊藤さんのシフトへの並々ならぬ思い入れにつながったエピソードを交えて紹介します!

Illustration/宗本真里奈

編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

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