タスク・シフティングで看護師に移管する業務とは?医師の働き方改革で「緊急対策」

国を挙げた働き方改革の波を受け、「医師の働き方改革」が議論されています。

そんな中、長時間労働が慢性化している医師の負担を軽減するための緊急対策として、看護師をはじめとする他職種に移管するべき業務が明示されました。


タスク・シフティングに挙げられている業務の一つ、静脈注射のイメージ写真

 

すべての医療機関がすぐに取り組むべき6つの対策

この対策をまとめたのは、2018年1月15日に開かれた厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」。勤務医のいる、すべての医療機関がすぐにも取り組むべき「緊急的な取り組み(骨子案)」として、次の6項目を掲げました。

 

1)医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み

2)36(サブロク)協定の自己点検

3)既存の産業保健の仕組みの活用

4)タスク・シフティング(業務の移管)の推進

5)女性医師等に対する支援

6)医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組み

 

注目は、タスク・シフティングの推進です。

 

 

医師から移管する9つの業務、特定行為研修の推進にも言及

原則、医師以外の職種で分担する業務として、具体的に挙げられたのは次の9つです。

 

・初療時の予診

・検査手順の説明や入院の説明

・薬の説明や服薬の指導

・静脈採血

・静脈注射

・静脈ラインの確保

・尿道カテーテルの留置(患者の性別を問わない)

・診断書等の代行入力

・患者の移動

 

これ以外にも、労働時間が長くなっている医師の業務を個別に見直して、できるだけ他職種に分担するなど、それぞれの医療機関でタスク・シフティングを進めるように、とされています。

 

さらに、タスク・シフティングを進める上で、特定行為研修を修了した看護師の活用にも触れています。

 

特定行為研修の受講者を増やすこと、修了した看護師がその役割を発揮できるような業務分担を考えることを医療機関などに求めています。

 

 

「医師の負担減」が「看護師の負担増」にならないために

今回示された9つの業務には、薬剤師やMSW(医療ソーシャルワーカー)、医療クラークなどが担うべきものも含まれています。すべてが看護師に移管されるわけではありません。また、医療機関によって実施状況にバラつきはあるものの、「既に看護師が日常的に担当している」という業務もみられるでしょう。

 

国の検討会でも、

 

「看護職員による実施率が高い手技である、静脈採血、静脈注射、静脈ラインの確保、尿道カテーテルの留置について、看護職員へのタスク・シフティングの推進が必要」

 

とする意見が出ていて、現場の実態に合った役割分担を後押しする声もあるようです。

 

一方、やはり心配なのが看護師の負担の増加です。

 

看護職員にばかり業務が集中しないよう、多職種チームでの総合的な検討が必要ではないか」との指摘も出ているように、医師の負担軽減が他職種とのあつれきを生まないような丁寧な取り組みが欠かせません。

 

特定行為研修の受講を推進するにしても、研修費の負担や研修中の人員不足をどうするかといったハードルがあります。個々の医療機関や看護師個人に負担を強いる形になってしまっては、医師の負担軽減、ひいては全職種の業務適正化にはつながらないでしょう。

 

 

医師の時間外労働規制は2024年度から

今回の「緊急的な取り組み」は、2024年度から医師に適用される「時間外労働の罰則付き上限規制」を前に、今できることから始めていくことが大事だとしてまとめられたものです。近く最終的に決定し、勤務医のいる全医療機関に通知されることになっています。

 

通知を受けて具体的にどんな取り組みをするかは、それぞれの医療機関に委ねられますが、看護師の働き方にも深く関わる問題として、職場の取り組みにも注目です。

 

【烏美紀子(看護roo!編集部)】

 

(参考)

医師の働き方改革に関する検討会 中間的な論点整理(骨子案)・PDF(厚生労働省)

医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組(骨子案)・PDF(厚生労働省)

 

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